俺も活躍したい!
「えええ、どうしたんだい? 体調が悪い? なにかあったのかい?」
先生が慌てている。クラスのみんなも何事かとどよめいた。
「う、うう。すみません、その」
涙をふき取る。なんで泣いているんだろう。それすら分からない。でも。泣いていたんだ、止まらないくらいに。
「先生の授業を受けれるのが、嬉しくて……」
「えええええ!?」
俺のセリフに先生は驚きみんなは笑っていた。
「すみません、顔洗ってきます!」
席を立ち教室から出ていく。
「は、初めて言われた。教師生活で、そんなこと……。う、うう……!」
袖で涙を拭く先生を置いて俺は廊下にある手洗い場へ走る。そこで顔に水を浴び気持ちを入れ替えた。
「ふう」
整理の付かない気持ちがようやっと落ち着く。むしろ泣いてすっきりしたくらいだ。
顔を上げもう一度息を吐く。なんか大変なことしちゃったな、先生やクラスのみんなに迷惑をかけてしまった。なにか言われたら謝ろう。
改めて手洗い場の窓から空を見る。澄んだ青が広がり綺麗な白が浮かんでいた。
「……平和だなぁ」
この穏やかな時間を守りたい、そう思った。
放課後、あの後力也に心配されたりはあったけど何事もなく過ぎていった。これからは約束通り遊びに行く予定だ。
「星都、力也、なにしてる。早く行こうぜ」
「聖治くん用意早いんだな」
「お前が一番やる気じゃねえか」
いいんだよ、今日一日これが楽しみだったんだから。早くみんなと遊びたいんだこっちは。早くしろおお!
俺に急かされ星都や力也が鞄を持ち上げる。それで教室を出るかと思った時一人の女の子が近づいてきた。
同じクラスの」(さいかわるり)さんだ。黒い髪のショートカットでバスケ部に所属している。見た目通りの活発な性格で友達も多い。
とはいえ俺たちとは絡みはなくクラスメイトという関係でしかない。
「あの、ちょっといいかな?」
そんな彼女が俺たちに声を掛けてくるというのは珍しい。
「おい」
「ん?」
そこで星都に肘で突かれた。
「どうせお前だろ」
どうせってなんだよ。
「妻川さんなにかな?」
「あ、ごめんね。剣島君じゃなくて、皆森君に用があって」
「お前じゃねえか」
「俺?」
星都は意外そうに驚き俺は反撃とばかりに肘で小突いてやった。
「実はなんだけど、これから付き合って欲しい場所があるっていうか、ついてきて欲しいんだけど、これから予定ってある感じ?」
妻川さんは躊躇いがちに聞いてくる。ちょっとだけ申し訳なさそうな感じ。おいおいおい、これって。
「星都、まさかお前これって」
もしかして、そういうことなんじゃないか!? 普通に考えてここでの呼び出しはもうそれしかないだろ! やったじゃねえか!
見れば星都もそうなのと緊張した顔をしている。
「あ、ごめん。そういうことじゃないんで」
が、妻川さんを片手を突き出し謝罪のポーズをしている。恥じらいのまったくない真顔だ。これはほんとにないな。
「残念だったな星都」
「なんで慰められてるんだよ!? おい、フラれたみたいな感じすな!」
星都の肩に手を置きうんうんと頷く。が、腹にパンチをモロに受けてしまった。いって!
「じゃあなんだよ用事って」
「いや~、それがここじゃ言えないっていうか。だからついて来て欲しいんだよね、けっこう長い時間」
「はあ? 無理だ、これからラウンドニャンで俺は今日一日の活躍を取り戻すんだからよ」
「星都、今日くらい別にいいんじゃねえのか? また別の日でもいいぞ俺は」
「うるせえ! 俺抜きで盛り上がったらよりムカつくだろうが! 俺が提案したんだぞ!」
分かってるよ、お前もやる気満々じゃねーか。
「皆森君お願い! どうしてもついて来て欲しいんだよね~」
妻川さんがパンと音を立て両手を合わせる。さらに頭まで下げてきた。
「無理だ、俺はラウンドニャンに行くと神に誓った」
(どんだけ覚悟決めてるんだこいつは)
「そんなあ~~! ねえ、このとーり! それが『我々のお願い』ってことでさ、ね?」
両手を合わせたまま片目を開き星都の顔を覗いてみる。
それで星都を見るが、なんだろう、さきほどまでの陽気な感じからどこか引き締まった感じがする。
「……分かった。ついてくよ」
「ありがとう!」
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