529話 虎人たち
アルと虎人たちとの戦闘は、族長の介入により治まった。
族長は、アルに対して丁重な対応をするように指示を出し、両者の話し合いの場を設ける事になった。
虎人族は、アルの主張する強盗行為は、確認する事が出来てその犯人の引き渡しと強奪した物の返還請求を行っている。
だがそれだけで終わらすことなど全く考えていないアルは、ここぞとばかりに要求していく。
アル「殺された者達の保証も行え。」
族長「ちーーと、欲をかき過ぎだな。」
アル「そう思うのならば戦うまでだ。」
族長「フン、殺されたいようだな。ここで死ね。」
族長の言葉と共に虎人たちは動き出す。
アルを取り囲んだ虎人たちは一斉にアルに襲い掛かっていく。
取り囲んだ虎人の兵士たちが、バタバタと倒れていく。何が起きたのか分からず、その周りの者達の動きが止まってしまっていた。
族長「な、何だ。何故兵士が倒れるんだ。」
アル「分からないのか、お頭迄筋肉なんだな。アハハハハ。」
族長「くっ、皆の者ー、かかれー、かかれー、殺せー。」
族長は、怒りで震えている。虎人と言えば影星最強の地位に君臨している。その虎人族の中でもこの族長はかなりの強者であった。
一斉に襲い掛かる虎人兵であったが、アルに触れる事はできなかった。アルの動きが速く残像を追っている事に気付いてもいなかった。
そんな戦闘もアルの一方的な殺戮の場となっている。
虎人族の兵士たちは、段々と恐怖に支配されていく。
兵士「も、もいいやだー。」
兵士2「く、くるなー。」
そして兵士の一人が惨たらしい姿で殺された。「もういやだー」一人の兵士が叫びながら逃げ出した。
この兵士が引き金となり恐怖に支配されてしまった兵士たちがアルの前から逃げ出していく。
アル「おーー、虎人は弱虫の集まりだなー。弱いやつは逃げて、更に弱いやつはこの場で固まって動けないか、あっ、えらそうにしている奴も動けないようだな。アハハハハハ。」
アルのこれでもかとい挑発ももう誰も聞いていない。
族長は、震えていた。怒りで震えているのか恐怖で震えているのは本人にも分からなかったが、ここで逃げる事だけはできないと分かっていた。
そして族長は、アルの前に立つと気合を入れなおす。パシっと両手で頬を殴っていた。「おりゃぁぁぁ」
族長は、気合を入れながらアルに殴りかかる。最強を自負する虎人族の族長は武器を使わず己の肉体で勝負をかけて来た。
アル「おー少しはやる気になったようだな。勝負してやる。」
族長は、決して弱い訳ではない。強者と言っていいほどの強さを持っていた。だが相手が悪かった。
渾身の一撃の族長に対してカウンターで打ち返したアルは、そこから猛ラッシュをかけていく。
その攻撃は、周りの目から見て不思議に映っていた。アルの前に族長が茫然と立っているように映っていたからだ。
それは、アルが高速でくり出しているパンチで(上下左右)族長が何も出来ずに殴られ続けているのであった。族長の体は少し浮いていた。まるで浮遊術で静止しているように浮いている。アルが四方から殴る事で倒れる事も吹っ飛ばされることなく、その場で静止しているようであった。
族長の顔が、段々と変形していくことで周りの者達がやっと気づく。
虎人女「もうやめてー、降伏します。」
虎人の女からの言葉でアルは族長を殴る事を止める。すると族長の体が地上にドサリと落ちていく。
駆け寄る虎人の女は族長を抱えて行く。もう死んでいる事は分かっていたが、この場でその事を告げるつもりは無いようだ。
虎人の女は、族長を抱えて屋敷に入り、数分でまた表に出てきていた。
虎人女「虎人は、降伏します。」
アル「やっと話の出来る者が出て来たか。話の内容は理解しているか。」
虎人女「虎人が強奪した食料の返還とその保証。身柄に引渡し。」
アル「そうだ、要求が満たされなければお前らは皆殺しとなる。」
虎人女「要求は全て飲みます。ですがこの場に要求を満たす食料はありません。」
アル「知るか。1日待ってやる。考えろ。」
アルは捨てセリフを残すと門の外へと出ていく。門の外で野営を準備していく。一緒にいるドラゴンが、早くめしーと言っているようで、アルはこ突かれている。
虎人は、強者であることで基本的に働いていない。これは町の住人たちも同じであった。
働く者達は、基本弱者であり、虎人たちが支配する他種族たちであった。
その為に町の商店も他種族の者達が店を出している。中には虎人でも商売をしている者もいるが少数派でしかない。
虎人は、兵士としていざという時に戦う者として君臨している。それが今回の戦闘でぼろ負けしたことで虎人の権威も威信も粉々に砕かれてしまった。
虎人女「要求したものをかき集めなさい。」
虎人「で、ですが・・・・」
虎人女「商店や備蓄のある家からかき集めなさい。」
虎人「わ、わかりました。」
虎人の町ではこの戦闘行為を多くの者達が見ていた。その為に虎人女の指示に歯向かう者はいなかった。商店も備蓄している家も皆素直に出して来た。
そして翌日、虎人女は門前でアルに食料を山済みしていく。
虎人女「これだけしかありません。」
アル「分かった。集めた事を評価しよう。」
虎人女「・・・・・」
アル「強盗共は何所だ。」
虎人女「もう死んでいます。」
アルの眉がピクリと動いた。
アル「死んでいるか、そうかもう死んでいるのだな。」
アルは、薄ら笑いをうかべながら、何かを投げる。ドスッとナイフが一人の男に突き刺さっている。
アル「俺の勘違いだったかな。死人が生きていたようだ。」
虎人女「強奪行為は命令で動いていた。本人たちの意志ではないのだ。命令を出した族長はもう死んでいる。」
アル「お前何も知らないのだろう、強奪した者達は楽しんで人を殺していたんだよ。」アルの言葉と共にナイフを投げる。今度は心臓ではなく腹に突き刺さっていた。アルはゆっくりと歩いていく。腹に突き刺さったナイフをアルはグリッと足で踏みつけていく。
虎人「グワァァ。」
アル「お前強盗団にいただろう。正直言え。」
虎人は、痛みで話すことが出来ない。
アル「早く喋れ。」
虎人は、痛みに耐えながら強盗行為を認め、更に弱者をいびりながら殺したことを話していく。
アル「お前ら虎人は、いつも同じことを行なっているんだよ。自分達が殺される番になった事を自覚しろ。」




