いきなり死んだと言われましても
文体は少しコメディ寄りです。
楽しんで読んでもらえたら幸いです。
―――ジリリリリ……!
静寂を引き裂く悲鳴のような音が、部屋の空気を一瞬で沸騰させた。
耳元で大音量で流れるソレに、私はウンザリして呻いた。
「う、うるさい……」
一瞬父のいつもの引き笑いかと思ったが、すぐに流石に違う、と思い直した。
これは、目覚まし時計のベルの音だ。
・ ・ ・ ・ ・
私は手を伸ばして、枕元にあった時計のベルの音を止めようとした。
が、その手は宙を舞った。
不快に思い、うっすらと重い瞼を持ち上げると、そこは私の寝室ではなかった。
真っ白な大理石の円柱に、銀灰色の床。
何やら神聖な雰囲気が漂っている。
「いやいやいや……、ここどこ……?」
私、さっきまで自宅の寝室にいたよね……。
一旦状況を整理しよう。
私は、寝ぼけているんだ。
うん、多分そうだろう。
さっきまで寝てたし、夢でもおかしくはない。
「残念ながら、夢じゃないんじゃな、これが。」
「うわっ」
急に話しかけてこないでよ、驚いて素で返しちゃったじゃん。
心なしか、昨夜見ていたアニメに出てきたチートスキルを授けてくる神様に似ている気がする。
「どうも、ワシは神じゃ。」
「あ、そうですか」
見た目は真っ白な長い髭と髪にシワシワの顔と手。それに白い衣を纏っていた。
お爺さんっぽい感じだけど、なんかお茶目だな。
〝神〟……?
まさかね。
「突然なのじゃが、君は異世界転生することになったんじゃ。」
やっぱり。
異世界転生、ね。
変な夢見たな。昨日『もし異世界転生するんだったら』とか考えたせいか?
だったら、この神様は今からチートスキルでも授けてくれるって言うの?
って、ちょっと待って。
「私、死んだんですか?」
転生、はつまり、死んでないと成り立たない。
いくら夢とはいえ、死因は確認しておきたかった。
それとも、これ、ただの変なこと言うお爺さんの夢?
だったら嫌だな。
「ワシが56した」
「オイ神」
今コイツ神として絶対言ってはいけない事を言ったぞ。
さては、お茶目なんじゃなくて適当なのか?この神。
「じゃあ早速転生してもらうわけじゃが、何か希望はあるかの?」
いや、だから、そんなこと言われても――……
いや、うん。そうですね。
異世界転生、させてもらえるんでしょう?
これが夢でもいい。でも、なら、少しだけ楽しんでみるのも良いんじゃないだろうか。
夢なんだし。
だったら。せっかく転生するんだったら、チートスキルはほしい。
昨日の夜も考えていた。
上位貴族の令嬢とか勇者とか姫とかいう堅苦しい『肩書き』は別にいらない。
私が欲しいのはただ一つ。
「でしたら、チートスキルが欲しいです。」
「本当に、それだけでいいのかの?
もっと、隣国の王子と婚約したいとか、魔王を討ち滅ぼす勇者になりたいとか、そういう……」
「良いんです。」
「そうかのう……?」
そう首を傾げて、私の目の前にいる神様はどこか不服そうな顔をした。
・ ・ ・ ・ ・
「そんなにスキルとやらが欲しいのなら、くれてやるぞい。もとより授けるつもりだったしのう。」
…ん?
何だろう、この違和感。
『もとより授けるつもりだった』……?
え、じゃああんなにスキル欲しいって縋る必要無かったんじゃ……
「そういうわけじゃから、君に授けるスキルは既に決まっておる。名付けて、『ご都合展開』じゃ!」
神様、もしかして、今命名しました?
そういうのはスキルを紹介する前に決めておくべきじゃ……
「色々迷ってしまってな。やはりスキルじゃから、カッコよく決めるべきじゃろう?しかし前回はそのせいでネーミングセンスとやらを疑われて、嫌われてしまってな。」
そういうことなら、この単純明快なスキル名が良いと思います。
というか、サラッと心読んでない?この爺さん。
「ん?言っとらんかったか?ワシはスキルを授けた者と直接こうして話していれば、心が読めるのじゃ。」
聞いてないっすね。
初耳なんですけど。
私がそんな悪態を吐いていると、神様は誇らしそうにスキルの説明を始めた。
「このスキル『ご都合展開』はのう、発動すれば君自身を取り巻く全てが君の都合通りになるというチートスキルで…」
あまりに饒舌に語りだすものだから、私は思わず半ば呆れて。
――あー、はいはい。
そんなウンチクいいから、転生させてくれるんなら、早くしてください。
この、幸せな夢から…覚める前に――。
そう、思ってしまったのだ。
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