裏アイドルもお年頃
「和也〜♡昨日は校外研修で会えなかったから寂しかったんだぞっ!」
昼休み。
いつもどおりの光景なのだが、周りの目はもはや凶器のレベルだった。
「なっ!バカ会長離れなさいよ!」
「むっ?君より頭はいいはずだが」
コイツほど頭の悪い奴はこの学校にはいないだろうよ。
「それじゃ、生徒会室行きましょうか」
2人の戦争が勃発する前に移動を始める。
海斗の一件があってからというもの、昼は生徒会室で食べることにされた。
最初は朱音さんが言い出したことだったので、断るつもりだったが理事長にも言われ、断るに断れなかった。
生憎にも生徒会室にはそれぞれの仕事の方がいる。
副生徒会長。会計。書記。その他諸々。
男子も少なくない。
下手な行動は控えるようにしているが、視線が優しくなることはない。
生徒会室
「失礼します」
「失礼致します」
可奈より俺の方が丁寧に言った。
同じ台詞を言った時点で目が変わるからだ。
可奈は………。まだ説明したことはなかったな。
金髪、美人、いいスタイル、行動は可愛い。
という理想のような女性なのだ。
金髪は地毛らしい。
それ故に、校内で1位2位を争うほどの美人が故にだ。
まあ2位は朱音さんなのだが……。
この2人という時は周りの目が普通じゃない。
ハッキリ言うと怖い。
まぁ、そんなことを考えていると会長からお呼びがかかるわけだ。
「和也、ちょっとちょっと」
手招きされ、俺は朱音さんの方へ向かう。
「ここ、座って」
朱音さんの隣に椅子が用意されていた。
「いえ、遠慮しますよ」
「えー、どうして?」
この覗き込む感じヤバイ。
うちの学校の制服は胸元が緩く、すぐに危ない感じになってしまう。
誰が考えたんだこんなの。
理事長か…………。
というか、断ったのに目が怖いんだが。
特に俺のすぐ隣にいた可奈の目が。
「会長!和也は私のです!」
待ってくれ、その言い方はダメだ。
この状況では絶対に言ってはいけないことだ。
「和也は私のよ!愛しているもの♡」
もっと危険な台詞きちゃったぁぁ!!
ヤケ食いしてます!
皆様ごめんなさい!
「あ、あにょっ」
副会長が手を挙げた。
「2人が喧嘩すりゅのにゃら、私の隣はどうでひょう」
一瞬の沈黙。
そして、周りの人達は泣きながらヤケ食い。
本当にごめん。
「やっぱりいいでしゅ!嫌でしゅよにぇ、私の隣なんて」
「お言葉に甘えさせて下さい」
一同唖然。
数人かは帰ってしまった。
「ひぇっ!?でも!そにょ!」
「和也は優希がいいのか……お父様に言っておかなければ」
「ちょっと待ってください!ただ、2人に喧嘩してほしくなくてここにしたわけで!」
退学にされそうな勢いだった。
「和也は副会長がいいのね。お母様に(ry」
「2人とも待ってくれ!俺はただ純粋に!」
2人がニヤリと笑った。
『和也を取ろうとする泥棒猫を退治しなくちゃ』
そんなところで2人の息を揃えないでくれ。
2人が副会長に飛びついた。
「ひゃっ!?ちょっ!ダメです!そんなところはぁ〜〜〜!」
とある平日の昼休み。
とある女子生徒の叫び声が校内に響いた。
それはもちろん大学側にも。
「すいません、副会長」
放課後。
副会長に謝りに行くことにした。
俺と可奈と朱音さんで。
「すいませんでした。その…ちょっとムキになっちゃって」
「ごめんなさい優希。和也が取られそうだったから……」
3人で頭を下げている。
この前より1人増えた。
やっぱり、玄関なのだ。
「い、いえっ!大丈夫れす、顔を上げてくりゃしゃい」
こんな時でもキャラ維持とは…尊敬だな。
「その変わりと言ってはなんにゃのれすが、須藤しゃん」
「えっ?はい」
俺ピンポイントですか。
「わ、私のこと。名前で呼んでもりゃえましぇんか?」
ここ3日、続けて呼び方を変えろと言われるなんて。
作者め、サボっているな?
「それはできません」
「でしゅよにぇ、出過ぎました」
「ねっ、朱音さん」
こういう時にこそ朱音さんに頼る。
「そうだぞ優希!君は嫌われているんだ!」
「しょんなっ!」
肩を落とす副会長。
頼るんじゃなかった。
「違いますよ!そうじゃなくてですね、俺は上下関係をしっかりとしておきたいんですよ!」
「じゃあ私も優希さんでお願いできましゅか?」
やはりそうくるか。
「まぁ、それなら」
「やった!ありがとうございます!」
抱きついてきた。
なんだよ、噛まずに言えるんじゃないか。
にしても、何が嬉しいんだか……。
「コラッ!優希!名前呼びだからって調子にのるな!」
「離れてください副会長!」
可奈と朱音さんが怒った。
「ごめんなしゃい」
それだけ言うと優希さんは走って帰っていった。
そして、帰る前に俺と可奈は優希さんについて色々聞いた。
この学校の美人トップ3なことを。
学年の裏アイドルなことを。
バスケ部なことを。
運動が苦手なことを。
コミュ障なことを。
どうすればいいかわからないが、コミュ障治してやりたいな。
俺は咄嗟にそんなことを考えてしまった。
しかし、コミュ障を治すのはまた今度のお話で。
残り342日




