4-3 《?ない無いナイ?-3》
うん、まーこれは、アレだ。
うわっ・・・私の戦闘力、高すぎ・・・?
無料5分で“代表者連合軍”からアタシの予想を超える“蜜”の使い手を探そうとして、張り切りすぎてしまった。
「リリィちゃんの戦闘力診断テスト」を受けた100人程の“代表者連合軍”の皆様のテスト結果はすぐにわかってしまった。
「えー発表します。全員、不合格です」。テメーらはアタシの定める適正戦闘力のラインに到達できてねーから!
ついでに普通の兵隊さんにもサヨナラして頂いた。そいつらに関して言えば、飛んで火に入る何とやらって感じ。
これにより今日は地球人絶滅に向けてそこそこ大きな一歩を踏み出すことになったのであった。
全く、ちょっと期待しちゃったアタシのバーカアーホ。
何となく、あの時のマアリの苛立ちの理由が“代表者連合軍”と戦う前より深く理解できる気がする。
アタシと、彼等代表者。条件は一緒なのだ。“蜜”があること。
説明は各々受けている筈だ。
「思い通りにする」力。精神、心、気合、感情……等と表現される「それっぽいもの」に左右される力。
超ご都合主義なその力。
そんなモンを持っていて、それが100人集まって、あの程度だって?アタシにこんなあっさり殺されるぐらいの役割しか果たせないなんて。
もっと足掻けよ。
もっと抵抗しろよ。
もっと頑張れよ。
もっともっと、クソッタレ、クソッタレって力を振り絞って、アタシを殺そうとしてみろよ。
「“蜜”の力に限界は無いよ」
冷静に考えれば、それを実感させられてアタシは、それ以前より遥かに強くなった。
最早自分の力が計り知れない。まさに、「無限」では無いかと思えるぐらいに―――
だから、相手が100人だからどーこーって話でも無かったのかも知れない。「無限」と「有限」の残酷な程の差。当然の帰結。
「……ははっ」
乾いた笑いが漏れだす。ホント、とんでもない話だ。「無限」の力。それを持つアタシが地球人を滅ぼしましょうってテキトーとは言え行動してるんだ。
そりゃ無理だろーよ。地球人共よ。どーにもなんねーことさ、全く。
「……なぁ?」
肉塊の一つに話しかけるように声をかける。もちろん返事は返ってこない、知ってる。
―――それでも、誰か一人ぐらいは「無限」に至って欲しかった。いや本当にそうなったら困るんだけど、それでも……このあまりの不甲斐なさには、そんな考えを抱かずにいられない。
どーにもなんねーことかも知れないさ、そりゃあ。だけど、どーにもなんねーってぐらいで諦めてるんじゃねぇよ。ましてや、アンタ達にはその“蜜”の力があるだろうが―――
―――先のマアリとの一件から、アタシは随分と地球人に厳しくなったもんだ。それ以前じゃあこんなこと、思うことだってしなかった。
これが、マアリから見た地球人の印象なのか?……いや、マアリは今のアタシよりもずっと強い。色んな意味で。それでも、マアリはぶっ壊れてしまったんだ。
マアリから見たこの惑星の人間は、アタシが今見ているこいつらよりもっと汚くて醜くて救いようがないんだろうさ。ぞっとする。
だから、そんなの放っておけねえよ。アタシにゃあアンタにこの惑星がどう見えてるかなんて、どうせまだまだ全然わからねぇ。
せめて、然るべき処置を。それぐらいしか、できない。
「リリィ」
「……リザね。何?」
地球人にはできない、アタシ達にしかできない言葉を使わないコミュニケーション手段で、あのマアリの「無限」の力を共に目撃した、同族のリザから連絡が来た。
「先ほどリリィは地球人代表者の連合軍と戦いましたよね?」
「そうね」
「……それで代表者は全て死んだようです。ただ……一人を除いて」
「……花ちゃん」
「そう、春野花子です。彼女だけはこの連合軍に参加しなかった。……リリィ、貴方一人にこの役目を背負わせている私が言うのも何ですが、彼女は“蜜”の力を持つ地球人今やただ一人の地球人です。お辛いでしょうが、抵抗の可能性がある以上、何らかの処置をしなくては」
「わかっているわ」
「ええ、もし彼女が「無限」に至るようなことがあれば……相当な障害になります。“蜜”を持っているのですから、その可能性はあります」
「…………」
「責任者は貴方です、リリィ。こちらから強制力のある指示はマアリからすら出しません。ですが、何か手伝える事があれば、何なりと。……後悔の無いように。祈っていますよ、リリィ」
「うん。じゃあね」
「では。失礼します」
―――花ちゃん。アンタ一人らしいわね。“蜜”の力を持つ地球人、最後の希望ってヤツだな。
まるでお膳立てでもしてもらったみたいだよ。
どうすんだ、春野花子。えぇ?
不思議な気分だ。花ちゃんがリザの言った通り、「無限」に至ることは、都合が悪いのに、心の何処かでそれを望んでいるんじゃないかって勘違いしてるらしいぞ、アタシは。
花ちゃんの決心がつくのはいつかなぁ?何故か、アタシの提案したもう一つの選択肢、「アタシ達の仲間になる」ってのはあり得ない気がする。むしろそっちを選ばれたらがっかりしそう。本当、不思議だけどそう思う。
……戦うことになるんじゃないかと思う。あの“真価の闘技場”で。
どうせなら、ド派手に殺り合ってみる?花ちゃん―――




