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「イヴンさん、もう少し左にー」
「あ、はい。すみません」
「あー行き過ぎ、行き過ぎ!」
「・・・本当だ。
すみません」
「もうだめだな~イヴンさん!」
「君がダメですよ。ビルマ。
さっきからシャリオン殿に失礼です」
歩き始めてから約10分が経ち、あることに気づいた。
イヴンがまっすぐ歩けなくなっている。
どうも右目が見えなくなって、方向感覚がずれてしまい右寄りに足が進んでしまうらしい。
今は、それを皆で直そうとしていたのだが、イヴンに声をかけるのはビルマのみ。
それもそのはず、テオティやメアリが声をかけようと思っても、ビルマが我先にと出しゃばるのだ。
そして、「どんまい!」といいながらしょっちゅうイヴンの背中を叩くものだから、ゼノンがだめだしした次第である。
「シャリオン殿、あせらずとも片目にはそのうち慣れますよ。
そう気張らずに」
「はい。がんばります」
いや、だからべつに頑張らなくていいんだって、と思いながらにこっと笑うゼノン。
その時テオティがイヴンに駆け寄ってきた。
「イヴンさん!
手を繋いでいれば右に寄ることもないです♪ね?」
そういいながら、イヴンの鞄を持っている手を上から掴む。
「いえ、あの・・・鞄を持っていますから。
お気持ちだけ受け取らせていただきます」
そんな恥ずかしいことできないよ!と思いながらイヴンは丁寧に断った。
しかし、テオティはひどく落ち込んでしまった。
なにやらまた勘違いしたようだ。
「す、すみません。
気安く触ってしまって・・・」
さわるな!と言われたのだと勘違い。
テオティなりに早くイヴンと仲良くなるためにやったことなのに、うまくいかない。
この落ち込み具合におたおたするイヴンだったが、ビルマが助け舟?を出してきた。
「イヴンさん!
俺が荷物持ちますから、テオティ様と手を繋いでいてください。
きっとそのほうが、早くまっすぐに歩けるようになりますよ!」
果たして、本当に助け舟だったのだろうか?
ちがう。
ビルマは、イヴンがは恥ずかしさで手を繋ぎたくないことに気づいた上でこう言ったのだ。
こういうときの、人の反応を見るのが好きなようで、ケタケタ笑って鞄をもぎ取る。
しかし、二人の溝を埋めるにはちょうどよかったかもしれない。
イヴンは、ビルマが本当に自分のふらつく足取りを早く直してあげたいと思ってくれていると勘違いし、笑顔でお礼を言った。
そして、テオティに手を差し出す。
「では、お願いします。
姫様」
「はいっ!!」
手を繋ぐだけでいいのに、なぜかテオティは腕に引っ付いてきた。
仲良くなるチャンスを与えられ、嬉しいらしいが、逆に歩きづらいことに気が付いてほしい。
そして、イヴンの心拍数がものすごく高くなったことにも気が付いてほしい。
「あの・・・えーと。
腕ではなく手をですね・・・」
そろそろ~と離れようとするイヴン。
「ですが、先ほどからつまずくこともありましたし、腕をまわしていたほうが危なくないです。
さぁ、行きましょう!」
一人ごちるイヴンを無視して、テオティは腕をひっぱって歩き出した。
両手に鞄を持ったままそれを見ていたビルマは、いきなり鞄をゼノンに突き出してきた。
「ゼノンさん。
イヴンさんとテオティ様の荷物、持っててもらえます?
いだっ!」
「君がテオティ様と手を繋いでどうするんです」
ゼノンには考えていることが筒抜けだ。
しかし、バシっと一発頭を叩いてから、突き出された鞄を一つだけ受け取った。
「君はあの子と手を繋いであげなさい。
シャリオン殿をとられて寂しそうですから」
そういいながら、小石を蹴ってとぼとぼ歩いているメアリの方を指差した。
たしかに、かなり寂しそうだ。
ビルマは、「へいへーい」と言って小走りして近寄り、メアリに手を差し出した。
「よっ!お兄ちゃんと手ぇつながね?」
こう言われた途端、メアリが笑顔で振り返った・・・が、
「メアリちゃん!
メアリちゃんも一緒に手を繋ぎましょう♪」
と、テオティが手招きしてきたためそっちへ行ってしまった。
「うん!!お兄ちゃんは今度ね~☆」
呆然と立ち尽くすビルマ。
「ふられた!」
「『どんまい!』ですよ。
さ、行きましょう」
近づいてきたゼノンは、穏やかな笑顔で受けとっていた鞄をビルマに返し、三人の後を歩き始めた。
なかなか愉快な旅のはじまりだ。
それから数時間後・・・
次の街には半日ほどで着く予定の一行だったが、昼頃になってもちっとも進んでいなかった。
原因は、今しかめっ面をしているイヴンにある。
次の街までは分かれ道がなく、一本の道で繋がっているため、道なり通りに進んでいけば目的地に着くのだが、たびたび悪魔が出現するせいでイヴンに負担がかかっていた。
慣れない片目だけの戦闘になり、今までの感覚が取り戻せず、無駄に傷を負っているのだ。
予想以上に片目に悪戦苦闘している。
「シャリオン殿、少し休みましょう。
目が疲れてきているのではないですか?」
「いいえ、もう少し進みましょう。
さっき休んだばかりですから」
左目だけに頼って戦闘をしているため、目の疲れが頭痛にかわっている。
足元だってふらふらして頼りない。
「だめです!休みましょう!!
無茶をしてはお体に毒です。
あの木の下に座ってください」
腕をぐいぐいひっぱって、テオティはイヴンを木の下に座らせようとする。
木々を吹き抜ける風は心地よいが、じっとなどしていられない。
こうしている間にも、力のない人々が碧の魔本に入ってしまっているかもしれないのだ。
「姫様、もう少しだけ進ませてくださ・・・」
「だめです!!
イヴンさんが倒れたら心配する人もいるのですよ?
周りの人たちを心配するより前にご自分を大切になさってください」
なぜか、出会ってから間もないというのに涙目になりながら、自分の身を案じてくる。
あぁ、なんて情けない。
救わなきゃならない人に心配されるなんて・・・。
イヴンはうつむきながら木の下まで移動した。
「すみません」
「いいえ!さぁどうぞ♪」
どうぞ?
なぜか先に座って膝を軽く叩くテオティ。
まさか・・・
「横になったほうが楽かと思いまして。
地面は硬いですから、わたくしの膝を枕代わりにしてください」
さぁ♪と笑顔でうながしてくる。
膝枕かよ!!
イヴンは『絶対この人天然だよ!』と思いながら赤面している。
ビルマが後ろで腹を抱えて大爆笑。
で、大爆笑してる部下の頭を叩いてからテオティの前に屈んだのはゼノンだった。
「テオティ様、それではシャリオン殿が逆に休みづらいようです。
お膝も疲れてしまいます」
立場を逆にして考えてみてください。と穏やかーに諭した。
「逆?」
少し上を向いて彼女は考え出した。
その直後、ボンっと音が鳴りそうなくらいテオティの顔が赤くなった。
逆って・・・おかしいだろ。
「す、すみませんわたくしったら!」
何を想像したんだこの天然姫は。
とりあえず、膝枕を逃れ木に寄りかかって休むことができた。
と、ここでイヴンの隣に座ってきたメアリがテオティに質問してきた。
「テオちゃんは疲れないの?
お姫様はお外あんまり歩かないんでしょう?」
確かに、もう半日ほど歩いているのだから疲れているはずだ。
だが、ここまで一度も疲れを表さなかった。
「そういえば・・・
まったく疲れていません」
首を傾げるテオティ。
今まで不思議に思わなかったらしい。
そんな彼女を見て、苦笑しながら説明をし始めたのはまたもやゼノン。
「テオティ様。
お疲れにならないのは紅の魔本に入れられているせいです」
魔本のせい?
彼女は魔本の能力をまったく知らないので、ゼノンが詳しく教えてくれることとなった。
テオティの隣に腰掛けて話し始めた。
「300年前に魔本が作られた理由は、人間を奴隷にするのが目的だということはお分かりですね?」
「はい」
「悪魔の当主が奴隷にやらせたかった主なことは、同族殺しなのです。
そこで当主は、奴隷が魔本の主の言うことを聞くだけでなく、物事を円滑に進めさせるために悪魔と同等の力を持たせる能力をつけさせるようにしました。
それが目的で造られたのが『碧の魔本』です。
なので、『碧』に入った者は、姿形は変わらずとも、人型悪魔と同じく身体能力が10倍に達するのです。
そんな目的で造られた『碧』ですから、元から身体能力の高い男性だけを入れられるようになったわけですね。
ここまで、ご理解いただけましたか?」
話が少し長かったが、テオティは理解し首を縦に振った。
メアリの頭上には『?』マークが飛び交っていたが・・・。
「では次に『紅の魔本』の方ですが、こちらは最初、存在していませんでした」
「女性の方は、身体能力が低いからですか?」
「ご名答です。
当主は力のある奴隷さえいればよかったのですね。
そんななか『紅』がつくられた理由は、悪魔の当主の妻にあるそうです。
彼女は、身の回りの世話をする者や話し相手が欲しかったらしく、人間の女性を奴隷にするよう提案したのです。
なので、『紅』に入った者は、身体能力を向上させる代わりに、食事や睡眠を摂らなくても生きていけるようになりました。
しかし、摂らなくてもいいのですが、摂ることもできます。
魔本の主に、一緒に食事を摂るように言われた時には、食べなければいけなかったようですよ」
へぇ~とゼノンの説明に釘付けになっているテオティ・メアリ・ビルマ。
その横では、イヴンが仮眠をとってほんの少しでも、と目の回復を図っている。
そよそよと心地よい風が通り過ぎ、ノーザンは平和な春を迎えているように感じる。
「二冊に共通して言えることは、入った者が歳をとらないということです」
休憩から約10分経過してもなお、ゼノンの説明は続いていた。
テオティも引き続き真剣に聞いている。なかなか勤勉のようだ。
ビルマとメアリは飽きたようで、蝶々を追いかけているが。
「では、私はこの魔本に入っている限り、このままの姿なのですか。
歳をとらないというのは、少し得した気分ですね♪」
けっこうポジティブでもあるらしい姫は、能天気に笑っている。
そして、急に笑いを止め、ふと疑問に思ったことを口にした。
「『碧』に魔法使いが入ったら、魔法が使えなくなったりするのですか?
たしか、悪魔・獣人は生まれつき魔法が使えないのですよね?」
「魔法はそのまま使用することが出来ます。
魔本に入れば、本来持っている能力に悪魔の身体能力がプラスされるので、魔法使いでしたら悪魔以上に強く、手強いかもしれません」
なるほど・・・と感心するテオティ。
そして、恐ろしい本が出回ってしまったと再認識した時だった。
イヴンが目を開き、首から下げている懐中時計を取り出して時間を確認した。
「ちょうど15分経ちました。
そろそろ出発しましょう。
街に着く前に日が暮れたら大変です」
まだ昼の12時だが?
彼は心配性らしい。
さっさと立ち上がり、遊んでいるメアリにも声をかける。
ゼノンは苦笑いをしながらイヴンの意見に賛同し、立ち上がった。
そして、隣で立ち上がろうとしているテオティにゼノンが手を差し伸べようとしたのだが、イヴンのほうが一足早かった。
「姫様お手をどうぞ」
慣れた様子でテオティに左手を差し出し微笑む。
それもそのはず、女性に対しての態度について、アダムがうるさかったのだ。
女性のエスコートの仕方はさんざん仕込まれた。
魔法よりたくさん教えてもらったかもしれない(イヴンはそんな気がしている)。
「ありがとうございます」
テオティも同じく微笑んで差し出された手を掴み、立ち上がり、二人は再び腕を組んで歩き出す。
イヴンの歩きは、そわそわしてぎこちないが。
「ははっ!夫婦みたいですね!
ヒューヒュー♪
ぅあいだぁ!」
「君も飽きないですね。
そういう軽口は慎みなさい。
私が長官じゃなかったら、即、クビですよ」
またもや無礼な物言いをしたビルマの頭を思いっきりグーで殴りつけて、自身の拳をさすりながら説教するゼノン。
しかし、殴られた方は応えた様子もなく、ケラケラ笑って少々意味深なことを口走った。
「ははっ!『今』俺がゼノンさん以外の下で働くなんてありえないでしょ?
時がくればこの衝動に慣れるようにしますけどね」
ぐっとコブシを握って、前を見据えた。
それはまだ目的地の見えない道の先か、あるいは・・・。
「真面目に返答してくるとは思わなかったよ」
ゼノンはいつも通り顔に笑みをつくり、イヴンたちの後を追った。
「まぁ!きれいな街です!
ね、メアリちゃん♪」
すっかり日が暮れて夜空に星が瞬きはじめた頃、やっとこさ次の街に着いた姫様御一行。
ここは、首都を目指す商人達が良く立ち寄る街で、珍しい商品が数多く売られていた。
そのため多くの観光客も訪れ、日が暮れてもにぎやかな人々の声がする。
街の入り口は二本の大樹により囲まれ、枝には数々のランタンがぶら下がっており、テオティとメアリはその光を見て目をキラキラさせていた。
しかし、その横ではイヴンがフラフラしており、今にも倒れそうだ。
そんなイヴンにゼノンが心配そうに声をかけてきた。
「シャリオン殿、宿はすでに手配してありますので、もうしばらくご辛抱を」
「すみません。
ゼノンさんもお疲れなのに」
今にも寝てしまいそうになりながらも、相手に視線を向けて答えたのだが、どうも視界がぼやけている。
ゼノンは首を横に振って答えた。
「私は大丈夫です。
しかし、シャリオン殿はご自分より地位の低い者に謝罪の言葉をかけるなんて、珍しい方ですね。
まぁ、あちらにも似たようなお方がいらっしゃいますが」
ちらっとテオティの方に視線を向けて心配そうに笑った。
地位の高い者が己より低い身分の者に情けをかけたらどうなるのか・・・。
「さぁ、参りましょう。
街に入って、宿の者に合流しなければ」
ゼノンは、いつも通りの笑みを作り、進んで街に足を進めた。
街の入り口をくぐった途端、そこは数々の露天が立ち並び、多くの人でごった返していた。
楽しそうに笑いあっている人々。
そんな中から少々ふくよかな貴族の男性が現れ、テオティの前で頭をたれた。
どうやら、今晩世話になる宿主のようだ。
「ご機嫌麗しゅうございます。
姫様。
今夜は我が・・・」
「すまないが、姫様とシャリオン殿は疲れておられる。
すぐに案内していただきたい」
まともに挨拶を済ましてもいないのに、ゼノンがイヴンのために案内をせかした。
宿主は王家の機嫌を損ねまいと、慌てて「こちらでございます」と人混みの中に入っていく。
そして、宿主の次にイヴンたちが露店の立ち並ぶところに姿を現すなり、先ほどまで楽しそうしていた人々が即座に会話をやめ、道の端に寄り膝まずいた。
イヴンの隣にいるテオティの存在に気が付いた為だ。
王家の者の前では、平民は膝まずき、貴族は立ったまま頭を下げていなければならない。
その異様な光景の中、宿主の後ろをゼノンを先頭に、イヴンとテオティ・メアリ・ビルマの順で歩いていく一行。
時々子供が顔を上げて、「わぁ!イヴン様は、ほんとうにお目めが紫色だ~」とイヴンの方をキラキラした顔で見てくる。
人間族は、皆茶色の瞳なのに対し、魔法貴族だけは紫色なのだ。
14年前までは、魔法貴族が普通に小さな町にも訪れていたのだが、今ではイヴンしかこの世に存在していないため、小さな子供達は『魔法貴族=イヴン』と思っている。
彼はそんな子供達に笑顔で答える。
顔を上げる我が子を親達は叱ろうとするのだが、イヴンが笑うものだからつられて微笑む。
そんな彼の横をテオティが並んで歩いているのだが、ふと彼女を見てみると、お腹の辺りで手を軽く重ね、一本の線の上を歩いているかのように綺麗に歩き、凛とした空気を纏って歩いていた。
さっきまでの『ほにゃほにゃ』した空気はどうした?と、つい思ってしまったイヴンだが、テオティの顔が少しこわばっているところにも気がついた。
何かを心配しているのだろうか?
ふと声をかけてみようと、顔を完全に彼女の方に向けた時だった。
ガッ!!
何か硬いものがあったたような音が自分の後頭部あたりで聞こえた。
しかし、どこも痛くないので当たってはいないようだ。
軽い気持ちで音のしたほうを振り返ってみると、目の前にゼノンが剣を鞘に入った状態で振り上げていた。
自分の足元には拳一つ分ほどの大きな石が転がっていて、眼前にある鞘には亀裂が入っている。
もしや・・・
イヴンが状況の把握を出来た時、道の両脇で頭をたれていた民衆たちも何事が起きたのか理解できたようだ。
顔を上げて、ざわざわと騒ぎ出す。
「ガーディアンに石を投げつけるなど、どうなるかわかっているのだろうな。
ビルマ。捕えろ」
ゼノンが低く、冷たい声でそう告げると、ビルマは即座に反応して投げつけてきた犯人を道の真ん中に引きずり出してきた。
結構な大男だ。
ビルマは、自身より2回りも大きい男の両手を後ろにまわし、ロープで締め上げてから、背中に片足を乗せて頭をあがらなくさせた。
「姫様もいるってのに、石を投げつけるなんて。
お前、投獄決定だな」
下からものすごい剣幕で睨み付けてくる男を、ビルマは片足で押さえつけながら冷たく言い放つ。
大男は負けじと立ち上がろうとするが、小柄なはずのビルマの片足の力に負け、忌々しそうに顔を歪めた。
「離せ、クソガキが!
なぜ王家は悪魔の手先に手を貸す!」
吠える大男。
しかしビルマはまったく臆さなかった。
「おぅおぅ、俺はガキじゃねぇ。
もう一度言ってみろ、おっさん」
ビルマはそういいながら、男の背中に乗せている自分の足に力を入れた。
気のせいだろうか。
少し男が地面にめり込んでいるように見える。
しかし、まず自分のフォローより、『悪魔の手先』という発言を否定しようとは思わなかったのだろうか。
民衆から不穏な空気が流れ始める。
皆、悪魔から民を守ってくれる魔法貴族を・・・イヴンを崇めるが、彼が魔本を手にしてしまったことにより、信用できなくなってきているのだ。
いつ人間をうらぎるのか・・・。
イヴンの身に、その民の不安が突き刺さる。
そして、追い討ちをかけるように大男が言葉を紡ぐ。
「魔法貴族は幾度となく悪魔に寝返ってきた!
今まで人間の味方をしていたとしても、新たな力を手に入れて寝返るとも限らない!!」
これに対し、ビルマが鼻で笑った。
「だったら、石っころ投げる前に言葉で形にしろよ。
俺より大人なんだろ?」
なおも自分の足元に転がっている男を冷たく見下すビルマ。
しかし、男もひるまずに睨みつける。
「反論したところで、王家は平民の話に耳も傾けない!」
「あぁ。それで、石っころ投げた犯人を俺達が見つけられなくて、怯えて逃げ帰ると思ったのか?
はっ!浅はかな考えだな!
・・・いや、でも。死角からだったからなぁ。
他の隊なら犯人が見つけだせなかったかもしれね~な。
俺たちの隊で残念だったなおっさん☆」
いつものようにケタケタ笑うビルマだったが、途中でゼノンが打ち切った。
民衆に向かって声を張り上げる。
「シャリオン殿は悪魔の手先などでは決してない。
この街も、今までに何度も魔法の講習会を開いていただいたはずだ。
金銭面で魔法学校に通えない平民の子供達にも魔法を学んでもらえるようにと、無償でやっていただいたのだぞ。
シャリオン殿は、一番に民衆の安全を考えておられる。
お疲れの中、街に着くまでに見つけた悪魔も全て片付けてこられた。
恩を仇で返すなど・・・」
もっての他。
最後は大男の方を睨んで言い放った。
男はビルマの時と違い、顔が強張り、恐怖に顔色を変えた。
「お前は死罪だ。
王家の名も汚した。
連れて行け」
ゼノンがさっと告げると、ビルマ以外の隊員が魔方陣から姿を現し、男を連行して出てきた魔法陣に消えていった。




