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あの手この手で故郷防衛しちゃいます!  作者: のこりごころ
序章 目覚める者と約束
3/14

勝者の得たもの

「ふぅ。」

 家の前で息を整える男が一人。手には村で一番きれいと言われてい花をメインとした花束を持っていた。彼は今から自分の婚約者となる女性に会うのである。そう彼こそが男たちの争いを制した村一番の漢であった。

 彼は娘の家の前でかれこれ10分くらい息を整えていた。村一番の漢であるとも今から会うのは恋に恋い焦がれていた村一番の美女であるため、緊張していた。ましてや彼は都会に修行に出ていたため、かれこれ5年は姿を見ていない。記憶にあるのは幼い娘の姿。それがどんな成長を遂げているのだろうか。都会には美女が多かったが、どの子も記憶の中の娘にはかなわず彼は見向きもしなかった。


 ちなみに娘の家には今は娘しかいない。娘の両親は昨夜のどんちゃん騒ぎに参加したため、村の中央で他の村人たちとぐっすり寝ている。娘の両親は婚約者となった彼に絡みと絡みまくり、最後には娘をよろしくと言って寝崩れた。

 婚約者の彼も朝まで騒いでいたが到底眠れるわけがなく、朝一番で花を摘みに行っていた。


「さて、行くか。」

 ついに彼が決意する。最後に大きく息を吐く。誰も居ない周囲に息の音が静かに響く。

ドンドン

 彼がドアをノックする。が、反応がない。

「シーアいるかい?」

 彼が声をかける。娘の名前は「シーア」と言った。

 またしても反応が無く、彼は困惑する。

「シーア。入るよ。」

 そう声を掛けて扉に手をかける彼。普通家主の返事がない他人の家に入るなど大変失礼であるが、ここは国の端の田舎村。誰も気にしない。

ギギギギ

 彼が扉を押し音を立てつつ開いていく。彼は中に足を踏み入れていった。

「シーアいないのかい?」

 声を掛けつつ家内を探索する彼。そして、寝室にたどり着いた。

「あ…。」

 ついにシーアを見つけた彼。彼女はまだベッドの上で寝ていた。

「…。」

 思わず見惚れる彼。彼女は彼の予想以上に美しくなっていた。顔にはまだ幼さが残るがしっかりとした顔付になっており、身長も伸びていた。純白く輝く美しい髪は長く伸びていた。ちなみに彼女の両親は両方とも黒髪であるのだが、可愛いからまぁいいやと誰も気にしていなかった。可愛いは正義であった。


「んん…。」

「!?」

 しばらくして、彼女が目を覚ました。彼女の寝顔を見つめていた彼と目が合う。

「お、おはようシーア。」

「ん、おはよ~。」

 なんとか声を絞り出す彼。それに対し間延びした声で返すシーア。

「貴方が、私の、婚約者?」

 起き上がった彼女が首を傾げて聞いた。

「ああ、そうだよ。俺の名前は…。」

「…ソルト。」

「!?」

「覚えてる。貴方の、名前は、ソルト。商人の、息子。」

「ああ、ああ、覚えてくれていたんだね。」

 彼、ソルトは自分の名前なんか覚えてくれていないと思っていた。村にいたころに彼女と会話した数は数えるほどだし、しかも5年も村に居なかったのだ。

「うん。ぼんやりと。」

「ありがとう。ああ、そうだこれ誕生日プレゼント。」

 名前を覚えてくれていた嬉しさをごまかすように花束を渡すソルト。

「わぁ、シトランの花。ありがとう。この花、好き。」

「良かった。喜んでくれて。」

 ソルトは喜ぶシーアに心の中でガッツポーズを取った。


「ソルトは、都会に、行って、たんだよね?どんな、ところだった?」

 朝食をとるためベッドからでて、テーブルに着くシーア。彼女のしゃべり方は起きてもゆったりだった。彼女は昔からこんな感じで、瞳が常にとろんとしており、よくボーっとしている子であった。そこもかわいらしいと人気だったが。

「都会は村にないものがホントに多かったよ。」

 キッチンを借り、朝食を作りながらソルトが答える。余談だが、彼は都会で料理も学んでおり、教えてもらったシェフに食堂ぐらいなら開けるレベルだと言われた。ちなみにシーアは料理ができない。なんなら家事全般ができない。村の皆に過保護に育てすぎたからである。

 ソルトが都会に行ったことについて語りつつ料理を完成させる。流石にシーアも配膳ぐらいはできるので手伝う。

「ん。美味しい。」

「よかった。」

「ふんふん、ふんふん。」

 よほど美味しかったのか、ただの食いしん坊なのか、集中して食べるシーア。ソルトはそれを嬉しそうに眺めながら、これが毎日続くのかと幸せをかみしめていた。

 それから彼らは夜まで、お互いのこと。今までのこと。これからのことについて話し合った。


 

 夜になり、シーアの寝室のベッドで横に並んで座る2人。

 ちなみにだが、村人の間で今日一日は2人に会わないという約束が設けてあった。これにはシーアの両親も含まれており、彼らは今日は友人の家に泊まるとのことであった。

 さて、婚約者となった男女が夜になってやることなど決まっておるのだが、ソルトはとてつもなく焦っていた。

 ソルトは年がシーアの一個上で年齢は何も問題ない。実は経験もある。都会でもし婚約者になった時に自分がリードできるようにと、娼館にも何回か通っていた。そこでは高い金を払い一番の美女を抱いたこともあり、夜は大丈夫だと確信していた。。

 しかし、シーアを前にしたらそんな自信は吹っ飛んでいった。シーアは娼館にいたどの美女よりも美しく、神々しかった。あまりにも神々しくて性欲がまるでわいてこないのである。

「ソルト。」

 そんな焦っているソルトにシーアが声をかける。

「な、なんだい?」

 動揺しているソルトの手にそっと自分の手を置き、

()()()()()()()()()()()()()()。」

「!?」

 そういって彼女はソルトに抱き着きキスをした。ソルトは驚いたがなんとか抱き返す。そしてゆっくり彼女をベッドに押し倒し、二人の夜が明けていった。

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