4話
映像は完成した。
タイトルは『アストラ・リベリオン:記憶の果てで、君に会う』。
上映会は、大学の講堂で行われた。
観客は、学生、教授、映像関係者、そして偶然チラシを見て来た一般の人々。
ユウトは、最後列の席に座っていた。
スクリーンの向こうに、自分の妄想が映っていた。
異能力学園。記憶を操る転校生。
仲間との出会い。別れ。
そして、最後のシーン。
主人公が、消えゆく仲間に手を伸ばす。
「君がいたから、俺はここにいる」
「君の妄想が、俺を救ったんだ」
そのセリフを聞いた瞬間、ユウトは涙が止まらなくなった。
誰にも届かないと思っていた妄想が、
誰かの記憶を救い、誰かの現実を変えた。
上映が終わると、会場は静寂に包まれた。
誰もが、言葉を失っていた。
そして、ぽつりぽつりと拍手が起こり、やがてそれは大きな波となった。
レンが、ユウトの隣に座った。
「やったな」
「……うん」
「俺、卒業したら映像の仕事に就くよ」
「君の妄想が、俺の現実を変えたから」
「次は、お前の番だ。誰かの妄想を、現実にしてやれ」
ユウトは、何も言えなかった。
ただ、頷いた。
胸の奥で、何かが静かに燃えていた。
春。
ユウトは、新しい投稿を打ち込んでいた。
《Spiral》の画面に、白い入力欄が浮かんでいる。
「#その先へ #妄想が現実を揺らす #君に触れる物語」
そして、こう書き始めた。
「これは、君に触れるための物語だ。」
投稿ボタンを押す指は、もう震えていなかった。
画面が切り替わり、投稿が反映されたのを確認すると、ユウトはスマホを伏せた。
窓の外では、風が吹いていた。
桜の花びらが、空に舞っていた。
その先へ。
妄想の果てに、誰かが待っている。




