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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
第1.5部
80/103

日本政府対異常組織『特異戦略対策室』

 悪魔召喚師・神野と魔卿騎士団のモニカが動き始めた後の頃。


 廊下を歩く一人の女性がいた。ショートの黒髪に丸い眼鏡を掛けた顔は引き締まり固い印象を受ける。黒のタイトスカートを見事なまでに着こなしバリバリのキャリアウーマンといった雰囲気で近寄りづらい美人だ。


 その彼女が扉の前で立ち止まる。


「牧野です、入ります」


 ノックをして返事を待たずに入室する。これはいつものことなので気にしない。


 部屋の中には木製の立派な机が一つありその背後には窓がある。部屋の両側に置かれた棚や調度品はこの空間に特別感を与え、その机には一人の男が座っていた。


「おはよ~、萌ちゃんは今日も気合入ってるねえ」


 四十代ほどのその男性は黒髪をオールバックでまとめ四角い眼鏡を掛けている。彼もスーツを着用し表情は柔和な笑みを浮かべており鋭い顔つきの彼女とは対照的だ。


「賢条室長、いつも言っていますが名前で呼ぶのは止めてください。殴りますよ」

「あらら、これは失礼」


 このやり取りもいつものこと、牧野萌は嘆息し賢条幹久けんじょうみきひさはそれでもニコニコ笑っていた。


 ここは特異戦力対策室、その室長の部屋だ。ここは特異な戦力、いわば異能や非実体、非科学的な存在に対処する日本政府の非公開組織。人知れず国や人々を守る闇の守護者たち。

 そんな彼らが集まれば雑談で終わるはずもなく、雰囲気はベールを剝いだように様変わりする。


「事件かい?」


 真顔が、そこにはあった。さきほどまでの笑みは幻のように消えその表情は特異戦力対策室室長としての凄みが滲んでいる。

 それだけでこの場の空気が変わった。まるで今から人が死ぬかのような、それほどの緊張感に包まれている。


「はい、こちらを」


 それを受け牧野はファイルを机に置く。見ればそこに映る人物に眉が寄った。


「神野秀明、彼が入国しています」

「ほう」


 その悪名を忘れるはずがない。

 ファイルに映るのは空港の防犯カメラであり渋い赤茶色のスーツにサングラスを掛けた男が映っていた。


 その男こそ神野秀明。リング・オブ・オーダーの悪魔召喚師であり国内で様々な事件を起こし逃亡。その後海外に潜伏しており行方をくらませていた。そんな男が来日したとなれば無視出来ない。


「指名手配犯がわざわざ来日か、なにかあるな」

「はい。この後の足取りは掴めておらず調査中となっています。申し訳ありません、認識障害によってカメラに異常が発生しており、除去するのに時間が掛かりました」

「やつらしい手際だ」


 こういう手段を使ってくるから厄介な敵だ、取り逃したかつての後悔を思い出させる。


「国内にある悪魔召喚団体のリストの作成、それらの監視を強化してくれ。なにか狙いがあるのは間違いない。それもおそらくでかいものだ」

「はっ」


 賢条の指示に頷き牧野は二つ目の資料を渡す。


「それとこちらも目を通してもらいたいのですが」

「ん? 彼女は?」


 それも空港の防犯カメラの画像だ。別の空港ではあるがそこには二人の女性が映っている。金髪のツインテールの少女が中央におり、その端には白髪の女性が並んで歩いている。

 わざわざ自分に見せるほどの人物だ、それだけに重要なのだろうが賢条には見覚えがなく牧野に答えを寄越すよう目を向ける。


「こちら、モニカ・クリケットです」

「クリケット? あの?」


 写真に目を戻す。記憶の中にいる人物と少女を見比べる。


 が、それはどう見ても一致しない。だがモニカ・クリケットという大人物、記憶違いなどあり得ない。

 その名前はあまりにも強大であり有名だったから。


「はい。傭兵派遣や警備業務を主とするモータルアント社CEO、そして裏の顔、魔卿騎士団四大幹部の、モニカ・クリケットその人です。彼女も来日しています」


 この裏社会で一大勢力を誇る魔卿騎士団、その大幹部だ。いわば有名人でありスターのようなもの。同時に超が付くほどの危険人物だ。


「僕の知ってる容姿とだいぶ違うが」


 故に見間違うことなどないのだが、賢条の知っているモニカ・クリケットと言えば大人の女性だ。しかし写真の容姿は中学生、よくて高校生くらいにしか見えない。


「はい、そちらも現在調査中です。なにぶん外のことは情報が少なく時間が掛かっています」

「分かった、とはいえ不穏だな」


 神野の入国だけでも頭が痛いというのに魔卿騎士団四大幹部まで来るとは只事ではない。彼女も目的あって日本にいるはず。それがいったいなんなのか。


 まるで、地震と嵐が同時に来たようだ。

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