第二十三話 魔王の日記
巨木のダンジョンで得られた情報を基に水のダンジョンへと向かう道すがら、ユーマ達は野営を行っていた。
この日、ユーマは珍しく魔王よりも早く眠りについていた。
(ユーマも寝たようだし……)
魔王はユーマが眠りについたのを確認すると荷物に隠しておいた日記帳を取り出す。
そして内容を振り返るようにしてそのページをめくっていくのであった。
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ソルト暦九八一年
アリエスの三
今日、私は何もできなかった。ただただ見ていることしか。
きっと君は深く傷ついてしまってだろう。
いつも私を励ましてくれた君。いつも私に元気をくれた君。
そんな君を私は裏切ってしまった。
この気持ちを忘れないために、今日から日記を残すことにする。
君に謝ることの出来るその日まで。
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ソルト暦九八一年
アリエスの四
なぜ? あの村が襲われる理由なんてどこに??
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ソルト暦九八一年
タウラスの二
──やっと気持ちの整理が出来たので日記を再開する。
私自身もひどい火傷を負った。授かった能力のおかげでなんとか命だけは助かったけど……。
でも能力の代償なのか、体が少し成長してしまったみたいだ。
行くあてがない私は森の中をさまよっていたら、レノスさんという獣人型の魔物に拾われた。魔物は恐ろしいものと聞かされていたけれど、レノスさんは私に親切にしてくれた。
魔物と人の違いって一体何なのだろう?
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ソルト暦九八一年
タウラスの三
今日は気になっていたことを試した。
能力を物に対して使ってみた。
すると、石は風化して、植物はぐんぐん成長して最後には枯れてしまった。
聞いていた能力の内容と違う……なんでだろう??
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ソルト暦九八一年
タウラスの四
レノスさんから魔物について色々と教えてくれた。
でも私には難しくてほとんどわからなかった。
一つだけわかったのは、今の魔王は人に対してすごく好戦的で、レノスさんと考えが合わなくて苦労しているらしい。
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ソルト暦九八五年
キャンサーの一二
レノスさんが魔王の軍勢に襲われた。
だけどレノスさんも私も無事だった。
どうやら私が魔王の軍勢を撃退したらしい。近付く魔物を全て老化させて動けなくしたのだとか。
そして魔王も私が……。
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ソルト暦九八五年
キャンサーの一三
私が魔王を務めることになってしまった……。
魔物達の間では魔王を倒したものが次の魔王になることがしきたりになっているんだって。
私が? 魔王に……?
レノスさんに聞いてもこのしきたりから逃れることは出来ないって……。
はぁ、困った……。
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ソルト暦九八五年
キャンサーの二五
レノスさんによると私の能力は聞いていたものではなく、『時間進行』が正しいのだとか。そして能力は神に授かるものではなく、元々持って生まれたものだと言う。
その他にも神について色々と教えてくれた。詳しい説明はよくわからなかったけど、神は崇めるべき存在ではないことはよくわかった。
そして、村の件の真犯人も……。
私は絶対に神とこの国を許さない。
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ソルト暦九八五年
レオの一三
魔王の仕事も徐々に慣れてきた。と言っても大事なことはレノスさんが全てやってくれるから、私は「うむ」と言うだけの簡単なお仕事。
あと誰かの前ではレノスさんのことを『レノス』と呼ぶように叱られる。ただでさえ威厳が足りないのだから少しでも偉そうに見えるようにだって。
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ソルト暦九八五年
レオの二五
これだけは譲れないこととして、魔物達には人に手を出すことを禁じさせた。
人と合っても逃げるようにと。
魔物も人も変わらないんだから、余計なイザコザは増やさず、平和に生きることを目指していこうと思う。
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ソルト暦九八六年
アリエスの二一
魔王を倒すために誰かがこの城に近付いているらしい。
ここまではまだ数日掛かりそうだけど、その者の特徴を聞くと君の顔が頭に浮かんでくる……。
もし、君であったなら私は……。
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ソルト暦九八六年
アリエスの二五
やはり私の予感は当たっていた。
久しぶりの再会だけれど、『時間進行』で成長してしまった私に君は気付いていないようだね。
でもそれでいい……。私には君に合わせる顔がないよ。
だから君とは『魔王』として接するようにしよう。君に嫌な記憶を思い出させないように……。
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ソルト暦九八六年
アリエスの二六
王都を目指した君との旅路。
昔から二人で旅をするのが夢だった。二度と叶うことがないと思っていたからすごくうれしい。
でも私はあくまでも『魔王』。素を出さないように気を付けないと……。
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ソルト暦九八六年
アリエスの二八
王都についた。
早速教会に向かったけど、そこに居たのはあの時君をさげすんだやつだった。
少し懲らしめてやろうとしたらやりすぎちゃった。
そして君の処刑の話を聞いて怒りが抑えられなくなった。
本当は元に戻す方法もあるんだけど、どうしても許せなくてそのままにしちゃった。
でもあの高笑いとかは実に『魔王』らしかったんじゃないかな?
なんとか『魔王』を演じられそうだ。
そしてこの日は君と初めての冒険もした。
冒険者になって冒険するのが夢だったね。
形は少し違うけど夢が叶ったみたいでうれしかった。
でも洞窟で君から置いてけぼりをくらっちゃった。
浮かれすぎた自分に腹が立って泣いているのを君に見られてしまったね。
なんとか誤魔化せたけど、君に気付かれないように『魔王』を演じないと……。
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ソルト暦九八六年
アリエスの二九
君と初めてのダンジョン。
良いところをみせようと張り切ってみたけど、空回りしてばかりで上手く行かなかった……。
結局君に助けてもらっちゃったし。
『魔王』らしく、もっとしっかりしないと!
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ソルト暦九八六年
タウラスの一
大神殿への道すがら、困っている少女を助けた。
君は最初、困っているあの子を放っておくのかと思ってドキドキしちゃったよ。
でも、君は昔の優しい君のままで安心した。
口調こそきつくなったけど、やっぱり君は君だった。
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ソルト暦九八六年
タウラスの五
結局大神殿では大した情報が得られなかった。
でも『偽物の魔王』って一体なんだったんだろう?
それと神の僕を名乗った女性……どこかで見たような?
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ソルト暦九八六年
タウラスの一五
レノスの前だと素が出そうになってしまう。
でもさすがレノスだ。
そういえば神官長の言っていた『偽物の魔王』と言うのは、神の使いではない魔王の事を指しているみたいだ。
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ソルト暦九八六年
タウラスの二一
神具と聖殿の情報が手に入った。
いよいよ神と対峙する日も近付いだろう。
神はきっと今まで対峙したどんな敵よりも強いのだろう。
君ですら敵わないかもしれない……。
でも、どんなことがあろうと私は神を倒す。
そして何があろうと君のことは私が守る。
例えそれで私が死ぬことになろうとも。
それが『エレナ』として君にしてあげられる唯一の罪滅ぼしなのだから……。
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