5-4 Hammmmer-2
「アンタは、“ゲーム”の条件として地球人に“蜜”を与えた。よくよく考えれば、ここからもうなんかおかしいよ」
例えば。今腰から下をふっ飛ばされた上アタシに突き刺されたリリィでさえ、“蜜”の力があれば、そしてそれの源の、精神力、心、気合、感情などと表現される「それっぽいもの」さえあれば、あの状態からピンピンしてる状態で立ち上がることもあり得る。
丁度前のリリィとの決戦時のアタシみたいに、死にかけても死にかけても立ち向かうことだってできる。
とんでもないスーパーご都合主義パワー。
それは、死人を生き返らせることすらできるのだ。
そんなモンを、何の制限も無く与えるなんて、いくら死ぬかも知れない、ってリスクがあるとしても正気の沙汰じゃない。
「マアリ。アンタは地球人のクソッタレ……としか言えない部分をアホ程見せられて、相当参ってたんだろう?こんなモンを与えてまで地球人の“真価”なんてものを測りたがる程にな」
マアリは、今まであれだけテキトーにふるまっていたから、地球人に対してもテキトーにしか考えていないと思っていた。でも違うんだ。
彼女は、地球人の汚点を見続けて、きっと壊れてしまっていた。
「……リリィが急に“ゲーム”の中止を宣言したのは、実はアンタのためだったんじゃないのか?……マアリ、アンタは故意かどうかは知らないけれど、地球人に対して自分が壊れてしまう程の憎しみを抱いていることを、リリィに伝えたんだ。それを受けたリリィは、アンタに無理をさせてまで、地球人に生き残るチャンスを与えることをやめようとしたんじゃないのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
マアリは、本気だった。本気で地球人と向き合い、そしてソレに殺意やら憎しみやらを本気で抱いていた。
――そういう前提だったとすれば。
……今のマアリの余裕の無い態度を見れば、アタシのこの想像もあながち間違っていない気がした。
「リリィは、アンタを嫌ってはいなかった。だから、アンタが明かした地球人への憎しみを無視して、“ゲーム”を続行するのをやめたんだ。だけど、一つだけ。リリィには心残りがあったんだ。それが、アタシの“ゲーム”だ。リリィは……自分で言うのも何だし、照れくさいけど、アタシに入れ込んでいたんだと思う。“代表者”にスカウトしたの、アタシだけだった、って話だし。『せめて、ちゃんと終わらせたい』……そう言ってた。だからこそ、自らの手でアタシの“ゲーム”を終わらせることにしたんだ」
その思いはきっと……尋常なモノじゃなかったはずだ。だって、アタシだってリリィを殺そう、と覚悟するまでに相当な葛藤があった。なら、リリィもそうだったんじゃないか。
なんせ、ドロドロに腐ってるくらいの腐れ縁だもんな。
それを、自らぶった切ろうってんだ。
クソつまらなくて、でもとても大切なソレを、な。
「だから、さ。アタシ達は戦ったんだ。その命を賭けて、粗末にして、燃やして。それはとても……まさに、『因縁の対決』って表現できるくらいの、特別な戦いだったんだ。アタシ達は死力を尽くしたんだ。もうこれ以上無いってぐらい、お互いと向き合って、打ち合って、殺し合った。――だからこそ、その結果は、この上なく絶対なんだ」
そう。勝ったのは、生き残ったのは、アタシ。
そして、負けたのは、死んだのは、リリィ。
「その結果は、絶対で、神聖、とまで呼べるくらいの、不可侵のモノになったんだと思う。だけど……マアリ。アンタは、リリィを生き返らせてしまった。不可侵の結果を、覆してしまった」
そして、それは――
「――リリィの覚悟を、貶めてしまったんじゃないのか?」
「ち、違う!違う違う違う!あたしは!そんなつもりじゃ」
「無かったんだろうね。リリィとアタシの決戦から一ヶ月も経ってからのことだもんな。アンタも色々考えて、考えたんだろうが。だけどリリィは。アタシとの戦いと、その結果を大切にしていたんだ。だからこそ、“蜜”のご都合パワーで復活、なんて望んでなかったんだ。……だから、リリィは辻褄を合わせるように、わざとアンタに立ち向かって、返り討ちにあったんだ。元通り、アタシに敗れて殺されたと言う結果に合わせるために、死のうとしたんだ」
……全て、アタシの勝手な想像だ。大部分を実際に見てもいないのに、勝手に補完した説明だ。
だけど、何故か間違っているようには思えなかった。
なんせ、リリィとは、腐れ縁なんだよ。
それがどんだけしょーもなかろうが、やっぱ大切だった。
長い間、ずーっと一緒にいた。
だから、なんか、わかる。
わからないけど……わかるんだ。




