勝負の理由は親との関係
「やっぱり正面には何人かいるな」
正面の警備は7人。
突破出来ない人数ではないのだが、海斗との勝負を考えると避けるのが最善の策だろう。
警備がいるのは昼の時点で予想済みだった。
足軽に裏へとまわる。
コッチも予想通り。
裏の警備はなし。
しかしそれに応じて裏口などもない。
ここで予め用意しておいたハシゴをかける。
無事侵入することに成功。
次は海斗のいる場所まで誰にも見つからずに行くことだ。
約20分ほど経った頃だろうか。
辿りついた。
「よぉ、愉快な誘拐犯」
「あれ?君一人?部下達には殺して連れてくるように言ったんだがな」
「ありがたいんだが、馴れ合いは苦手なもんでな」
隣には写真の状態そのままの園木。
そして奴の手には銃。
偽物……なわけないよな。
「狙いは俺か?」
「あぁ、そうだ。まあ君を殺したら彼女も殺すつもりだったけどね」
そうだろうな。
誘拐して、殺す現場を目撃されるんだから殺すほかない。
「なぜ俺を狙う」
「君が邪魔なんだよ」
「は?」
邪魔?なにが、どういう意味で?
「俺はさぁ、中学までなんでも一番だったんだよ。勉強も運動も」
確かにコイツは入試3位だったな。
「それでさ、結果を報告することで父上に認めてもらっていたんだよ」
自己満足というやつか。
「でも、高校に入ったらお前がいた。なんでも出来て、勝てるものが1つもなかった。これに失望した父上は体調を崩された」
それって俺のせいじゃないよな。
とんだ勘違いだな。
「竜次とかいうやつもいたがアイツは運動が出来ないからな。お前さえ殺せば俺は一番になることが出来る。父上に認めてもらえる」
「はぁ……お前バカだな」
「あ?」
海斗は銃を構えた。
「お前の父親は本当に失望したせいで体調を崩したのか?ありえねぇだろ、そんな脆い人間がいてたまるかよ」
「口を閉じろ」
「お前の父親は一番になれと言ったのか?お前が生き生きとしてることで嬉しかったんじゃねぇのか?」
「黙れ!」
海斗が発砲する。
俺の頬をかすめた。
「お前は俺を撃てねぇよ」
「なぜそう言いきれる」
「父親がいるからだ」
親のいない俺は今簡単に人を殺せる。
心配をかけないから。
まあそれは裕太がいなかった場合だがな。
海斗に向かってゆっくりと歩き出す。
「来るな!来るなぁ!」
連続して発砲。
当たらない。
「諦めたらどうだ」
「来るなよ……。来ないでくれよ!」
俺の片手には木刀。
この距離なら……届く。
構えに入り、動きを止めた。
ここでまたも発砲。
しかし服をかすめる程度。
今!
狙いをすました強い一撃を放つ。
正確に奴の喉を捉えていた。
「ガハッ」
「これで済むわけねぇよな?」
木刀を投げ捨て、鳩尾にアッパー。
「ガフッ」
ボキボキ。
「肋骨数本いったかもな」
海斗はその場にうずくまった。
涙を流しながら縛られてる園木を助ける。
ゴトッ。
なんの音だ?
園木の腕を縛っている紐に爆弾がついていた。
「なっ!?」
残り時間1分30秒。
「に…げろ。まだ……間に合うだろ」
海斗が小声で囁くように言った。
「ふざけるじゃねぇ!お前は俺を撃たなかったんだ!俺だってお前を見捨てねぇよ!」
「ス、スドー……」
「ははは……。お前に勝てない理由はそこにあったんだな…。かなわねぇや」
死ぬ間際のような台詞。
いや、本当に死ぬ間際なのだ。
「いいから早く!これのパスコード!」
パスコードはiPhoneやiPodの簡易ロックのようなもので、10個の丸いマークのものだった。
「俺にも……わからねぇ。だが、普通の人間には…………解けないと…言っていた」
普通の人間には解けないだと?
普通の人間の発想とはなんだ?
この10個の丸いマークには1.2.3.5だけ数字がついている。
この数字を使うことか?
それとも全部?
人ではない……人ではない。
「そうか!逆転の発想!普通の人間なら何かがあるものに反応する!ということは数字のない部分を一直線で結ぶ!」
残り時間は5秒。
急いで結び終えた。
ピー。ピー。ピー。カチッ。
残り0秒。
その場の全員が死を覚悟した。
『………………』
爆発しない…。
0秒で止まっている。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!」
他の2人は唖然としている。
「ふっ。本当にかなわない」
「当たり前だ。追い詰められた天才は強いんだぜ?」
ドヤ顔。
「スドー!!」
横から抱きつかれる。
「うわぁぁ、怖かったよぅ」
「泣くなよ……」
部下連中がドアを蹴破った。
「若!無事ですか!?」
「う……あぁ」
「クソッてめぇ!」
部下の1人が銃口を俺に向けた。
「やめろッッッ!」
しかし、それを海斗が止めた。
「くっ、すいやせん」
その部下は銃を下ろした。
「すまないな、もうお前に合わせる顔が無いよ」
「そうだな」
軽くデコピンをする。
「合わせる顔は無くても、会う為の顔はあるだろ。しっかり学校来いよな。あ、あと肋骨はごめん」
その言葉を言って、海旋組を去った。
一応は一件落着……かな?
多分




