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立ちかへり あはれとぞ思ふ よそにても
題知らず
在原元方
立ちかへり あはれとぞ思ふ よそにても 人に心を おきつ白波
(恋歌上474)
常に思い出しては恋しく思います。
遠く離れてしまってはいるけれど、私の貴方への恋心は、沖の白波のように、絶えることはないのです。
遠距離恋愛か、あるいは身分の差がある恋か。
いずれにせよ、たとえ戯れであっても、一度は関係を結んだ仲と思われる。
しかし、事情が、それ以上のことを許さなかった。
そんな、たやすく成就できない恋だから、ますますその思いは強くなる。
そして、その恋心は、沖の白波のように絶えることない。
実り切れない、諦めきれない恋の代表歌と思う。




