事件の中心へ
「はい、そこからの行先はまだ掴めていません」
そもそも予想外という時点で彼らからすれば成功している。それを見破れなかったことに悔しさはあるが日本という場所には不思議と納得していた。
「なるほど、日本か。あそこなら聖法教会の目も緩い。異端根絶部門の介入もないだろう」
モニカは前に出た体を座席に落ち着ける。
「どうしましょう?」
「ああ、クソが!」
魔卿騎士団のごたごた、悪魔召喚師の暗躍、それに続いてセブンスソード。本気で嫌になってくる。
「とりあえずもっと調査を急がせろ! 開始場所の特定急げ、どこでも出来るものじゃねえんだ絞ればいける!」
「はい!」
「それと、私たちも日本に行くぞ」
「え? 分かりました、用意しておきます!」
アメリアは止めていた車に再びエンジンを掛ける。キーを回すが、そこで気になることを聞いてみた。
「それはそれとしてなんですが、セブンスソードって新たな団長を作る儀式ですよね? 言っちゃなんですけど、絶対に駄目、なんですか? ほら、私たちの現状、ちょっとあれじゃないですか」
セブンスソードの目的、それは現在不在となっている団長となる人物を作ること。それが成功すればバラバラになった魔卿騎士団がまた一つにまとまるかもしれない。それを思えばしてもいいのでは? とも思えてくる。
「お前な、考え方が楽観的過ぎなんだよ。確かに強い奴は生まれるだろう。もしかしたら本当にあいつが蘇るかもしれない。だけどそれは全部が順調に進んだ場合だ。もし強いだけのやつが生まれてそれが副団長みたいなやつだったらどうするんだよッ」
「う。それはまずいですね……」
運転席に蹴りを入れられ体が揺れる。
「セブンスソードなんて許せるか。絶対に阻止するぞ」
「了解です!」
エンジンが点きアクセルを踏み込む。車は厄介事へ向け走り出す。
「まったく、この世界はどれだけ厄介なんだクソがあ~~!」
(はあ、また仕事が増えるのかぁ)
モニカは大声で叫びアメリアは心中でぼやく。これからのことを考えれば考えるほど憂鬱だ。
「にしても日本か」
「なにか気がかりでもあるんですか?」
そこでモニカのトーンが変わる。
「聖法教会はこの際いいとして、日本には特戦がいる」
「特戦?」
聞いたことがない名前だ。それは一体なんなのか。
「特異戦力対策室。日本政府の対異常組織だよ。異能者が犯した犯罪や幽霊絡みなど秘密裡に処理してる。FBIにも似たようなものあるだろ、それの日本版だよ」
「ああ、超常事件調査局ですよね、私たちにも度たび仕事くれるじゃないですか」
「特戦も厄介な連中だぞ。なんていうんだ? 独自の様式というか、西洋とは違う価値観の上に成り立った体系を持ってる。要するによく分からん」
「日本は歴史長いっすらね~、妖怪とかいるらしいですよ、妖怪」
「そういうのを昔から相手にしてきた組織の今の形が特戦だ。歴史のある組織っていうのはそれだけに強い」
「要警戒、ですか」
「動きづらくなるのは間違いないな」
日本政府が擁する対異常組織。自分たちはその異常事件を未然に防ぐため向かいたいのだがそんな話が分かる相手とも思えない。降臨派ともども敵対しかねない。
「はあ、出来ればやり合いたくねえなぁ~……」
加わる苦悩にモニカは盛大にぼやく。アメリアは胃に穴が開く程のストレスに晒されげっそりしている。
それでも。
二人を乗せて車は前へと走っていた。
これから先、人類に最大の危機が降りかかる。その脅威に日本行きを決めた奇遇により彼女たちも巻き込まれることになる。
かつて剣聖とした約束を果たすため。魔卿騎士団の一員として。モニカたちは進み続ける。
事件の中心へ、物語は動き出す。
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