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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
492/496

デビルズ・ワンの概要を教えてくれ

 この男は底が知れない。存在そのものが強大なのも分かる。


 だがデビルズ・ワンを起こしたのは彼らでありそのせいで地上は滅茶苦茶だ。この事件のせいでいったいどれだけの人たちが犠牲になったか。


 これほどの大事件を起こしておいて見逃せるはずがない。


 聖治の視線をソロモンは静かに受け止める。聖治とソロモンの間でわずかに時間が流れた。


「シュリーゼ」

「は」


 ソロモンは聖治を見ながらシュリーゼを呼んだ。


「デビルズ・ワンの概要を教えてくれ」

「? は。七人の悪魔召喚師が生け贄を競い合い優勝した者が新たな悪魔と契約し願いを叶えるというものです。表向きの内容ですが」

「だが、それを明示した以上果たすのが責任というものだ」

「と、言いますと」


 彼の意図を計りかねる。聖治もソロモンの狙いが分からずじっと見つめている。


 ソロモンは顔を動かすと二人ではなく駆に目を移した。


「夏目駆。君はこの儀式を勝ち抜いた。多くの苦難に対し君は仲間と出会いそれを乗り越えた。それは称えられるべきこと。そして、君はデビルズ・ワンの優勝者として願いを叶える権利がある」

「!?」


 駆が、デビルズ・ワンの優勝者として願いを叶える。


「駆が、願いを叶える?」


 それは確かに筋の通った話ではあるがそれには一抹の不安が過ぎる。


「おい、ちょっと待て!」


 それに真っ先に食いついたのは星都だ。なんでも願いを叶える。それが駆の願いとなれば当然だ。


「まさかとは思うがその願いってのは」

「待てみんな! 待ってくれ!」


 弛緩していた空気が一気に緊張感する。聖治はみなが先走らないように止めに入った。


 だがみんなの気持ちも理解出来る。


 殺戮王を克服したとはいえそれは一過性のものだ。また再発する可能性はあるし今だって殺戮欲求の残り火だってあるかもしれない。


 その望みをここで言われてしまったら? せっかく終わったと思っていた殺戮王との戦いが無意味になってしまう。


 ただ、駆を信じるしかない。


 駆はソロモンからの提案に戸惑っていた。目を大きくした後渋面になる。


 願いが叶う。本来なら嬉しいはずのことなのにむしろ苦悩してしまう。そもそもどうやってその願いを伝えればいいのか。


「念じればいい。それで分かる」


 顔を上げる。どうやら心が読めるようで納得し顔を下げる。


 自分がしたいこと。自分が叶えたいこと。駆は周囲の顔を伺う。この場の全員がなにを望むのか、その答えを固唾を飲んで見守っている。緊張と不安。それを肌で感じる。


 この機会は一度きり。無駄には出来ない重大なものだ。なにをすればいいのか、駆にも適切な答えが見つからない。顔を俯かせ、ギュッと目を瞑る。


「駆」


 そんな自分に、声をかけてくれたのは一花だった。


「自分の願いは、自分の心に聞けばいいよ」


 優しい笑みで自分を見る彼女の表情。その顔はどんな答えも受け入れると言っているようだった。


 駆は他の仲間たちにも顔を向ける。


 リトリィ。

 ポク。

 ヲー。

 ガイグン。


 みんな、優しい顔をしていた。それで駆も理解した。自分がなにで悩み、なにで苦しんでいるのか、みんな分かっているんだ。自分と仲間は魂だけではない、心も繋がっている。自分の悩みを知って、その上で受け入れてくれているんだ。


 苦しそうな表情がだんだんと柔らかくなっていく。みんなの優しさに駆も微笑んだ。


 ありがとう。胸の内でつぶやいた言葉にみなは一同に頷いてくれた。


 駆は聖治に振り返る。自分を心配そうに見つめている。殺されかけたのに、本当の敵なのに、それでも友だといい最後まで救うおうとしてくれた友人。彼がいなければ自分は殺戮王に完全に飲み込まれていた。


 ありがとう。最後まで友達でいてくれて。その一言は本当に自分を救ってくれた。彼もまた仲間だったのだ。


 駆は聖治の心配を払うように小さく笑ってみせる。


「駆?」


 これで迷いはなくなった。自分がすべきこと、それを心置きなく選択出来る。この選択こそが自分の心が示す針だから。


「それでいいのか」


 ソロモンの確認に頷く。この答えに迷いも後悔もない。


 さあ、行こう。


 悪辣と甘美の道で、そこで自分が何者なのかを知れたから。これが自分の裁きだと言うのなら、胸を張ってこの道を進んでいける。


 駆の前に光が現れる。駆と仲間たちはその光の中へと歩いていった。その光は広がっていき聖治たちも飲み込んでいく。


「駆? 駆ー!」


 聖治が叫ぶ。駆が光の中へと消えていく。自分も、仲間も、この場も、世界すら光へと消えていく。


 手を伸ばす。光の中に入る間際、駆は自分へ振り向いた。


優しい微笑みのままで。

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