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第77話 定例会議

 コラボ配信。


 ないし、配信者同士の横のつながり。


 アナの配信を通じ、そして香流子(かるこ)との話を受けてその重要性を思い知った俺は、ちょうど数日後にあった事務所の定例会議で議題に上げることにした。


「コラボ配信、ですか……他の所ではよくやっているという話は聞きますよね。私はまだコラボした方に迷惑をかけちゃいそうで二の足を踏んじゃってます……」


 配信事務所エピライブ。


 定例会議だなんて堅苦しく言っても、シェアハウスであるここ事務所兼住居に会議室なんて上等なモノはない。


 なので、会議する場所は共有スペースであるリビングだ。


 いつも食事などで使うテーブルをみんなで囲い、代表であるラッカリカが誕生日席(一応マジメな場なので上座って言い方かな?)に座り、彼女から見て左右にアナ、シキータ、クローリスにトリントが並んでいる。


 アナはメイド服でシキータもドルフィンパンツにタンクトップというラフな格好なのはいつも通りだが、夕食後であるためかラッカリカ、クローリス、トリントもパジャマなどの部屋着姿で参加していた。


 ……いつもはスーツ姿のクローリスやメイクなどバッチリ整えたトリントのいわゆる「オフ」の格好はやはり強烈なギャップがあるなぁ。


 綺麗めなタイプって感じだったが、少しゆるっとしたパステルカラーの部屋着なせいかちょっと可愛く見えてくる。


 ちなみに、俺はラッカリカの対面に位置する末席。


 ドロリーは不在(サボり)だった。


「ウフフ、まさかそこまでわたしを買ってくださるなんて……流石はイロウさまです。ガマンしていなかったらこの場でおそ――んん。惚れ直しました」

「確かになぁ~。アタシも突発的なコラボこそ何度かやっちゃいるけど、割となぁなぁで流してたし、ちゃんと企画とかはやったことなかったぜ」


 熱を帯びた視線を向けてくるアナはともかく、ラッカリカに続けてシキータも目からウロコとばかりに腕を組んで思い返していた。


「ま、お姫ちゃんはともかく、泥酔して普段の配信すらサボるような子はコラボなんて計画性のある配信なんてできるはずないかもだけど」

「うるせー。配信なんてのはノリが大事なんだよ。ライブ感っての?」

「……そのライブ感というのも、段取りくらいはちゃんとしているものでは? ところでシキータ、先日お話しした書類の提出はまだでしょうか?」

「…………」


 トリント、クローリスに詰められて居心地が悪そうにシキータがそっぽを向いた。


 そこからシームレスにお説教を始めようとしたクローリスに先んじて、トリントが思わせぶりな視線でアナを見た。


「横のつながり、ねぇ……当の実行者さんは何かコツとかあるのかしら?」

「コツ、ですか?」


 アナは小首をかしげた。


「う~ん、わたしも特に何か意識してやっている訳でもありませんでしたし、様々な方とお話したりすることは昔からやっていた習慣というか……」

「そういえば、アナって昔から噂話とかに詳しかったわね」

「はいっ。それはもう……最初はご主人さまにお話しすることが楽しかったのですが、次第に様々な方の秘められたる一面などを見ることができて――」

「……その手の好みは昔からだったみたいだな」


 ゴシップ好きな侍従……

 何とかさんは見た、なんて話はどこの世界にもいるもんだな……


 世界間の意外な共通項に何とも言えなくなる俺を置き去りにして、あーだこーだと意見をかわし始めた面々にラッカリカが鶴の一声を上げた。


「今すぐに方向性を変える、というのは難しいかもしれませんが……私はイロウさんの言うようには外部との連携を強めようという提案には賛成です」

「ま、アタシも異論はねぇな」

「わたしは言わずもがなです」


 ラッカリカの言葉にシキータ、アナも同調する。


 ずいぶんとあっさりオッケーしたな……


「ひょっとして、すでに他所との交友関係があったりするのか?」

『…………』


 俺の疑問に全員の動きが止まった。


 ……あれ。


 何かマズいことを言ってしまったか……?


 暗澹たる気配を感じて冷や汗を流す俺に、ラッカリカがクスリと小さく笑ってから再び口を開いた。


「まあ、イロウさんのようなお方もいますし、私たちもこの世界にやってきてそれなりに時間も経ちました。アナが上手くいっていますし、いつまでも異世界人だというだけで奥手になっているわけにもいきませんね」

「……つまり、現段階で伝手と呼べるものはないんだな?」

「はい……」


 なるほどねぇ……


 彼女たちは異世界人だ。


 みんなかなりこっちの世界に順応しているから意識が薄かったが、彼女たちにしてみればこの世界は未知のモノばかり。


 きっと、自分たちからその()()へと私的な交流をしよう、なんていう余裕がなかったのだ。


 ……先日のテロ事件みたいなこともあるしな。


 ああいった手合いがラッカリカたちに近づかないように気を付けるのは、きっと俺の仕事になるんだろうな。


「ま、アタシもお友達を増やそうぜ、っていう方針は反対しねぇ。けど、ソイツには大きな問題が一個だけあると思うぜ」

「問題?」


 俺は首をかしげる。


 シキータはチラリと視線をよそへ向け、黙って親指でそっちを示した。


 その方向を見やると――


「なに?」


 ちょうど部屋から出てきたドロリーが首をかしげていた。


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