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あきかぜに あふたのみこそ かなしけれ
だいしらず
小野小町
あきかぜに あふたのみこそ かなしけれ わがみむなしく なりぬとおもへば
(恋歌五822)
秋風に激しく煽られる稲穂の実ほど辛く悲しいものはない。
せっかく実ったっというのに、その風によって空しく吹き飛ばされ、(酷い雨や暑い夏に耐えた)今までの苦労も無意味なものになってしまうのだから。
(別訳)
あの人に飽きられた後の、逢えるという願いほど悲しいものはありません。
そんな頼みにならない、あてにならない希望を信じた我が身が、空しくなってしまうと思うので。
稲穂の実になぞらえて、我が身を嘆く、恋の名歌の一つと思う。




