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君まさて 煙たえにし しほかまの
河原の左大臣の身まかりてののち。かの家にまかりてありけるに、しほかまといふ所のさまをつくれりけるを見てよめる
※河原の左大臣:源融。光源氏モデルの一人。
※しほかまといふ所のさまをつくれりける:宮城県松島湾の塩釜の浦は、当時絶景と称されていて、源融は、その様子を模した景を河原院の庭に作ったとされる。
源氏物語では、夕顔が突然死した場所のモデル。幽霊が出る場所、心霊スポットにもなった。
紀貫之
河原の左大臣がお亡くなりになられた後、そのお屋敷に伺ったところ、塩釜という場所の風景を模したものを作っておられたのを拝見して詠んだ歌。
君まさて 煙たえにし しほかまの 浦さひしくも 見え渡るかな
(哀傷歌852)
貴方様がお亡くなりになられ、塩を焼く煙が絶えてしまった塩釜の浦は、何とも寂しく見渡されてしまうのです。




