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62 本部

更新遅れてすみません! 此処の所体調が良くありませんでして......。

 

「それにしても、凄く賑わってるな。まるで祭でもやってるみたいだ」


「はい。屋台も至るところに出ていて驚きました。しかし、ギルドマスターは近頃の王都は物騒だと仰っていましたが、あれは何のことだったのでしょう? 気掛かりです」


 俺もソフィアと同じことを疑問に思っていた。見たところ、王都は賑やかで人通りが激しく、物騒とは掛け離れているように見える。


「ま、此処はまだ王都の入り口だからな。偶々、この辺りの治安が良いだけかもしれない。油断せずに行こう」


「それもそうですね。パン屋に急ぎましょう」


 俺はソフィアの言葉に頷くと、先程、王都の入り口で購入した王都の地図を開いて人混みに入っていった。


 ☆


「メロンパンとクロワッサン、カレーパンを三つずつお願いします」


「かしこまりました。銀貨三枚お預かりします。銅貨三枚のお返しとなります。はい、商品をどうぞ。またのお越しをお待ちしております」


 王都のパン屋の畳み掛けるような接客に圧倒されながら俺達はパンを受け取り、逃げるように退店した。

 俺達の住む街、ルデンシュタットとは違うキラキラとした店内や客、店員に酔ってしまったのだ。此処まで来てホームシックである。


「何と言うか、筆舌に尽くし難いきらびやかさがありましたね」


「分かる。紳士淑女って感じの人ばっかりだった......」


「そりゃ、アンタ、此処が北区やからやわ。北区はセレブばっか住んどるさかい、キラキラしとる奴らが多いんや。南の方行ってみ? お世辞にも豊かとは言えん労働者がいっぱい住んどるから」


「へえ~お詳しいんですね。......え?」


 俺が慌てて横を向くとニカッと笑う大きな男が立っていた。あまりにもナチュラルに話しかけてきたのでつい、先程から一緒に行動していた知人のように思ってしまった。


「失礼ですが、どなたでしょうか?」


 ソフィアが一歩退いて聞いた。


「ちょ、警戒せんといてえな。ワイ、ずっとアンタらのこと待っとったんやで? ワイはリョウジ・ナミハヤ。この王都にあるギルドの纏め役、ギルドマスターや」


「……なっ」


 思わぬ場所での思わぬ人物との遭遇に俺は思わず驚きの声を漏らしてしまった。


「な、何故、俺達が此処に来るって分かったんですか?」


 俺達がこのパン屋を訪れることは誰にも伝えていない。それなのにどうして彼はこんなところで俺達を待っていたのだろうか。


「あ、疑っとんな? エディアとウカトにアンタらは王都で1番美味いパン屋で待ってたら絶対来るぅゆわれて、ずっと待ってたんや」


 『ワイもホンマにパン屋なんかに来るんかいな、って半信半疑やってんで?』とリョウジは付け加えた。どうやら彼の言っていることは本当らしい。


「それでは、貴方がギルドに案内して下さるのですか?」


「せやな。ワイも個人的にアンタらに興味あるし、案内させて」


「じゃ、じゃあ、よろしくお願いします。あ、俺、オルム・パングマンです」


「ソフィア・オロバッサです」


 俺は思い出したように自己紹介をし、ソフィアもそれに続いた。エディア達から前もって俺達について聞いていたようなので不要だったかもしれないが、まあ、礼儀だしな。


「おう。ほんなら、王都の観光でもしながらギルド行こか。ワイも王都に住んでもう二十年やからな。王都についてやったら何でも聞いてくれてええで」


 リョウジの言葉に俺はそれなら、と手を挙げた。


「エディアに最近の王都は物騒だと聞いたんですけど、本当なんですか? 見たところ平和そのもののように見えるんですが......」


 その質問にリョウジは僅かに笑みを零すと


「それなら専門家が丁度、今日、ウチのギルドに来んねん。その人から聞くとええ。ま、取り敢えず、此処からギルドに行くまではそれほど治安は悪くないから安心し」


と、何やら気になることを言ってきた。

 否定はしないところを見ると、治安が悪いのは事実のようだが......。



 その後、当たり障りのない話をリョウジとしながらギルドを目指して歩いていると俺達の前方に巨大な建物が現れた。レンガ作りのその巨大な建物の上には分かりやすく『guild』の文字が掘られている。

 間違いない。これがギルドの本部だ。俺達の街とは違い、扉の無い広くとられた入り口に人々が絶え間無く出入りしている。


「すげえ......」


「ルデンシュタットのギルドとは一線を画す規模のギルドですね」


「ま、本部やからな。ワイらは裏口から入ろか。表口混んでるし」


 表口を迂回してギルドの裏に回り、関係者以外立入禁止の表記のある裏口の扉をリョウジは開け、俺達に入るように言う。


「まあ、入ってーや」


 それに従い、会釈をして裏口の扉からギルドの中へと入った俺達をリョウジは商談室のような部屋に案内した。

 凄い部屋だ。ソファーも、床も、壁も、机も、何もかもが一級品に見える。


「一流の人は一流の物を持つってことですか......」

 

 俺が見たこともない上流階級の世界にそんな感慨を覚えていると、リョウジが笑いながら首を振った。


「や、この部屋とかその他のギルドの設備は前任のマスターらがギルドの予算にポケットマネープラスして揃えた奴でワイは何もやってへんで。何ならワイの服、全部その辺の路上販売の安もんやし。服なんかそこそこ着心地が良くて、衛生的やったらなんでもええやろ?」


 ドヤ顔をしながらそんなことを言うリョウジに俺は絶句した。いや、確かにちょっと地味な服だなとは思っていたけれども。


「その考え方には共感します」


 そういえばソフィアも服は実用的だったら何でも良い派だったな。


「じゃあ、リョウジさんは何にお金を使っているんですか?」


「貯金」


 俺の質問にリョウジは即答した。 


「貯金ですか?」


「そう貯金。ワイはユクヴェルの出身やねんけどな? ユクヴェルのもんは貯金が好きな奴が多くてな。ワイもその一人。あ、因みにワイのこの喋り方もユクヴェルの方言やねんで」


「まあ......リョウジ殿が単純にケチだというのも有りますけどね」


 その声は俺とソフィアの背後から聞こえた。


「ど、どちら様ですか!?」


 俺が慌てて振り向くと、そこにはリョウジの服とは対称的に白と金色を基調とした高貴な雰囲気のある服を身に纏った女性が立っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] >服なんかそこそこ着心地が良くて、衛生的やったらなんでもええやろ なのだけど、そうもいかない場面の多いことよ まあソフィアならよほど変なものでなければ何着てもそこそこ良いものに見てもらえそう…
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