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第129話 ライセンス試験

 まんざらでもなさそうな顔で気絶したラッカリカを彼女の部屋まで運び、後の事はトリントに任せて俺はシャワーを浴びて二度寝をした。


 ……寝る前に「これは口止め料に使ってね♪」なんてトリントが自撮り(パジャマの上だけを羽織った写真。胸もちゃんと増量していた)を送ってきたが既読スルーしておいた。


 ……翌日「イロウさん、すごかったです……」とやけに肌がツヤツヤしたラッカリカの言葉でトリント以外のメンバー全員から尋問されたりもしたが、それはまた別のお話にさせてください。


 ちなみにラッカリカは数日ほど何かにつけて俺の手を見つめたり、モノ欲しそうな顔をしたりしていたりした。


 少しお灸を添えすぎたようだ……


 何はともあれ。

 今日はとうとうラッカリカのライセンス試験当日である。


 ラッカリカも先日の一件で色々と発散したのかコンディションは上々。

 この数週間ずっと試験対策に鍛錬やギルドの制度などの復讐なども精力的に頑張り、前日はしっかりと八時間睡眠も取った。


 あとは、彼女の努力が実を結ぶのを祈るのみ。


「……ええっと、それでですね」


 時間の余裕をもってギルドへやってきたラッカリカ。

 普段はロビー内で収まる配信者たちも、今日はライセンス試験の受験者が多いためかギルドの外にある広場まで人でごった返している。


 そんな彼ら彼女らの集団に混ざるように歩いていたラッカリカが不意に立ち止まり、気恥ずかしそうに顔を赤くして俺たちの方へ振り返ってきた。


「なんで、()()来てるんですか!?」


 彼女の後ろに続くのは、俺たち配信事務所エピライブの面々。

 メンバー全員が勢ぞろいしていた。


「そりゃ応え――配信に決まってるぜ」

「そう。ドロリーも配信。応援じゃない」

「あの~大魔女さま? それは誤魔化せてないかと」

「あたしとアナは配信のサポーターよ」

「え、えっと。あ、あたしたちは……」

「私とまどかさんは事務手続きですね」


 口々に予定を語るエピライブ従業員の面々。

 あ、ちなみに俺は普通にラッカリカの補助役で同行する予定だ。


 ライセンス試験の科目は二種類。

 筆記試験は流石に受験者以外が会場に立ち入ることはできないが、実技試験はダンジョン内にあるアリーナで行う。

 配信も行うため事前申請すればサポーターもアリーナへ同行することが可能だ。


 そして、アリーナには専用の観戦席もあり、同じ配信事務所の同僚や友人などが受験する際は応援に行くという風習がダンジョン配信者にはあったのだ。


 ……なんだっけか。


 確か「普段はカメラ越しにしか感じられないリスナーの存在をじかに感じられるように」とか御大層な理由があった気がするが……実際は「せっかく大勢の配信者が集まるんだからお祭りみたいにしよう」とか言って騒ぎたかっただけであった。


 広場にはちょっとした縁日みたいに屋台が並んでたりするし。


「……ラッカリカ。屋台は試験が終わってからだ」

「ハッ――コホン。それはそうと!」


 チラチラと屋台の方へ視線をやっていたラッカリカが咳払いする。


「なんでみんなで来ちゃったんですか⁉ 私、昨日ちゃんと言いましたよね? 今日は人も多いからみんなで来なくてもいいって!」

「そうは言ってもなぁお姫ちゃん。アタシたちの配信スケジュールは」

「シキータは先週サボって周期ズラしましたよね?」

「うぐ」

「まあまあ。ご主人さま。皆さま別に用事があるのは本当ですし」

「アナタもですよアナッ! 隠れてカンペうちわ作っていたの知ってるんですよ!?」

「ぎく」

「ドロリーは別に応援しなくていいなら帰るだけ」

「……え。それはそれでショックです……」


 いてほしいのかほしくないのかどっちなんだよ……


 まるで応援に来た家族を鬱陶しがる子供みたいな反応だ。


「まあ、他の奴らも人を集めてるだろうしな。お前だけ誰も応援に来てないなんてことにならないだけいいじゃないか」

「イロウさ――」


 言葉と共に俺はラッカリカの頭に手を乗せる。


 瞬間。


 ラッカリカがビクンと固まった。


「――――」

「ラッカリカ?」

「――ダメ、です。イロウさんッ……!」


 電気ショックを喰らったかのように両手足を伸ばしたラッカリカ。


 それから、もだえるように身を縮ませた。


「こんな往来で、いきなりなんて……」

「わ、悪い……」


 顔を真っ赤にしてビクビクと肩を揺らすラッカリカに言われ、俺はすぐに彼女の頭から手を離した。


 今のは少し軽率だったか……


「ぁ……その。イロウさんがシたい時は、二人っきりで……」


 それにしては、どうも嫌がっている様子じゃないのが気になるが……いや、むしろ恥ずかしいより気持ちよかったとか言いたげな顔で名残惜しそうに――


「……これはちょっと重症ね」

「トリント?」

「これはイロウくんが悪いわね。こんな往来でエッチなことをしようだなんて、さすがのあたしでもそんな勇気はないわ」

「してないんだが?」


 人を変態みたいに言わないでくれ。


「確かに。イロウの手はエッチ」

「イロウさま! わたしの頭が……いえ! お望みとあらば胸でもお尻でも」

「……イスナロさまの手はエッチ」

「落ち着いてくださいクローリスさん。イスナロさまもイロウくんもエッチですよ!」


 俺たちの後ろでやいのやいのと好き勝手に言うエピライブの面々。


 あとまどかさん、そのフォローはちょっと違うんじゃないかな。


 三人寄らばなんとやらであるが、ここにはその倍以上の人数がいる。


 全員が好き勝手を始める前に、俺は手を叩いて声を上げた。


「ラッカリカはまず午前の筆記試験だ。実技は午後からだから、配信だの手続きだの各々の用事はそれまでに終わらせておくよーに」


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