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戦前の下準備と約束

休日の朝。

俺は今、非常に焦っている。

それはメールの内容にだ。

焦ってる?いや、混乱しているの方が正しいのかもしれない。

『君の大事な園木可奈は今俺らの手の中にある。簡潔に言うと誘拐させてもらった。助けたくば、俺らと勝負のできる装備で20時に海旋組かいせんぐみまで来い。楽しいパーティーをしようじゃないか』

このメールについてきたのは手足を縛られ、口に布を咥えさせられている園木の写真だった。

「どういうことなんだ」

朝は普通だった。今日会う予定のあった人物。

夏目海斗………………。

まずは美緒に言わなければ。

美緒に電話をかける。

『プルルル、プルルル。もしもし須藤さん?どうしたの?今は仕事中なのだけれど』

「お忙しい中申し訳ありません、その……謝らなければいけないことが……」

『どうしたの?プリンでも食べちゃった?』

「いえ、その……園木が誘拐されました」

『誘拐!?』

「本当に申し訳ありません。俺のせいです。今日会うと言っていた人物は学校での不審な行動もあり疑問に思っていたのですが……。申し訳ありません、止めなかった俺のせいなんです」

これをもとから計画していたのなら、わざわざ理事長室まで来たり、3階から降りてきたのも説明がつく。

『そうね……。じゃあまずは警察に』

「それは多分ダメです」

『どうして?私達だけで解決できる問題じゃないでしょう』

「奴の目的がなんなんかわからないうちは何をしてくるかわかりません。もし園木が目的ならすぐにでも殺したでしょう。狙いは俺の可能性が高いです」

『それはそうだけど………。必ず2人で生きて帰ってこれる?それを約束できる?』

「はい。約束します」

これは俺の責任だ。

命に代えてでも園木を助ける。

『頼んだわよ』

「はい」

電話をやめ、準備を始める。

「まずは……」


「和也〜」

「会長、持ってきていただけましたか?」

「木刀でいいのよね?」

「はい、ありがとうございます」

武器が必要だ。

会長が持っていて助かった。

「何かあったの?」

この人なら話しても大丈夫だろう。

「実は……園木が拐われました」

「え?嘘……でしょ?」

「嘘だったらありがたかったんですけどね」

メールがきた時には何度嘘だということを願ったか。

「もしかしたら私のせいかも」

「は?」

「フードの人物が、その夏目海斗っていう人と同一人物なら。昨日私が屋上に無理矢理連れていかなければこんなことには……」

「違う」

「私が和也を連れていかなければ」

「違う」

「屋上でフードの人物に会わなければ」

「会長ッ!!」

おもわず怒鳴ってしまった。

「それ以上言ったら本当に怒りますよ」

「で、でも!」

「会長は何も悪くない。悪いのは止めなかった俺です。無理を言ってついて行く手もあった筈なのに、俺は言われるがままについて行くのをやめた。悪いのは全部俺なんです」

アイツを護れたのは俺だけだったのに。

こんなんじゃボディーガード失格だ。

「和也。そんなに自分を責めないで。自分の理性を保って。じゃないと君は……私の届かないところに行ってしまう。そんな気がするの」

会長の目から涙が溢れる。

「お願い。必ず帰ってきて」

「当たり前です、2人で帰ってきますよ」

会長は俺に抱きついた。

「絶対よ、絶対」

「えぇ、絶対です」

帰ってくる約束は2回目だな。

これじゃ破るに破れない。

俺も死ねないな。

「あ、あと会長。人を病院送りにするかもしれないですけど退学だけは勘弁してください」

「もちろん。君は月曜からも通常登校よ」

「それなら安心です」

その後会長は帰った。

次に準備するものは……。

俺は色々な人に助けられながら、色々な物を準備した。


19:56

「さて、いよいよか……」

現在地、海旋組門前。



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