↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/3

どうも。突然ですが、死にかけです。


 私は、夢でも見ているんだろうか。

 もしそうだとしたら、これは一体何の幸夢、いや、悪夢なのだろう。


『シリア様。シリア様』


 さっきからずっと、しつこいくらいに私の名前を呼んでくる者がいる。

 けれど、いつもの怒鳴り声じゃなくて、可愛らしい少年の声だ。


「はい、はい……何?」


 適当に受け流す。

 しかし、彼は私が返事しただけでも嬉しいのか、喜びを隠せぬ様子ではにかんだ後、私に告げた。


『あのですね、シリア様……』

「うん…」

『何か用意しましょうか?』


 彼の方を見ると、心配そうな顔をしていた。


 ――まあ、そりゃあそんな顔にもなるか。


 だって、こんな状況だもの。

 

 私は現在、だだっ広い叢の上に、半分気絶するような形で寝っ転がっていた。


 かれこれ丸一日はこの状態。

 流石にちょっとお腹が空きすぎてヤバい。


 これのどこが幸夢なの――……?


「そう、だね……まあ、だった、ら、なにか、ご飯……」


 あ、そろそろ不味いかも。

 声も若干震えてきた。


『し、シリア様! 承知しました! すぐにご用意します!』


 そう言って彼は慌ただしく動き出した。

 

 そういえば、私コイツのことなんて呼べばいいんだろう?


 朦朧とする意識の中、そんなことを考えていた。




  ・ ・ ・ ・ ・ 




 遡ること、一日前。

 私はあの人間の少年と化したスライムに懐かれてしまった。


 面倒くさいし悪さはしなさそうなので、勝手に着いてくることについては諦めかけていた。


 そして、改めて周囲を見回した、その時だった。

 突然、イノシシのような魔獣に襲われたのだ。


 いや、私の知っている「猪」より一回り大きいし、何より凶暴。

 あんなもの、まともに相手なんてしていられない。

 私は全力で走って逃げた。

 そして、近くにあった洞窟へ逃げ込んだのだけれど……。


 今度は、私と同じくらいの大きさがある、超巨大な黒い蜘蛛の群れに襲われた。


 ……もう、本当に散々な一日だった。


 少年スライムくんは意外にも有能で、イノシシ魔獣に襲われた時も足止めしてくれたし、蜘蛛に襲われた時も攻撃してきた蜘蛛を倒したりして、時間稼ぎをしてくれた。


 そんな感じで、全力疾走を続けていたものだから、動く気にもなれないほど疲れてしまって。


 それで休憩しようと叢で横になったところ、起き上がる気力を失くしてしまった。


 というわけなのだ。

 

 …っていうか、いくらなんでも、スライムのクセして、強すぎない?


 私を最初襲ってきた時は、私が避けられるくらいの攻撃だったのに……。


 もしかして、私のスキルのせいだったりする?


 だって、少年スライムくん、本人より大きなイノシシを気絶させてたもん。

 おかしくない?


 ……――というか、お腹空いた。


 そもそも記憶を思い出した時も、着の身着のまま追い出されたものだから、少年スライムくんが勝手に慕ってくるようになった時も、既に空腹だった。


 ……うん、やっぱりお腹が空いた。

 もう駄目だ。今なら食べ物のこと以外、何も考えられる気がしない。


 空腹すぎて思考パターンまでも影響を及ぼし始めたその時、少年スライムくんが戻ってきた。


 うん。取り敢えず彼をそう呼ぶことにしよう。


『シリア様! ただいま戻りました。遅れてすみません!』


 何やら彼の手から美味しそうな匂いがする。

 何か作ったんだろうか。


「…串焼き……?」

『はい。ホーンラビットを遠火で炙ったものです。薬草やハーブといった植物の香りを染み込ませています。』


 よくもまあ、あの短時間で。

 どうやら、思っていたよりも料理上手だったらしい。


 串焼きからほんのり漂う独特な香ばしい香りに、思わず生唾を飲み込む。


「食べていいの?」

『もちろんです! どうぞ。』


 というわけで、早速頬張る。


「……! 美味しい……」


 少年スライムくんが持ってきた串焼きは、普段食べていた鮮度の落ちた豚や鶏の肉よりも筋肉質で引き締まっていて、弾力があった。


 噛めば噛むほど濃い赤身の旨味が溢れ出し、ますます食欲が湧き上がってくる。


 さらに、ハーブの独特で爽やかな清涼感とほのかな苦味が肉の脂っこさを中和していて、噛み締めるたび、じんわりと美味さが広がっていった。


 それだけ食欲が湧いていたし、何より美味しかった。だから、気づけば綺麗に平らげていた。


「美味しかった……」

『本当ですか! 一生懸命作ったので、嬉しいです。ありがとうございます!』


 思わず一人言を呟くと、少年スライムくんが目をキラキラと輝かせて身を乗り出してきた。


 ……そういえば、この美味しい串焼きを作ったのも、魔獣に襲われた時に助けてくれたのも、このスライムくんなんだよね。


 かなり優秀だし、彼がいなかったらとっくに死んでいたかもしれない。


 (仲間にしてみるのも、悪くないかも。)


 悪いヤツじゃなさそうだし。

 満腹になったお腹を擦りながら、そんなことを考えていた。


読んでくださりありがとうございます!

もし良かったら評価やブックマークなどで応援していただけると、とても励みになります。


感想だけでも構いません。

皆さんの意見をお聞かせください。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。