夢は忘れて喘ぎましょう
父さん、母さん。
手招きしている?
『和也、こっちへおいで』
声を揃えて何を言ってるんだよ。
俺の声が……でていない?
なぁ、ここはどこなんだよ!
なんでアンタらが生きてるんだ!?
『和也、こっちへおいで』
同じことを繰り返すだけじゃなくて答えてくれ!
なんで喋れないんだ。
出ろよ声!
『和也は私達を見捨てるのか』
なっ!そんなこと行ってないだろ!
この場所のことを教えてくれって言ってるんだよ!
なあ!ここは一体どこで、アンタらはなんでそこにいるんだ!
2人は俺が立っている川辺の反対側にいた。
その川は黒く……いや、赤黒く染まっている。
入ったら帰ってこれないことはわかる。
いわゆる三途の川なのだろうか。
『さようなら和也、幸せにね』
アンタらがいないのに幸せなわけないだろ!
なんなんだよ!
おい、待ってくれ!置いていかないでくれ!
足に重い感覚。
赤黒い川が俺の足に絡みついていた。
嫌だ、父さん!母さん!
「待って!!」
やっと声がでた。
そこはいつもの風景、園木家の自室。
「私、今日休みでどこにも行かないけど?」
可奈が不思議そうな顔して言ってきた。
あれは夢……だったんだよな。
「そうだな、悪い」
「嫌な夢でも見たの?」
嫌な夢か……。
「そうだな、嫌な夢かもしれない」
嫌な夢…、まあ悪夢に近かったな。
でも、なんで今更父さん達の夢を見なきゃいけないんだ。
「?」
「気にすんな。ところで今何時?」
話を逸らしておく。
「朝の10時半よ。アンタが寝坊するなんて珍しいわね」
「すまないな。飯はどうした?」
「自分で作って食べたわよ。あ、アンタの分も置いてあるから」
まさかあのパンドラボックスと呼ばれた弁当と同じものが……。
遠慮したいけど失礼だよなぁ。
「もらおうかな」
「アンタなら遠慮すると思ったんだけど……ちょっと意外」
何かでこの頭の中をリセットしないと狂ってしまいそうだからな。
ベッドからおりて、腕を引かれるがままについて行った。
着いた先には…………ダークマター進化してないか?
なんか蠢いてるんだけど。
「ピギィィィ」
「なんかあの飯、鳴き声発してるけど!?」
しかも、地球に存在する生物の声じゃないよな。
「食べてみてよ」
「あれを食うの!?死ぬよ!?死んじゃうよ!?」
そう言うと可奈はいきなり涙ぐんだ。
俺は事実と思うこと言ったんだけどな。
そして涙目のまま、胸を押し上げてねだるように言ってきた。
「私、頑張って作ったの……食べてほしい…な♡」
くっ、女の強さがよくわかる……どうする俺。
評価を上げて死ぬか。
それとも、
評価を下げて生きるか。
そもそもこんな状況な時点で評価は下がっている。
これで食ったら、男性読者様も
「へっ、和也ざまあ」
となるだけ……評価は上がったとは言えない。
が、しかし!
俺は飯程度で可奈を悲しませたりしないぜ!
フハハハ!ざまあみろ男性読者め!俺の勝ちだ!フハハハ!
という葛藤をしたあと、食うことにした。
「い、いただきます」
フォークが刺さる。
「ピギェェェェ!」
「ギャァァァァ!」
思っきり頬張った。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。
クッソ程まずい!
今度料理を教えこむか……オエッ。
「どう?和也」
これで感想を聞けるのがすごいと思う。
「お、おいひーれす」
「よかったぁ!今日は腕によりをかけて作ったの!また作るわね!」
俺に美味いって言われるの嬉しいのか?コイツ。
というか、褒めない方が得策だったかもしれないな。
「そんじゃ、今日も始めますかね」
「フレッフレッ和也!頑張れ頑張れ和也!」
「おう!」
なんか、応援されるのって……悪くないな。
家の掃除、食器洗い、昼飯、食器洗い、洗濯物。
「ふぅ、今日もキツかったな」
「あら、今日こそは洗ってあげるからね。和也君♡」
「ははは……まだまだ疲れそうだ」
いつもの誘惑攻撃。
最近はよけ方もなれてきたのだが、先日の挟み技は予想外だった。
「あっ、そうそう今日もマッサージお願いできるかしら」
挟み技の日から毎日マッサージしている。
変な声だされるから大変だが……。
「和也ー!私もお願い!」
湯船から可奈が言ってきた。
「お前は何も……やれやれ、わかったよ」
何もしてないだろと言おうと思ったが、寝坊で迷惑かけたしな。
風呂上り。
「はぁん!そこそこ!いいっ!」
「かずやぁ…!キモチイイッ!」
はあ……親子揃って……。
後日、園木家は喘ぎ豪邸と呼ばれることになったのは言うまでもない。
残り312日




