思い出のくま②
「あ……」
「残念だったなあ……まあまた機会があったらやってくれ」
「ぐす……」
泣いちゃダメだ。
泣いたらいっぱい迷惑がかかっちゃう。優しかったおじさんにも、康貴にも……。
でも私はもう、あの子が……。
「うぅ……」
なんとか涙をこらえていると、康貴がおじさんにお金を渡していた。
「よーし。坊主は何がほしいんだ? 移動してやるよ」
康貴はゲームが欲しいって言ってた。
私と違ってここまでお金もちゃんと我慢してたから、いっぱいできるはずだ。
「うぅぅぅ……」
そう思うとなんだか悔しくてまた涙がでそうになる。
でも……。
「このままで大丈夫」
「おお? そうかい。じゃあがんばんな」
康貴は自分で弾も込めて、そして……。
「え?」
一発目。
狙いはゲームじゃなくて……。
「あー、失敗した」
くまの頭にしっかりあたっていた。でもちょっと動いただけでくまは全然落ちない。
どうして?
「そんな顔すんな。落とすまでが射的だから」
康貴がそう言いながら二つ目の弾を込めた。
「いけ!」
「あっ!」
今度は身体に弾が当たる。
またちょっとだけずれて、でも落ちない。
「さいご……」
「大丈夫。俺はあと二回できるから」
「でも……!」
それをしちゃうと康貴は……。
「大丈夫」
三発目。私と同じように耳をかすめて、でもちょっとだけ動いて、それで終わっちゃった。
「もう一回!」
「大丈夫かい?」
「うん。あと一回はできるから」
「そうかい。がんばんな!」
「こうき、だいじょうぶだよ! わたしがまんできるよ!」
「いいから」
康貴がせっかく貯めてたお金を、私のために使ってくれてる。
二回目の最後の弾。
「あ……」
「惜しいねえ」
もう少しで落ちそうだった。
あと一発。頭にでも当たればもう、落ちる。
康貴はためらいなく財布に手をかけたが、おじさんがそれを止めた。
「一発サービスしてやるよ。これで決めて残った金でなんか食ってこい」
おじさんがくれた最後の弾は、吸い込まれるようにくまのぬいぐるみに向かっていき……。
「やった!」
もうその時、私はくまのことよりも、康貴を見るのに必死だったのを覚えている。
自分のことのように喜んでくれた康貴が受け取ったぬいぐるみを渡してくれた。
なんだかそれだけで、ぬいぐるみじゃない何かわからない理由で、胸がいっぱいになったのを覚えている。
私はもしかしたら、あのときから康貴に目を奪われ続けているのかもしれなかった。




