朱音Day
着いた。
まあ2分だからな。
中に入る。
「ただいま、裕太」
「お帰りお兄ちゃ」
「和也ーーー♡」
裕太が言いかけたところで会長の言葉と重なった。
「よかったー、無事だったんだねー。和也のこと考えたら夜も眠れなくて……」
これは比喩表現じゃないらしい。
クマがひどい。
「言ったじゃないですか、帰ってくるって」
「でも、和也なら無茶しそうだし」
まあ、無茶しなかったと言えば嘘になる。
海斗が撃ってきた時のアレはもう賭けだった。
当たらなくてよかったが……。
「兄ちゃん、この人とホントに付き合ってないの?」
「当たり前だ。俺は彼女なんかつくらない」
理由は金がかかるから。
家計の厳しい今、付き合えるわけがない。
「彼女じゃなくて婚約者だもんね〜♡」
「兄ちゃん、もう手を出したんだ」
「いや、ちょっと待て!誤解の仕方もおかしいぞ、それ!」
手を出したってなんなんだ。
俺はそんなことは……。
そこまで考えて、今朝のことを思い出した。
そんなことはもうしないぞ。
「和也!心配かけたんだし、木刀もあげたからデートしてっ!」
デートというのは、人それぞれの感性にもよるよな。
男女2人で買い物をすることをデートと呼ぶ人もいれば、イチャイチャしながらでかけることをデートと言う人もいる。
あと、腐女子様なら男子2人でも言うのかもな。
多分、会長が言っているのは2番目だろう。
しかしここはあえて1番目と捉えて反応しようと思う。
「いいですよ、別に」
「やったぁ♡」
「いってらっしゃい、イチャイチャ楽しんできてね。チッ」
今なんか最後に変なの聞こえたが……。
裕太に限ってそんなことはありえないな。
「じゃあ行こっか♪♪」
向かった先はデパート。
そして案の定俺は荷物持ち。
すごく重たいデス。はい。
「これとかどう?似合ってるかな、えへへ」
服を選ぶセンスがいいらしい。
いや、悪くても外見がフォローしてくれるな。
「会長は顔もスタイルもいいんだからなんでも似合うんじゃないですかね?」
本音だ。
心から思っているぞ。
会長は赤面した。
「も、もうっ。和也ったらお世辞が上手なん…だからぁ」
「お世辞じゃないですよ。事実です」
さらに赤くなって俯いた。
会長お得意の攻めが出来なくなったからだろうな。
「あっ!そうだ、和也の服選んであげる!」
話を逸らしたか。
もうちょっとでイジリ倒せたかもしれないな。
「いや、いいですよ。俺は金持ってきてないですし」
「私が払うからっ!」
「もっと悪いですよ!!」
そう言ったのだが、もう既に選んでいた。
「和也もなんでも似合いそうよ。着てみて」
「はぁ…」
言われるがままに試着室に入った。
服の上からじゃ着づらそうだな。
そう思った俺は上半身の服を一旦脱いだ。
脱いだ直後。
試着室のドアが開く。
「和也〜、おわっ……いい体♡」
「そんなこと言ってないで閉めてくださいよ!」
すぐさま自分で閉める。
「ごめんごめん。あまりにも体つきが良かったものだから見とれちゃって」
本当に呆れるぜ。
その後、その服は俺に相当似合っていたらしく、会長が興奮していたが買ってもらうのだけは断った。
「ふぅ〜、楽しかった〜」
「ですね」
今は会長の家へ向かう途中。
家まで送ることにしたのだ、荷物も多いし。
服を買ったあと、ゲーセンへ行って色々ゲームをした。
大体は会長がもっていたみたいだが、そのお礼にUFOキャッチャーで3つほど景品をとった。
この手のゲームは昔から得意で1回でとれた。
会長はすごく上機嫌である。
「あ、ここよ」
会長の家に着いた。
デカいなぁ。毎日園木家を見てるので、リアクションも薄くなってしまった。
「大きいんですね」
「むー、リアクション薄い」
少し頬を膨らませた。
「まあ俺は豪邸でバイトしてますからね」
「むー…」
それを聞いて納得したらしい。
良かった。
「あ、最後に1つお願いがあるんだけど」
「はい?なんでしょう」
「私のことを会長じゃなくて朱音って呼んで」
婚約のことかと思ってヒヤヒヤしたぜ。
「それは無理です」
「どうして?」
「それは先輩だからです。呼び捨てにするわけにはいきません。せめて朱音先輩ぐらいじゃないと」
俺もそこまで無礼なことはしたくないからな。
「んー、朱音さんはダメ?」
「朱音さん…ですか。俺は別に問題ないですけど」
「じゃあそれで!よろしくね」
「はい、了解です」
会……朱音さんは満面の笑みを浮かべていた。
その笑顔が夕日と重なって、とても美しかった。
そこで朱音さんとは別れ、園木家に戻った。
「和也君〜〜〜」
「か〜ず〜やぁ〜」
あ、飯作るのも連絡も忘れてた。
「あ、すいませ」
『そこに座って!』
2人に声を合わせて言われた俺は、従うしかなかった。
「…………はい」
それから3時間。
2人による説教は続いた……。
残り346日




