結婚談はまた今度
翌日の昼休み
「スドー今日も屋上行くわよ!」
「いやそろそろ諦めたら?来ないって」
今日は金曜だし、めんどくさい。
「和也〜♡」
………………俺のこと下の名前で呼ぶ奴っていないよな。
一体誰が……あっ。
「お昼一緒に食べない?」
「あ、あの〜俺は……えっと…」
「スドーは私のボディガードなの今日は私と屋上で食べるの」
ナイスだ園木。
「そうなの?じゃあ早く行くましょ!」
「へ?」
強く手を引かれて力の入らないまま連れていかれた。
そして屋上。
「ちょっと……俺は本当にボディガードでして…」
「ボディガードだからといって恋愛禁止じゃないでしょう?」
それは……確かに。
その瞬間、会長の後ろの扉が開き………金属バット!?
「会長危ない!」
突き飛ばした。
同時に腕に重い感触。
「クッ」
相手はフードを被っていて誰だかわからない。
フードの男に今度は俺が突き飛ばされる。
奴は階段を降りていった。
「きゃっ」
園木!?
「おい!園木!」
体を起こそうとした時、ちょうど顔が見えた。
「あれ、誰?フードなんてうちの学校あ……り…ふーん、私がいないとそんな大胆なことするんだ」
「は?お前何言って」
落ち着いて自分の状況を整理する。
バットから会長を守って、殴られて、突き飛ばされて、今は……会長を押し倒してる。
会長はなんか準備万端みたいな格好だし。
「あぁっ!すいません会長」
「えっ?ここでもうs」
「言わないでください、しないので」
毎度毎度すいません、変なことばっかり書いてしまって。
体を起こし、会長に手を差しのべる。
「にしてもアイツ何者だ?バットの持ち込みと制服に関しての違反野郎」
「押し倒してた変態野郎が言えることじゃないわよ」
マジでゴミを見る目だ。
その後昼休みを全部使って、誤解を解いた。
多分大丈夫。
放課後は予想通りだった。
『1年D組須藤和也至急理事長室まで来てください。繰り返します』
はぁ〜。
なんも考えてねえや、どうしよ。
行かないわけにもいかないよなぁ。
一応理事長室へ向かった。
ガチャ
「失礼しまー」
「和也〜♡♡」
いきなり飛びつかれた。
「来てくれてありがとー!結婚してくれる気になったんだね!」
いや、そうじゃないんだけど。
「会長ちょっといいですか、理事長にお話したいことが……」
「このままでいいじゃない」
う〜ん、まあ悪いということもないんだが……。
これ以上言っても無駄だろうな。
そう判断した俺はその、抱きつかれた体勢で話しをすることにした。
「今日の昼休み、会長が金属バットで狙われました」
「何っ!?朱音なんでそれを言わないんだ!」
「そんなことあったっけ?和也とのse」
「してませんよ」
恥ずかしげもなく言う会長に、ツッコミをいれた。
「あ〜ん!クールなとこもかっこいい〜♡」
いつでもクールに突き放してたつもりだったのだが……。
それはまあ置いといて。
「それで、その金属バットを持ってた人物なんですがフードを被ってました。そして狙いも俺だったのか会長だったのかがわかりません」
奴は俺の腕に当てた後、すぐさま去っていった。
あの時なら俺を反対に突き飛ばして、会長に殴りかかることも出来たはず。
だとしたらやはり狙いは俺になるのか。
「ふむ、その時に怪我とかは?」
「会長にお怪我はないと思います。突き飛ばしてしまいましたが、強くはしてないので」
「和也ってホント優しい〜」
全然違うジャンルの話してるよ、横の人だけ。
「いや、そうではない。君の怪我だ」
「えっ?俺ですか?あ、はい。殴られただけなので少しアザができた程度です。2、3日したら痛みも引くでしょうし、心配には及びません」
「そうか、それはよかった」
なぜこの人は俺の心配を?
生徒だから?娘の惚れた相手だから?それともほかの理由?
わからない。
「和也〜、私これから生徒会なの。よかったら見学していかない?」
「い、いいんですか!?」
「もっちろん♡和也なら大歓迎よ」
「ありがとうございます」
部屋の外に出ると園木が嬉しそうに立っていた。
「聞いて、スドー!さっき海斗クンが来てね!明日デートに誘われちゃったの!キャーー」
コッチもコッチで変なテンションだな。
でもなんで海斗が?
ここは大学側だし、しかも
大学の4年棟。
来る理由がないはず……。
なんなんだろう、本当に今日はわからないことだらけだ。
「和也、早く行こっ♪」
「あ、あぁそうですね。なあ園木少し生徒会を見学させてもらって行かないか?」
「なんでもいいわよぉ〜。海斗クンからデートに……むふふ」
キモいな。
「それじゃあ早く行きましょう!」
生徒会室前
「ここが生徒会室!今日は私と副会長だけね」
手短に説明して、中へ。
「副会長、見当たりませんね」
「そうねでも、好都合♪ 」
「え?」
勢いよく床に押し倒される。
「和也は私が受けだから結婚してくれないのよね…」
いや、全然違うんだが。
「わ、私和也のためなら攻めでも受けでも……」
「違いますよ!学生じゃ早いって昨日言ったばっかりじゃ」
ドサドサッ
書類のようなものが落ちる音。
嫌な予感。
「し、しし、し失礼しましたー!」
それだけ言ってどこかへ走っていってしまった。
「あのー、会長?あの方は?」
「副会長よ?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!いきなり誤解とか本当に勘弁してほし、ってはなしてくださいよ!」
まだくっついている。
なんとか引きはがして、副会長のあとを追う。
足遅っ!
まだこの階にいた、しかも直線上に。
30秒後。
「嫌です、はなしてください!なんでもしますからぁ〜」
「ちょっと待って下さい!俺が変なことしてるような叫び方しないで下さい!もしも3年生に聞かれたりしたら……」
ゴキゴキッ
「よーう1年坊主、俺らのアイドルに手出してただで済むと思うなよ?」
やっぱり来てたんだ……。
「いや、ホントに暴力はよくないですよ。お互い怪我はしたくないでしょう?ねっ?」
「はぁ?ギャハハ。ビビってんのかコイツ、怪我するのはお前だけだよ」
「あぁ?」
不良時代の癖。
ビビるに過剰反応する。
「怪我するのはお前らだよゴミ、かかってこいや」
「おっ、強気〜。そんじゃ遠慮なく」
モーションのデカい右ストレート。
素人には速く見えるかもしれないが、俺にとっては止まって見える。
右ストレートが顔に当たる前に、奴の顎にアッパーをかます。
「あがっ」
気を失ってしまった。
「あ…………」
その後ほかの3年は逃げ出して、副会長の誤解を解き、生徒会室に戻った。
「会長のせいで大変だったんですよ!?」
「怒った顔も可愛いなぁ♡和也は」
「そんな台詞求めてません」
この会話に対して戸惑う副会長。
「あ、あの2人とも落ち着いて……」
副会長の止めにより、俺は怒るのをやめた。
「あ、そういえば自己紹介してなかったですね。俺は1年D組の須藤和也です」
「あわわ、こりぇはご丁寧にどうも。生徒会副会長の明間優希といいましゅ。よりょしきゅお願いしましゅ!」
噛みまくりだな。
でも、
「ありがとうございます、俺副会長みたいなキャラの人がいて助かりました」
本当にこの言葉に尽きる。
手を握って、副会長に礼を言った。
「ひゃい!恐縮でしゅ!」
そこまで緊張しなくても……。
「優希ばっかりずるい〜、私の手も握って〜」
どういうずるいなんだか。
適当に手を握って終わらせる。
「うふふ♡この手は一生洗わな」
「洗ってください、汚いです。あっ、俺はそろそろ」
裕太の飯も作っていかないとだからな。
「え〜、もう帰っちゃうの?」
「えぇ、まあ。副会長、さっきの方に伝えておいてもらえますか?すいませんでしたって」
「わかりましぇた!」
噛み方おかしくなってないか?
そしてここで重要なことに気づく。
園木がいない。
「あれ?園木?」
「あの娘なら先に帰るって言ってたわよ」
「あの、馬鹿!失礼しました、さようならっ!」
猛スピードで園木家まで走る。
約4分
「ハァハァ。お前勝手に帰るなよ!拐われたりしたらどうするんだよ!」
「えー?その時は白馬に乗った海斗クンが助けに」
「お前の頭はお花畑か」
そんなもん来るわけねえだろ。
「あ、明日はついてこないでね。デートなんだから」
「わかってるよ」
そしてその後、家に戻って裕太に飯を作り、また戻って園木の飯作ったりで忙しかった。
美緒にデートのことを話したが、何故かふてくされていた。
「はぁ、やっと明日休めるのか。ゆっくり寝よう」
その日もぐっすり眠りについた。
残り348日。




