夏休み旅行と俺のトラウマ
8月1日。
ニヤニヤしながら可奈がコチラを見ている。
「……なに?」
「んふふ〜、別にぃ〜」
すごく気が散るんだが。
まあ、出来るだけ気にしないように心がけよう。
俺らの学校は7月21日から夏休みだった。
「可奈、そろそろにやけ顔やめなさい。和也君が帰ってきて嬉しいのはわかるけど」
「そ、そんなじゃないですよお母様!」
「可奈の事ならなんでもわかるんだからね〜」
入院前と変わらない景色……かな?
可奈の役割は俺だった気がするが、変わってくれるならありがたい。
「あっ、そうだ。和也君!」
「はい、なんでしょうか?」
「明日から旅行だから準備しといてね」
沈黙。
「はっ!?旅行!?」
「えぇ、旅行。ハワイよ」
「ハワイ!?」
旅行は嫌いなんだ……よな。
突然の頭痛。
「でも、俺なんも持ってないですよ?」
「大丈夫♪パスポートもビザも作っておいたから!あ、それに保険にも入っておいたわ!」
「準備万端かよ!」
断れる理由がなくなった。
どうするべきか……。
はっ!俺には裕太がいるじゃないか!
「俺は裕太いますし…」
「私の妹に頼んでおいたわ!」
「仕事が早すぎる!てか、妹さんなんていたんですね」
「えぇ。それで?他に断る理由あるぅ〜?」
この人楽しんでるな。
俺が行きたくないのわかっててわざとか。
「いえ、ありませんね」
「……そう?」
ここで俺が認めるとは思ってなかっただろう!
しかし、ここから断れないわけでは!
「それじゃあ支度しておいてねー」
断れなくなった。
くそう、泣きたいよ。
「んふふ〜、あの水着が着れる〜♪」
「待て可奈、あの水着着るのか?」
「もちろん」
「理由を聞いても?」
俺がそう言うと可奈は顔を赤くして、呟くように言った。
「和也が一番……喜んでくれそうだったから」
喜んではないぞ?
確かに衝撃的だったが、決して喜んでなどいない。
俺の責任……ですよね。
「そ、そっか。でもあの水着はやめたほうが……」
「和也はそんなに私の水着姿が見たくないの!?」
「え?いや、そうじゃなくてさ」
「じゃあ何!?見たくないんでしょ!?」
決めつけないでくれよ。
「いや、違っ」
「何も違わないわ!」
走ってどこかへ行ってしまった。
多分部屋。
美緒と目が合う。
「倦怠期ね……」
「違うわ!」
可奈の部屋の前。
「なぁ、可奈?」
「どっか行ってよ」
どっかって言われてもこの家の中だろ。
「あの水着だとさ、周りの目がすごいだろ?だからとめてるんだよ」
「和也が私を見てくれるなら周りの目なんて気にならない」
「ッ!!」
なんてこと言うんだよ。
コッチの心臓が飛び出るとこだったわ。
「でもさ、可奈は普通の水着でも魅力的だと思うぞ?」
「え?」
「いや、お前ってスタイルいいし美人だしそういうのは世界共通なんじゃないかな?」
「褒めたってなんもでないわよ!」
「本音だよ」
「うぅ〜、和也のばかぁ」
説得成功かな。
よかったよかった。
「でもあの水着を着たらもっと魅力的になるってことでしょ?なら着るわよ!」
よくなかった!
説得失敗でした。
はあ……旅行か。
準備、しなきゃな。
俺は家事を済ませ準備にかかった。




