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厨二病は強いんです!

『あっ』

俺と鮫川の言葉がかぶる。

コイツは弱いが、しつこい。

「よ、よぉ。鮫ちん元気ィ〜?」

ものすごい顔で睨まれた。

そりゃあそうだよなぁ。

俺この前、手下の奴ら倒しちゃったし。

もともと仲悪いし。

首狩るとか言っちゃったし。

完璧アウトだな。

「鮫川さん!コイツです!この前俺らをボコったの」

「言わなくてもわかる!」

あ、あの時逃げてった手下A君じゃないか。

しかも怒られてるし。

「なぁ、須藤。久々にしないか?」

「ヤダよ。コッチは校外研修中だぞ」

「だからこそじゃないか。今までもそうだっただろう?」

まあ、確かに。

修学旅行の時は共闘したな。

大学生くらいの奴が調子こいてクラスメイトに絡んでたから半殺しにした。

本当はコイツもいい奴なんだけどなぁ……。

「あっれ〜?そこにいるのは竜次君じゃーん。最近どう?生活できてる?」

鮫川のグループで笑いがおこった。

竜次は俯いたまま、どこかを見ていた。

「おい、まともな生活してねぇお前が言えることじゃねぇだろ」

竜次は俺とほぼ同じ環境。

抑えるつもりだったが、無理だった。

「和也君!いいんだ、気にしてないから!」

「ほら、本人もああ言ってるしさ。気にするなよ」

この発言に、もう理性を保てそうになかった。

「竜次が許しても俺が許さねぇ」

「おうおうかっこいいじゃん!してくれるんだな!」

俺が素手で戦うときの構えをコイツは知っている。

手を握ったまま直立。

これが一番いい、何にでも反応できる。

「じゃあ昔と同じように2分マッチな。お前が負けたら後ろのメンバーはただで済まないと思っておけ」

この言葉に真生が反応した。

「なっ!私は世界を支配した者で貴様らなんぞにやられるわけがないだろう!」

それに対して俺は、口の前で人差し指を立て「静かに」と合図した。

「2分マッチと言ったな。5秒で充分だ。俺が負けた時のことじゃなく、俺に負けた時のことを考えた方がいいんじゃないか?」

「望むところだ。おい」

鮫川に言われ、えーとまぁB君が出てきた。

「2分マッチ、開始!」

鮫川は体力がほぼ無限に近い。

長期戦で勝ち目はない。

「俺、高校になってボクシング始めたんだよ。そしたらパンチ力上がっ!?」

顔面に右ストレート。

一発で倒せばいいだけの話。

「へー。でも、肝心のパンチ打てなかったら意味ないよな。そんなの」

鮫川の倒れた瞬間、B君が走り出していた。

狙いは真生。

「お、おいっ!動くなよ、動いたらコイツがどうなるかわかってんだろうな」

真生の首にはナイフが突きつけられている。

可奈じゃなかっただけいいんだが、アイツに動くなって説得は無理だよなぁ。

「ハァ……こんな鉄の破片を使って何になるって言うの?」

「あ?自分のおかれてる状況がわかってんのか?」

「当たり前よ」

落ち着いている様子で、淡々と質問に答えていた。

「これは神が与えた試練なのでしょう。あぁ神よ、貴方はどうしてそんなに無慈悲なのでしょう」

「は?」

結局そこかよ。

呆れた奴だな。ホント。

「わからないようね、こういう事よっ」

ナイフを持った手を握ったかと思うと、後ろに回り込んで右腕を締め上げていた。

警察がやるような、アレだ。

「いでででで」

「神に認められた私に挑んだことは失敗だったわね」

ゴリィッ。

出来れば生きてるうちに聞きたくない音が聞こえた。

B君の肩が外れる音。

「あぁぁぁぁ!痛い!痛い痛い!」

泣き叫ぶB君と、見下ろす真生。

アイツは本当に悪魔なんじゃないかと思った。

その後手下たちが、鮫川とB君を運んで逃げていった。

校外研修も続けたものの、目的地に着けず結果的に教師に怒られるハメになった。

そして、今は学校。

帰る少し前。

「なぁ、須藤」

「うん?どうした真生」

普通に話しかけるなんて珍しいな。

「あ、あのだな……その…悪かった」

謝罪された。

「私が彼の肩を外したことで怒られることも多くなってしまって…しかも連帯責任だなんて」

なんだよ、そんなことか。

「別に俺は気にしてねぇよ。俺も鮫川殴ったわけだし」

「しかし…私の厨二病のせいで話も長く………」

自覚あんのかよ。

まあ確かに説教が延長になったのは事実だった。

「いいんじゃねぇの?」

「え?」

真生は予想外の言葉に戸惑った。

「それが今、お前のしたいことでしてることなんだし。本当のお前なんだから、謝ることなんてないぞ」

「須藤…………」

泣きそうな顔して名前呼ばれてもなぁ…。

複雑なんだよな。

「ま、友達つくるにはもうちょっと控え目の方がいいかもな」

「本当にありがとう。あと、園木にも謝っておいてもらえると助かる」

「了解だ。今の自分を恥じることなんてないと思うぞ。今も昔もお前はお前だ」

それだけ言って、帰ることにした。

ニコニコしながら「二ノ宮に謝ってくる!」と言ってそのまま走り去っていった。

その背中は、まるで羽が生えたかのように軽そうだった。

これは俺の勘違いかもしれない。いや、勘違いだろう。

でも、色々な奴があんな顔が出来るのなら友達というものも悪くはないのかもしれない。

真生、友達出来るといいな。


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