目覚めた喜怒哀楽の懐かしき世界
「んん……」
入院から10日経った今日。
それは突然の目覚めで祈願の目覚めだった。
「あぁ……痛えな。胸の辺りか」
ここが病院だというのはわかる。
しかし、なぜ隣に可奈が?
それがわからなかった。
寝てるし。
見守っててくれた……のか?
俺は可奈の頭に手を置いて髪を撫でた。
それとほぼ同時に病室の扉が開いた。
「園木さーん、朝で……須藤さん!?」
「えっ、あ、はい。どうも」
「今!先生呼んできますので!」
そう言うと看護師の方はパタパタと走っていった。
「むにゃむにゃ……あれ、和也?」
「ん、起きたか」
俺が可奈に向かって言うとガバッと起き上がり、涙目になって飛びついてきた。
「それはコッチの台詞だよー!このバカ!」
「うおっ!?痛いから!」
「あ、ごめん。嬉しくてつい」
ありがたいことなんだけどさ。
というか、今日って…何曜日だ?
置いてある時計に目をやると、7月1日水曜日だった。
「お前学校は!?」
「和也が完治するまで休むつもりだけど?」
「いや、ちゃんと行けよ!テストだってあるんだしさ!」
「またテスト……これだから男って…」
正論な。
でもしかし、迷惑かけたのは俺だしな。
「可奈…こんなことになっちゃってすまなかった」
「…………何言ってんの?アンタは体を張って私を守ってくれたじゃない」
「それはそうだが…手術代とか」
そこまで言うと鼻を摘まれた。
「和也、アナタはもう私達の家族なの。家族のピンチを救わないわけないでしょう?」
可奈は俺の鼻から手を離し、こう続けた。
「アンタは私のピンチを救ったの。お返しよ。私だけ助けられてちゃ割に合わないでしょ」
俺はもう随分と助けられてるよ。
金銭面でも精神面でも……。
「その様子なら大丈夫そうですね」
このいい雰囲気をぶち壊しにする言葉。
院長先生。
「えぇ、手術を施してくださって本当に感謝しています」
「いえいえそれが仕事ですから」
「それで俺はどのくらいで退院出来ますかね?」
「そうですねぇ……リハビリを含めて90日と言ったところでしょうか」
「はっ!?90日!?3ヶ月じゃないですか!」
そんなに休んでる暇はない!
すぐに仕事に戻らなきゃいけないのに。
「まあそうなりますね」
「なんとか短くしてもらえませんかね?」
「とは、言われましても……」
なんとかしてもらわなければ困る。
そこへまたも来訪者。
「和也起きたってホント!?」
「あ、どうも朱音さん」
「どうもじゃないわよ!」
朱音さんも飛びついてきた。
しかも胸と胸が重なる感じで。
「痛いです朱音さん!柔らかいけど痛いです!」
「あっ、ごめん。あと、来たのは私だけじゃないわよ?」
「えっ?」
俺が混乱していると皆入ってきた。
竜次、優希さん、真生、巫女、海斗、それに女子バスケ部の皆さん。
「あのー、学校は?」
「和也しゃんが目を覚ましたって聞いたので…授業なんか受けてる場合じゃないと思って……」
「僕も同じかな。和也君には昔からお世話になってるし」
「同じ力を持つ者として、放っておけないだろう」
「私は……ただ可奈様に会いに」
「俺以外の奴にやられるとはな。とんだ腰抜けだ」
『優希と同じでーす!』
「皆……」
嬉しくて涙がでそうだった。
でも、涙より先に笑っていた。
「ふっ、あはははっ!」
『笑った!?』
海斗以外が口を揃えた。
「あれ?笑っちゃダメでしたか?」
「そうじゃないけど……和也が笑うことってほとんどなかったから、私達が迷惑かけてるせいかなって」
可奈までそんなこと気にしてたのかよ。
ホントに皆バカだよ。
「そんなわけないよ。それに来てくれてありがとう」
俺って恵まれてるな。
これからはもっともっと笑おう。
皆と。
その後俺は事情を説明し、なんとか1ヶ月で退院することになった。
皆と過ごす1ヶ月なんてあっという間にすぎていった。
そして8月。
夏休みの季節。
残り251日




