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その先へ  作者: 双鶴


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3/4

3話

撮影は順調に進んでいた。

ユウトの妄想世界アストラ・リベリオンは、映像として形になり始めていた。

照明の当たり方、役者の表情、カメラの動き。

どれも、ユウトの脳内劇場をなぞるように、現実の空間に再現されていく。


だが、違和感は日に日に濃くなっていった。


「このシーン、君の“第9話”の続きだよね?」

レンが言ったとき、ユウトは首を傾げた。


「……第9話、俺、まだ投稿してないよ」


レンは一瞬、言葉に詰まり、苦笑した。

「そっか。じゃあ、俺の妄想だったのかも」


その言葉に、ユウトの胸がざわついた。

レンの妄想と、自分の妄想が、どこかで重なっている。

それは、偶然なのか。

それとも、もっと深い何かがあるのか。


撮影が進むにつれ、ユウトは“妄想の中のキャラクター”が現実に語りかけてくるような感覚に陥った。

夜、眠る前。スマホを見つめながら、ふと聞こえる声。


「君が書いた物語は、誰かの記憶に触れてる」

「だから、俺はここにいる」


ユウトは、ベッドの上で身を起こした。

誰もいない部屋。

でも、確かに“誰か”が、自分の妄想の中に入り込んでいる。


ある日、レンがユウトを大学の屋上に呼び出した。

夕焼けが、校舎の壁を赤く染めていた。


「俺さ、昔、妄想でしか生きられなかったんだ」

「高校のとき、現実が怖くて、ずっと脳内で物語を作ってた」

「“記憶を操る転校生”って設定、俺も考えてた。

でも、ある日、全部消した。現実に戻るために」


ユウトは、言葉を失った。

自分の妄想が、レンの過去の妄想と一致していた。

それは偶然ではない。妄想は、記憶の残滓。

誰かの“忘れたはずの世界”が、別の誰かの中で再生される。


「君の投稿を見たとき、思い出したんだ。俺の“あの世界”を」

「君の妄想は、俺の記憶を呼び起こした。

だから、俺は映像にしたかった。

君の妄想を通して、俺の過去に触れたかった」


ユウトは、胸の奥が熱くなるのを感じた。

妄想は、誰かに触れるための“祈り”だった。

そして、レンはその祈りを受け取った。


「俺の妄想って……誰かの記憶に触れてる?」

ユウトの問いに、レンは静かに頷いた。


「妄想は、孤独の中で生まれる。

でも、誰かに届いた瞬間、それは現実になる」

「君の妄想は、俺の現実を変えた。

だから、俺は君に触れたかった」


夕焼けの中、二人の影が並んで伸びていた。

妄想と記憶が交差する場所。

それは、現実の“その先”だった。


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