油断大敵!村人達の防衛戦
「おうらぁぁぁぁぁ!!」
ガトが怪物の顔面を打ち抜く。
「とどめだぜ!」
ジャニアスが何処から持ってきたか分からない槍で、倒れた怪物にとどめを刺す。
「よくやったジャニアス!」
「もちろんよ!」
2人が拳を合わせる。
「ほら、怪我した人はこっち!あと手が空いた人は薬草をすりつぶして!」
髪を短く切りそろえた女性が指示を出す。
「ニブラ、あと薬草はどのくらいある?」
ソルトがその女性ニブラに聞く。
「わかんない!確認する暇がない!」
女性は手を動かしつつ応える。
「わかった。俺が確認しよう。量次第で手当ての優先度が変わってくるからな。」
量が少ない場合は軽症の者に使うわけにはいけなくなる。
「薬草は俺が確認するよ。この怪我じゃ戦うことはできないからな。」
腹を怪我した村人が言った。
「わかった。任せるよ。」
ソルトは彼に任せ、他に仕事を探して辺りを見回す。
「シーア、何をしているんだ?」
シーアが道端できょろきょろとしていた。
「ソルト!?えと、私も、何か、手伝いたくて。」
シーアは何か手伝えることがないかを探していたのである。ただ彼女は箱入り娘。何を手伝えばいいか分からない。
「シーア。気持ちは有り難いが君は馬車に隠れておいてくれ。」
「でも…。」
シーアは周りを見渡しながら言う。周りでは村人たちが慌ただしく働いている。
「ソルトの言う通りよ!シーアに何かあったら村に残っている皆に怒られちゃうわ!何も心配いらないから隠れておいで。」
ニブラがシーアに笑顔を向けていった。
「だけど…。」
それでもシーアがためらう。
「そうだぜシーアちゃん!シーアが怪我でもしたら村中の男が泣いちまうぜ!」
「ほんとほんと、何かあったら俺らがボコられちゃうぜ!」
「そうよ!シーアちゃんは私たちハテハテ村の宝物なんだから!」
怪我の手当てを受けていた村人たちも口々に言う。
「……。」
シーアは押し黙った。
「ほら、みんなも心配している。さぁ、馬車に隠れて、そこに居れば安全だから。」
「…うん。」
ようやく納得したのか頷くシーア。とぼとぼと馬車に移動し始めた。
「…よし。」
それを見届けソルトも移動を開始した。全体を見るために壊れた家屋に登る。
高所から全体を見回すと、防御の薄い箇所があることに気が付いた。
「ラッスン!あちら側の援助に行ってくれ!」
人数が手厚いところにいた一人の村人に指示を出す。
「りょーかい!」
ラッスンと呼ばれた男が走って手薄の所に向かった。
「レクザ!その怪我で無理をするな!ニブラの所で手当てしてもらえ!」
「気づいたか…。わかった行ってくる。」
レクザと呼ばれた男はニブラの所に移動した。
「俺も手薄の所に行くか。」
ソルトはがれきを降り始めた。
「ソルトまて!」
「?」
ガトがソルトを呼び止める。
「ソルトはそこで指示を出してくれ!誰かしら全体を見回せる者がいたほうがいい。」
「!わかった。」
ガトに指示系統を任されソルトは再びがれきに登り指示を出し始めた。
ソルトが指示を出すようになってから、怪我人が目に見えて減っていった。
村 人 防 衛 中
ソルトが指揮を執り始めてからだいぶたった。怪物も数を減らし、戦いも終盤になってきた。
「そこのお方!」
「?」
ソルトが振り向くと何人かの兵士がこちらに来ていた。彼らが来たということはもう街中も大分片付いたのであろう。
「怪物退治のご協力ありがとうございます!」
兵士の1人が敬礼して言った。
「いえ、こちらは自分たちを守っていただけです。」
ソルトは正直に言う。
「それでも大分助かります。怪物は大体は退治し終わりました。今は残党がいないか見回っているところです。」
「お疲れ様です。」
「いえ!ところで何か必要なものとかございますか?」
「あー…。薬草など薬を貰えれば。」
「分かりました。手配します!」
「お願いします。」
ソルトと兵士の会話が一段落したときだった。
「怪物が隠れていたぞー!逃げろーー!」
「「!?」」
突如悲鳴があがりソルトと兵士はそちらを見る。
隠れていたという怪物がおり暴れていた。近くにいた住民が逃げている。
「なんだあれは!他の怪物よりも二回りもでかいぞ!」
兵士の言葉通りその怪物は他の度の怪物よりも体が大きく、角なども黒く太かった。
そして、突然暴れていた怪物の動きが止まり一点を見つめる。その視線の先には…。
「シーア!?」
馬車に隠れているはずのシーアが手に袋をもってへたり込んでいた。怪物は真っ直ぐにシーアのもとへ走り出す。
「シーア!!!!!」
ソルトも思いっきり瓦礫から飛び降りシーアのもとへ走り出した。
「グワアァァァ!!!」
「くそおおおおお!間に合え!!」
ソルトの方が距離は離れていたが、今朝に目覚めた『移動速度上昇・中」のおかげで怪物よりも早くシーアとの差を詰める。
「間に合った!」
間一髪先にシーアのもとに着いたソルトは勢いそのままに、先ほどのガトみたく怪物にタックルをかました。
「グガアァァァ!?」
ドシンと怪物は後ろ向きに倒れる。いくら他の怪物よりも大きいとはいえ、速い速度で人がぶつかれば耐えられない。
怪物と一緒にソルトも倒れるがすぐに起き上がりシーアのもとに駆け付ける。
「シーア!」
「……。」
シーアは呆然とした顔でソルトを見つめたが、すぐに顔を崩し泣き始めた。
「…ひくっごめん、なざい。」
「どうして馬車から出たんだ?」
「…ひぐっ馬車に、薬草が、あっだがら、ニブラに、でも、あじ、くじいで。」
どうやら馬車に薬草が残っているのを見つけ、ニブラのところに持っていこうとしたようだ。でも途中で足をくじいてしまって困っているところに運悪く怪物が来てしまったようだ。
「ひぐっごめん、なざい。」
ソルトは困った顔をした。みんなの為にと思ってシーアは行動したのだ。馬車から出たことへの文句は言えない。
「いいんだ。シーア。無事でよかった。」
ソルトはそう言ってシーアを抱きしめた。シーアはソルトに抱かれ涙を流す。
「ソルト!!!!油断するな!!そいつは倒していないんだぞ!!」
ガトの声が響いた。
「グワアァァァ!」
「!?しまった!」
ガトの言葉で振り向くとそこには起き上がった怪物が立っていた。
「ソルトォォォォォ!」
「ソルト!!」
ガトとジャニアスがこちらに向かって走ってきている。
「グワアァァァ!!!」
怪物は右腕をあげた。
「(どうする!?俺だけなら避けられると思うがシーアがいる!)」
ソルトは窮地を抜け出す手段を考えるが、いい案が思い浮かばない。
「くそっ間に合わねぇ!ジャニアスそれをよこせ!」
そう言ってジャニアスから槍をひったくるガト。
「何をするんだ!?」
「こうするんだあああああああ!」
ガトは思い切り槍を怪物に向けて投げ飛ばした。槍は真っ直ぐと怪物に向かって飛んでいく。
だが間に合わない。怪物は腕を振りおろした。
「シーア!!…ぐぅ」
「っ!?ソルト!」
ソルトはシーアをかばい背中を切り裂かれた。おびただしい血が地面に流れる。
「グガアァァァ!」
遅れて怪物に槍がささり地面に倒れる。
「ソルトッ!ソルトッ!」
「ううっ…。」
シーアがソルトに呼びかけ続けるが反応が乏しい。
「くそっ間に合わなかったか。」
「おい誰でもいい!包帯と薬草をありったけもってこい!」
ガトとジャニアスが到着した。
「ゾルドッ!ゾルドッ!」
シーアが泣きながら名前を連呼する。
「ソルトしっかりするんだ!嫁さんを残して死ぬなぞ俺が許さんぞ!」
「ソルトしっかりしろ!おい!包帯はまだか!」
ガトとジャニアスも呼びかける。
「…ううっ…おれは…だいじょうぶだ…ぐっ…。」
ソルトが声を絞り出した。
「ゾルド!!!!」
シーアの顔がほころぶ。
「ああ、ああ、わかった。よしもう声を出さなくていい。だが意識をそのまま保っておくんだぞ。」
ガトがホッとした声で言う。
「あとは包帯と薬だな。早く止血しな………おい嘘だろう!?」
ジャニアスが声をあげた。
「「!?」」
「グ、ギャアアアアアアアアアア!」
槍が刺さって倒れていた怪物がまた起き上がったのだ。
「なんてタフなんだ!」
ジャニアスが苦虫を噛み潰したように言う。
「グワアァァァ!」
「おいおいマジかよ………。」
怪物は自分に刺さった槍を引き抜き、それを構えたのである。隠れていたといい武器を使うといい賢さもあるようだった。
「くそっおらああああ!」
ガトが怪物に突撃する。
「グギャアァァァ!」
「うぐっ!?」
だが怪物は反応し槍をふるいガトの腹を切り裂く。
「うおらぁぁぁ!」
怪物が槍を振りぬいた隙を狙って、ジャニアスが石を片手に怪物の横から奇襲をかけた。
「グワンンンンン!」
「うがっ!」
だが怪物は腕を素早く戻し、ジャニアスの腹に石突きを放つ。
「大丈夫か!?お前ら囲め!」
ようやく追いついた兵士たちが怪物を囲む。
「グワアァァァ!」
怪物が槍を力にものを言わせて振り回す。
「なんて力だ!」
あまりの力に、怪物に近付けない兵士達。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「うああ!」「ううう!?」「なんて声だ。」
怪物が咆哮をあげた。
「ガアアアアアアアア!」
「ぐわっ!」「うわっ!」「ごはっ!」
怪物はひるんだ兵士たちを一気に薙ぎ払った。飛ばされた兵士たちは気を失ってないながらも動けなくなっていた。
「グガアァァァ!」
「あっ…あっ……。」
残るはシーアとソルトだけになっていた。




