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その7 常夏のスキー場

 令和に入ってからの話である。冬のある日、大学生のグループが秋田県のAスキー場でスキーを楽しんでいたところ、突然吹雪に見舞われた。視界が真っ白になり、互いに身を寄せ合って震えていることしかできなかった。

 ところが、誰かの「あっ」という叫びとともに、辺りが草原に変わった。青空に太陽が照り、草木は生い茂り、鹿の群れが駆けていき、鳥が飛び交う。気温はまるで真夏のようで、あまりの暑さに、彼らがスキーウェアから下着からすべて脱ぎ捨てて全裸になった途端、その幻影は消えてしまった。その後雪上で凍死寸前のところを救助された彼らの証言は、誰ひとり食い違うところがなかったという。

 彼らはみな生物学科の学生だったが、目撃した鹿や鳥、草木はいままでに見たことのない種類のようだったという。


◇◇◇


 仙台に戻ってからも、ネットで検索を続けるのが日課になっていました。「常夏のスキー場」は、某投稿サイトで見つけたもののひとつですが、なにか典型的な怪異譚とは違っている気がして興味を引かれました。秋田の怪談としてネットでささやかれるものとしては、多くが廃墟やトンネル、峠で白い女を見ただとか、結果として呪われただとかといったものです。これは秋田でなくとも傾向として多い。ところが、この幻視体験は妙にダイナミックというか、力強い生命エネルギーを感じる体験です。証言に食い違いがないというのも気になります。大抵は目撃者によって違いがあって、そこが怪異の肝になっているものですが。

 ひょっとして実体験なんじゃないか。半年前までの私なら、そうは思わなかったでしょう。しかし、あの鉱山で未確認飛行物体《UFO》を目撃したいまとなっては、世界には人間の知覚できる範囲を超えたものが存在するのではないかと思えてなりません。

 考える間もなく、私は投稿者へのメッセージを書き込んでいました。

user「はじめまして、ao_deと申します。興味深い体験談ですね。もっと詳しくお聞きしたいのですが、私のアドレスにご連絡いただくことはできませんか?」

 意外にも返信はすぐに返ってきました。

host「メッセージありがとうございます。でもこれ以上お話することはできないんです」

user 「そうなんですか。差し支えなければ理由をお聞きしてもいいですか?」

host 「いま入院中でして。スキーから帰ってきてから体調を崩しちゃって。あの話するだけでめまいがするんです。この投稿もやっとしたって感じで。だけどどうしても伝えた」

 その返信のあと、しばらく時間があきました。文が途中で切れているため、続きが投稿されるものと思って待っていたのですが、10分経っても30分経っても投稿はされません。私は変に気が急き、自分でもどうかしていると思いながらも指が勝手に文字を打ち込んでいました。

user 「実体験だったんですね。入院中のところすみませんでした。あの、体調を崩されたのはスキーと関連があるんですか?」

 しかし返信はありませんでした。私は更にメッセージを追加投稿しました。

user 「目撃した鹿や鳥が見たことのない種類だったとのことですが、地球上のものではないということでしょうか? ひょっとして別の惑星、あるいは地球の遠い未来、遠い過去のものだとは考えられませんか?」

 翌日になっても返信はありませんでした。私は暇さえあればその投稿サイトをのぞいていたのですが、3日後、突然閉鎖されてしまったのです。

 あとには404 Not Foundの文字ばかりが残されていました。


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