367話 弓対決と・・・・
ギルバート軍、騎士隊隊長対大春華軍、騎士100騎の戦いが始まった。
一人の騎士を取り囲むように動き出した100騎だが、相手が黙って包囲されることはない。隊長は馬を蹴り走り出すと敵と同じように動いている。突然まとなりに敵が現れ慌てふためく騎士であったが、考えるまもなく殺されていた。
次々と槍で突かれ殺されていく騎士たちを仲間?の騎士達は茫然と見ていた。そして気付いた時には自分たちも同じ運命となっていた。そんな状況で50人程殺されるとやっと騎士たちは理解したようだ。
自称一騎当千ではなく弱者であることを理解した騎士たちは、全員が逃げ出していた。
それはもう見事な逃げっぷりであった。泣き叫びながら自軍内に逃げ込んでいったのだ。
味方である大春華の兵たちは、何とも言えない表情となっていた。
自称一騎当千の者達は、きらびやかな鎧を身に纏い一層みじめな姿であった。軍の幹部たちは恥をかかされた事で逃げかえって来た騎士たちを怒りに任せて殺してしまった。
これで大春華国軍の士気をかなり落としてしまった。だが正解とも言えた。自称一騎当千の者達が後10000騎も控えているのだ。逃げれば殺されると理解した瞬間でもあった。
敵を目前にしてごたごたしている大春華軍とは打って変わって、ギルバート軍では、隊長を大歓声で迎えていた。
本戦の前の余興として行った騎士たちの戦いで大春華国軍の幹部たちは焦っていた。騎馬隊の隊長があれ程強いとは思ってもいなかったのだ。実際に目の前で見たのだがいまだに信じられない程だ。だが何もしなければ確実に負ける事だけは分かっていた。そこで大春華軍は伝令を出し別動隊を出すことになった、敵に同時攻撃をかける作戦を立てた。
その為には、この場で時間稼ぎを行わなければ成らなかった。
大春華軍の幹部がギルバート軍の前に出ていく。それまの大歓声が無くなり大春華の軍人に注目される。
注目された大春華の軍人は、少しだけいい気分となっているが、そこは何でもない様な表情で「聞けーー、我は、大春華国弓隊兵団団長である。騎馬隊の戦いは未熟な者達が出たためにその方らにいいように遣られたが、我が弓兵団は違う。どうだ弓で一勝負と行こうではないか。」
この要請にギルバート軍の弓兵たちは意気込んだ。と言っても100人もいない部隊であった。
ギルバート家では弓兵はかなり少なくなっていた。弓の代わりに魔導砲(銃)が主流の為に今の弓兵たちも魔導砲と掛け持ちとなっている。それでも弓が好きな者達であるためにかなりの名手達なのだ。
そしてギルバト内で争いが生じてしまった。弓兵たちは誰が代表となるかで揉めてしまったのだ。
揉めたが一瞬で収まってしまった。アルのひと事で代表者が決まったからだ。
代表者となった弓兵は、女性であった。
大春華の団長は、女性が出てきたことで勝利を確信していた。男より力の弱い女が弓を引いても飛距離が落ちる事を瞬時に判断したからだ。これによって勝負の内容が決まった。遠くの的を射貫く勝負にする事にしたのだ、幸いに勝負を挑んだがどのような勝負とはまだ伝えていなかったのだ。
にやける団長と対峙する女性弓士。
団長「ほーーー、おなごか、まぁいいだろう。そうだな300M先の的に10矢を放ち数の多い方が勝ちでどうだ。」
弓士「分かった。」
そして勝負が始まる。最初は団長が射貫くようで大きな強弓を部下が持ってくる。
団長の弓の腕は確かな物であった。最初の一矢は外してしまったがその後の全てを的に当てていた。
ニヤリと笑う団長であったが女性弓士は無表情であった。
女性弓士が構える弓は団長に比べかなり小さな弓であった。(普通の弓)
300Mも先の的を狙うにはもっと大きな弓でなければ不可能な距離なのだ。団長はその事を知っている為に笑いをこらえるのに必死であった。
だが女性弓士が的に向い構えると何の狙いもつけていないようにシュッ、シュッ、シュッと連続で放っていく。唖然とする団長であったが、見事全ての矢が的に刺さっていた。それも団長は放物線を描きながら的に当てていたが、女性弓士の矢は真っすぐに飛んでいたのだ。300Mもの距離を直線で真っすぐ飛ばす事等常識ある弓士には受け入れられない事柄であった。
団長「ううううう、う、うそだ。あ、あありえない。」
弓士「私の勝ちだ。」
女弓士はもう勝負は終わったと自陣迄戻っていった。
いまだに負けた事が信じられない団長はその場に崩れ落ち、一人でブツブツと何か言っていた。
大春華軍の兵士たちも負けた事よりもありえない弓士の実力に誰も言葉が出なくなっていた。
大春華軍は、これは戦う前に負けてしまうと思ったのか、すぐに団長を下がらせる。そしてあともう少しの時間稼ぎが必要である為に又無謀にも勝負を仕掛けていく。
だがさすがに時間稼ぎに付き合う程ギルバート軍も暇ではない。そこでアルはならば大将同士の一騎打ちで決着を付けようと提案していく。
大春華国としても生ける伝説となっている大将軍が率いている軍なのだ。全く問題ないと兵士たちは大歓声を上げていく。もう勝利は約束されたものだとばかりに大歓声で大将軍を待っている。
アルとしてもその大将軍とどのような人物かは知らない。大将軍自体がいる事さえ今知ったのだ。
待っているアルの前に現れたのは、よぼよぼのじいさんであった。歩くのにも足が震えとても戦えるようには見えなかった。
流石のアルも大将戦と言った手前、戦うが出来ればよぼよぼなじいさんなどと戦いたくない。
アル「すまん。これほど高齢な者とは思っていなかった。誰か代理を立ててはどうか。」
大将軍「せせ、戦場で、し、し、死ぬ事が出来るんじゃ、本望だ。い、いざ、しょ、勝負。」
大将軍は、剣を抜こうとするがもう力が入らないのか、剣を抜く事も出来かった。さすがのアルも大将軍が剣を抜くまで待つことにした。
大将軍は鞘を捨てやっと剣を抜く事が出来たが、剣を持っていると段々と腕が下がり、しまいには剣の先が土についてしまった。
アルは大声で大将軍に従者を用意するように大春華に伝える。大春華の兵たちも生ける伝説の人物であるが年まで考えていなかったのだ。何とも言えない雰囲気の中、大将軍に付き従う二人の従者が現れる。




