表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら  作者: すかいふぁーむ
疎遠だった幼馴染が怖い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/79

合宿 一日目

「じゃ、康貴くん。よろしくね!」

「はい」


 高西家の玄関でスーツケースを転がすおばさんとおじさんに挨拶する。

 なぜかよくわからないが俺はしばらく高西家の子として愛沙の世話になるらしい。そしておばさんたちはうちに行って四人で生活を楽しむとか。仲良いなぁ……。


「行っちゃったねー」

「そうだな」


 隣で一緒に見送るまなみと目を合わせる。愛沙も玄関までは来ていたが目は合わせてくれなかった。


「なによ……」

「いや、えっと……お世話になります?」

「そうね」


 それだけ言うとリビングに引き上げていく。最近割とコミュニケーションが取れるようになったと感じていたんだが学校に行ったことでまた微妙な距離感が生まれていた。

 たまに向こうからメッセージが来るようになってはいるのが変化といえば変化だろうか。内容はめちゃくちゃぎこちない簡素なものだったが。


「お姉ちゃんと仲良くなってるみたいだね!」

「あれを見てそうなるのか……?」

「えー、お姉ちゃんすごい康貴にぃのこと信頼してると思うんだけどなぁ」


 姉妹ならではで何か感じるところがあるかもしれないが、いまのところその信頼は俺には全く伝わっていなかった。


「ま、康貴にぃは何があってもお姉ちゃんのこと嫌いにならないでいてくれるから、それでいいよね!」

「まあ、嫌いになることはないだろうな」


 愛沙を嫌う理由なんてないだろう。たとえ俺を見る目がどうであろうと愛沙が悪いやつじゃないのはわかってるしな。


「ふふーん。ま、とりあえず勉強だー!」

「そうだな」


 まなみに手を引かれて部屋に連れて行かれた。


 ◇


「で、どのくらいできてるんだ?」


 今回の合宿の目的はまなみの宿題を終わらせることだ。

 日記とかは自分であとでやってもらうしかないが他のことは実技も含めてここで終わらせるつもりだった。


「えっとねー。こんな感じです!」


 夏休みしおりと照らし合わせて各教科の進捗を確かめる。

 国語二割、数学三割、英語八割、理科系と社会系は大した量ではないが半分くらい。実技は美術の絵だけが残っていた。


「意外と頑張ってるな」

「えへへー!」


 まだ夏休み中盤と考えれば十分やってるほうだろう。なんなら普段のまなみを思えば、全部一割くらいを覚悟してきたくらいだ。


「後半がつぶれそうなのはわかってたからねー」

「まぁそうか」


 このタイミングですべての宿題を終わらせないといけない理由はこれだ。

 まなみは夏休みの後半、すでに多くの部活から助っ人を頼まれていて予定が埋まっている。好きでやってることだから予定が埋まること自体は喜んでという感じなのだが、問題は宿題だ。

 いまのうちに片付けないと、ここから先はやる時間がないのだ。


「と、いうわけで、意外と頑張ってたご褒美になでなでを要求します!」

「はいはい」


 軽く頭を撫でると満足そうに微笑んだ。


「よしっ! じゃあお願いします!」

「まあ、いつもと違って横で見張っとくしかできないけど」

「わからなかったらガンガン聞きます!」

「はいよ」


 合宿中は俺も横で勉強しているよう、自分の両親にも高西家の両親にも言われていたからお言葉に甘えよう。

 机に向かうまなみを見ながら、俺も残っている宿題に手を付けた。


 ◇


「頑張ってるわね」

「あ、お姉ちゃん!」


 部屋でしばらく集中していたら愛沙が入ってきた。気づいてなかったが随分集中していたらしい。


「そろそろ休憩にしたら?」

「うんー!」


 嬉しそうなまなみを見ると結構無理していたのがわかる。

 頑張ってるときは俺が休憩の時間を作らないとな……。いいタイミングで来た愛沙はさすがお姉ちゃんだなと思った。


「クッキー焼いたから持ってくるわ。飲み物、コーヒーがいい? 紅茶?」

「クッキー⁉ やったー! 紅茶がいい!」

「まなみは紅茶ね。康貴は……紅茶よね」

「ああ、ありがと」


 それだけ言って下に降りていく。


「クッキークッキー!」


 待ちきれないまなみもすぐについていったので俺も手伝いのために下に降りることにする。

 結局全員下に集まったのでリビングで休憩になった。


「美味しー!」

「よかった」


 まなみは吸い込むようにクッキーを食べ続けていた。


「口、ついてるわ」

「えへへー」


 時折こうして愛沙に拭いてもらったりしているのも微笑ましい。


「美味しいねえ、康にぃー!」

「そうだな。ほんとにうまい……」


 なんか母さんが一度高そうな洋菓子を買ってきたことがあったがその時のより美味しい気がする。


「作りたてを食べてもらえて良かったわ」

「康にぃー、そっちのも食べたいー」

「はいよ」


 抹茶味とか紅茶味とか色々用意してくれていたので俺の前にしかない味がちらほら出てきていた。

 取ってやると何故か口を開けて待っている。


「あーん」

「なんでだ」

「あーん!」

「……仕方ないな」

「ふふふー」


 満足そうで何よりだが、あんまり愛沙の前でこういうことをしてるとなんか機嫌が悪くなることが多いので気が気じゃない。


「なによ……」

「いや……」


 愛沙の様子を伺うとそんなに機嫌が悪くなってる様子がなくて安心する。それを見て何を思ったかまなみが身を乗り出して騒ぎ出す。


「お姉ちゃんもやってほしい⁉ ほしいよね⁉」

「なんでよ」

「私だけあーんしてもらうのは不公平かなって」

「私は別に──」

「ほらほら康にぃ! やってあげて!」


 まなみに押し付けられるようにクッキーを持たされる。仕方なく愛沙の方を見ると怒ってるのか何なのかよくわからない表情で顔を赤くして横目にこちらを見ていた。


「なに……やるならやりなさいよ!」

「いや、無理にとは言わないけど……」

「やりたくないの⁉ まなみにはやったのに!」


 どうすりゃいいんだ……。


「ほらほら、お姉ちゃんも待ってるよ」

「あれは待ってる……のか?」

「待ってるよ! ほらほら!」

「わかった……はい」

「ん」


 静かに愛沙の口にクッキーが運ばれる。

 顔を赤くしたままこちらを睨むように見つめてくるが、ここのところよく話していたおかげだろうか。

 その表情も何故か少し可愛く見えてしまう自分がいた。


 ◇


 夜になった。


 看病に来たときのようなミスはもうしない。

 風呂にはしっかり着替えを持って行かせたし、寝る部屋もしっかり用意されているから何も問題なく夜を迎えられた。

 特筆すべき点があるとすれば愛沙の作ったからあげがめちゃくちゃ美味しかったことくらいだ。


「あれは美味しかった……」


 また食べたい。何度でも食べたい。こんなボーナスがあるならいくらでも合宿でもなんでも付き合おうと思えるくらいだった。

 慣れない場所で寝れないかと思ってたけど、意外と大丈夫そうでよかった。


「まあこないだ愛沙の部屋で寝たのに比べればな……」


 すでにベッドでまどろみはじめている自分がいた。すぐ眠りにつける気がする。


「おやすみ……」


 誰に言うでもなくそうつぶやいて意識を手放した。


 ◇


「ん……?」


 違和感を感じて目を覚ます。そうか。自分の家じゃないもんな……。


「いや違う、これはおかしい……」


 タオルケットを抱きしめて寝ていたことは覚えているがタオルケットはこんなに厚みも無ければ暖かくもない。

 恐る恐る目を開けると、あどけない表情ですやすや眠るまなみの姿がそこにはあった。


「なんでだよ……」

「ん? んむぅ……」

「んむぅ……じゃないんだよ。抱きつくなこら」


 軽くこづくが全く起きる気配がない。


「んー!」

「痛っ、しがみつくな! 馬鹿にならない力があるんだからお前は」

「んー!」

「はぁ……」

「んー」


 起きない。そして抱き枕にされてしまう……。

 本気で起こそうと思えば起きるかもしれないがその場合それでなくても無防備なパジャマ姿のまなみに必要以上に触れる必要が出てくるのでためらわれる。

 ただこのまま寝て明日の朝愛沙に見られたときは、それはそれで怖すぎた。


「たのむー、起きてくれー」

「んっ!」

「痛い!」


 起こそうとすればするほどしがみつかれて身動きがとれなくなる。いやもうこれあれだろ、どっかの部活で習った寝技だろ⁉ はずれないぞ⁉


 もう諦めて朝愛沙より先にまなみが起きてくれることに賭けるか……? いや宝くじよりのぞみが薄い賭けになるぞ……。


「どうしよう……」


 途方に暮れていると救援がやってきてしまった。タイミングとしてはまぁ、最悪だろう。


「なにしてるの……」

「えっと……これは……」


 冷や汗が流れたのを感じる。

 必死に言い繕う言葉を探すが、意外なことに矛先は直ちに俺へ向くことはなかった。


「こら、まなみ……起きなさい」

「んう!」

「えっ⁉ ちょっと⁉」


 あろうことかまなみは近づいてきた愛沙を抱きかかえてしまった。もちろん俺は足でがっちりロックされていて離れられない。


「こら……いい加減に……ひゃっ⁉ いまの康貴⁉」

「いや、俺もよくわからない」

「そ……そう……でもあんまり動かないで」

「わかった……」


 そう言われると今触れているところがどこなのかとか余計なことが頭をよぎる。


「んっ⁉ これどんな力で……外れない!」

「俺の状況がわかってくれたことだけは良かった」

「そうね……いや良くはないのだけど……」


 必死に思考の外に邪な気持ちを追いやって精神を集中する。


「ねえ、康貴」

「なんだ……?」

「あのね……その……提案なんだけど」


 顔は見えないが神妙な声の愛沙。


「ああ」

「これ以上動くと多分、余計大変なことになっちゃうと思うの」

「そうだな……」

「このベッド、幸いダブルベッドだしね? その……」


 言わんとすることはわかる。理性の試される夜になりそうだ……。


「このまま、一緒に……」

「仕方ないな」

「そう! 仕方なく! 仕方ないから……!」


 誰に言い訳するでもなく二人で仕方ないと繰り返しながら眠りにつくことになった。


「……おやすみ。康貴」

「ああ……おやすみ」


 言うまでもなくなかなか寝付けなかった。


おんなじ話あげてましたすみません!

ご指摘ありがとうございますー!


ここから勉強合宿編です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 修正ありがとうございました(^人^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ