366話 一騎当千の者達出陣
大春華国の都は巨大だ。
余りのも巨大すぎて都で生まれた者でも迷子になるという。そんな巨大な都内で富める者と貧しい者がいる。貧しいものが圧倒的に多いのだが、都内の一部地域だけは、富める者達で溢れている。
その富める者はこの区画で日々暮らしている。
一方、都の約半分は貧民たちが暮らす区画となっている。元は一部だけであったのだが、賄賂政治の影響で都で暮らす者達の多くが落ちぶれてしまった結果、巨大な都の半分がスラム街となってしまっていた。それ以外の区画も決して裕福とは言えない。富裕層の者達が都の住人たちから搾り捕ろうといつも狙っているからだ。
スラム内の家
隠密1「どうだった。」
隠密2「酷いものだな。こんな巨大な都の半分がスラム街となっているんだ。毎日餓死者が転がっている。」
隠密1「そうだな。これほど酷い場所は初めてだ。」
二人は横に大きく首を振っている。
隠密2「これからの計画だが、いつ実行するんだ。」
隠密1「ああ、それはギルバート軍が姿を表したら実行だ。」
隠密2「大騒ぎになるだろうな。スラムを含めて戦争などないと思っている連中だからな。」
隠密1「そうだな。」
そして大春華国の都に突然現れた4万もの大軍で、都は大騒ぎとなってしまった。特に城内の者達は大騒ぎとなり各所で争いまで発展していた。
城内の軍を支配する者達は、敵軍を倒すために城内の兵、街の兵士などをかき集め何とか同数を捻出したことでいったんは落ち着きを取り戻した。
同数であれば勝てると思い込んでいるところが凄い所である。
この都の兵4万の内城内の騎士達はエリート部隊と言われている。一騎当千の強者と自ら風潮している者達なのだ。多少疑いの目もあるが、いつも自らが豪語しているのだ。その言葉でも信じてみたくもなるだろう。そんな自称一騎当千の者達が1万人もいる大春華国の軍は大勢の民衆に見送られながら都の門を出ていく。都から何とか見える位置に布陣しているギルバート軍を殲滅する為の出陣なのだ。
都内の期待を一身に受け、堂々とした風貌と威厳に満ちた豪華な鎧を着ている者達は、自分が活躍する夢でも見ているのだろうか、皆口元が緩んでいる。
大春華軍は、横一列に布陣して真っ向勝負をするようで、まずは自称エリート(一騎当千)が中央に陣取っている。
対するギルバート軍は、4つに分かれて固まっている。中央15000、右10000,左10000と本体として中央の後ろに5000であった。
その中央後ろから100ほどの騎馬隊が前に出てくる。
100の騎馬隊の隊長が大春華軍に対して
隊長「大春華の弱兵に物申す。自称一騎当千を自称している弱兵の騎馬の者よ。我ら精鋭部隊100騎と自称一騎当千と戦おうではないか。」
この言葉に大春華軍の反応は大きく二つに分かれた。いいや実際は3つなのだが一つは声を上げる事がなかった。
大春華軍内の兵士たちは自称エリートたちがいつも語っている。自分の武勲を聞かされている。1騎で50人の部隊を殲滅したとか、1騎で100人を殺したとか色々であるが武勲はいつも1騎でやったという物であった。
そして今回は自称一騎当千が10000人もいるのだ。そして相手は何と100騎だけであることから兵士たちはこれはもう勝ったと大喜びしている。自分たちが戦う事が無い事から大きな声でエリートたちを讃えている。
もう一つの反応は、軍の幹部たちであった。エリート部隊を率いる将軍、幹部たちは馬鹿にされている事を理解していた。
その為に自称一騎当千たち(10000騎)をたかが100騎に当たる事をプライドが許さなかった。その為に将軍と幹部たちは、自慢の騎士達1騎で100人を相手してやると豪語してしまったのだ。
焦ったのは自称一騎当千の10000騎の者達であった。この場にいる一騎当千の者達は、実は初陣の者達が殆んどであった。戦いの無い都でエリートと呼ばれる騎士たちは、戦争に駆り出される事もなく都でほら話をしていただけの存在であった。
だがそのほら話もこの戦場では味方にとって大きな期待の目で見られている。
10000騎の中から特に大きな話をしていた者達が選ばれる。皆真っ青な表情をしているが、多分戦いのために気合でも入れているのだろう。
選ばれた一騎当千の者達100騎は、大春華国を代表する強者となっていた。大春華兵達から熱い声援を浴び、ギルバート軍100騎の前に出ていく。
この100騎内にはもちろんかなりの強者も少数だが混じっている。この少数の者達が今回100騎を率いていた。自称の者達の事もある程度は理解している為に、隊長となった者は自分達だけで勝負を決めようとしていた。
大春華隊長「儂がその者達を相手にしてやる。どうだそこの隊長よ、一騎打ちで片を付けようではないか。」
(ギ)隊長「ほーーーーっ、大言を吐く者が多いと聞いたが本当であったようだな。大春華国では声が大きいものが出世するという事は事実のようだ。」
「「「「「アハハハハハハハハハハハ」」」」」」」
隊長の言葉は、大春華国を馬鹿にした言葉であった。強い者ではなく大声が出せるものが強者であり出世すると揶揄したのだ。実力はないが声が大きければ意見が通るというお国柄を馬鹿にした者であった。
大春華の隊長は、戦場であることから大声で話したのだが、それを揶揄されるとは思ってもいなかった。
実力でここまで出世してきた隊長にとって戦でバカにされることは許せない事であった。
怒りで隊長はギルバート軍の隊長に馬を走らせ槍を突く。・・・だが大春華の隊長はそのまま馬と体だけ素通りしてしまった。首だけはギルバート軍隊長の足元に転がっている。
一瞬何が行ったのはを理解する事が出来なかった大春華兵たちは、シーーーンと静まり返っていた。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」
とギルバート側から大歓声が響き渡る。
隊長「自称精鋭騎士達よ。ハンデをやろう。100騎対俺一人で相手をしてやろう。そのくらいでなければ戦う事も出来んだろう。アハハハハハハ。」
大声で笑う隊長であったが相手の騎士達は100対1なら勝てるかもと初陣である者達は思ってしまった。
初陣の者達は相手の力量を計る事も出来ない能無したちであった。




