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手の平の『欠落者』たち  作者: 今木照
ソコントコ夜露死苦!多摩川決戦!
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第二十七話 サウザンド・アイ

2018年5月 東京都 多摩川河川敷にて...



「ほんまに全体を見下ろしとるって言うたら、どないする?」

「...は?」


 当然、俺は西尾の言っている意味が分からなかった。まぁトップレベルのサッカー選手とかはフィールドを俯瞰して見ることができるって言うけど、ここは明らかにそんな規模の話ではないし、かといって西尾が嘘をついているようにも思えない。


「本当に見下ろしてるって、一体どういうコトっすか...?」


 すると西尾は坂東の方に指をさして、

「坂東見て、気になるトコあらへんか」


 俺は、西尾が指をさす方をまじまじと眺める。坂東は右手でメガホンを持ち、左手を自分の左目にくっつけている。


(...あの左手、何をやってんだ?)


 そう、彼は自分の左手で自分の左目を抑えているのだ。


「なんか気づいたかー?」

「坂東は自分の左手で左目を抑えてるっすけど...」


 西尾は「ようやく気付いたか」と言った感じで口角を上げた。


「すなわち、それは何を意味する?!」

「もしかして、彼は...!!中二びょ__」


「アホかッ!!」


 俺の渾身のボケに対して、西尾による関西仕込みな強力なツッコミが襲い掛かった。ともかく、これで納得ができた。坂東があそこまで正確な指揮を出せていた理由が。

 俺は西尾に叩かれた頬をさすりながら、涙目のまま口を開けた。


「つ、つまり、坂東は俺たちと同じ、『掌光病罹患者』なんですね...?」

「せや!そして坂東の症状名は、『千里眼せんりがん』!噂によると、アイツは手の平で目を覆うことで、自分の好きなところに視点を移動することができるらしい!まぁ要するに、アイツはこの戦場全体を好きなように見渡すことができるっちゅうコトや!!」


「なるほど。だからあんなに細かい指示を、正確に出し続けていられるんスね...」


 今の坂東を見るに、彼は左手で掌光病を使って全体を見渡しながら、右手に持ったメガホンを通して仲間たちに指示を出している。決して使い勝手の良くなさそうな掌光病だが、彼は器用に力を駆使して戦況を掌握している。この力で、彼は関東最強暴走族のリーダーに成りあがったのだろうか。

 と、裂撃斬弩・愛の強さの理由ワケもわかった所で、いよいよ本格的にコチラ側がヤバくなってきた。敵の圧倒的な統率力を前に、一人一人が強い愛暗無狂の族員たちも、かなり追い詰められているようだ。


「ヒャッハー!!あ、兄貴ィ!!俺達、もう持ちませんぜェ!!」


 前線の方から、一週間前の公園にいた、下っ端Aの声が聞こえてきた。彼も意外に懸命に戦っていたが、流石にこの状況では西尾に頼らざるを得ないのだろう。


 ...と、ここでとんでもない光景が目に映りこんでしまう!!それは、今まさに草むらから引き吊り出されている、涙目の友人Yさん!


(あ、優人終わったな)


「ちょ、ホンマ勘弁してください!僕一般人!ってか、そっち寝返るんで!マジで許してください!ひぃ~!」

「草むらに愛暗無狂の()()が居たぞ!リンチしろ!」


(アイツ、あんなところに隠れてたのか。それが伏兵だと思われるなんて...不憫な奴)


 喧騒を極めるこの河川敷で彼らが何を言っているのかは上手く聞き取れないが、恐らく十数秒後には優人の原型は無くなっていることであろう。流石に優人をここに連れ出してきた者として、アイツを見殺しにする事はできない。


「に、西尾さん!裂撃斬弩・愛の力も分かったことですし、そろそろ動きましょうよ!このままじゃマジでやられちゃいますよ!」


 俺の声を聞いてかどうか、ようやく西尾の重い腰が上がった。


「ったく!相変わらず根気のない奴らやなぁ!まぁ物見にも飽きてきたトコやし、ちょっくら暴れるかのォ!!」


 西尾は急ぐでも走るでもなく、堂々と胸を張って前線へと歩き出した。

 しかし、今となってはすでにコチラ側の戦力はかなり削られてしまっている。いくら西尾が、『硬化』の症状を持ってるからと言って、この圧倒的な劣勢を打開できるのか?

 そんな不安に苛まれたままの俺を、ふと西尾が振り向いた。


「そない不安な顔すんなや!ワシはな、今までの人生で勝負事に負けたことがなかったんや。...一週間前の、お前との勝負まではな。だから、ワシとお前が揃っとたら鬼に金棒、たこ焼きに紅ショウガや!!つまり、勝ち確ってことやな!!ガッハッハ!!」


 目の前の大男は、そう言って笑った。


(なんなんだその自信...)


 でも...

 それでも、なんだかこの男ならやってくれそうな、そんな気がした。


(...俺を強引に抗争に巻き込んだ張本人なのに、なんでこんなカッコよく見えちゃうんだよ...!いや、これが族長のカリスマ!恐ろしい...)


 西尾は再び前を向くと、ゆっくりと、しかし力強く、歩み出した。

 本当だったら今すぐこんな場所から逃げ出したいのだが、優人のことだってあるし、そしてなにより、俺だって男だ。ここまで来たらとことん、この野蛮人達に付き合ってやる。


(今は俺のできること...、最初に伝えられた、”作戦”をなんとしてでもやり遂げる...!)




続くッ!!!

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