4-3 《?ない無いナイ?-2》
―――あんなモンでよかっただろうか。
翌日、今度は都心のとある利用客でごったがえす駅をその遥か上空から見下ろしながらふと昨日のTVに出た時のことを考えた。
まぁいいか。とりあえず今からは何も考えずに暴れまわってみるか。
ここは人が多い。ここで一暴れしてみよう、とふと思い立つ。テキトーだ。
そう言えば、TVで人を殺してはいたけれど、これ程の数の人間を一辺に殺すのは初めてだな。今までは単なる虐殺、今から行うのは大量虐殺。
なにか違いがあるんだろうか。無いかも、と思えるアタシはついに「壊れた」か。
電車が到着した。
次々乗り込む。限界を超えて乗り込む。満員電車ってやつだね。
なんつーか、呑気なモンだ。あんなにTVでアタシが暴れまわったのにまだ地球人達は逃げ回ったり隠れたりするでも無く、日常をまだ回そうとしている。
ありえねーだろ、という思い。
そんなもんかもな、という思い。
何だかここから見てると人間はみんなちっぽけだ。感情の無い人形みたいに見えて、「なら壊しても誰にも裁かれない」という思いに唐突に駆られた。
急降下する。そうして発進する直前の電車の目の前まで辿り着き、
アタシは、その目の前の電車を、人間がパンパンに詰め込まれたソレを、思い切り蹴り飛ばした。
サッカーボールみたいにポーン、と吹っ飛んだソレは、近くの住宅街に墜落してそこら一帯を爆音と共に叩き潰した。
……まぁ、あれなら電車の中の人間も、潰された住宅街の人間にも生存者はいなさそうだが……
一応、見てみるか―――
それからはあまり覚えていない。印象に残っていない。腕をブンブン、足をブンブンふりまわしてその一帯を台風の様に破壊し尽くし、それでも辛うじて形を保っていた、目についた人間(既に死んでいたかも知れないが)を引きちぎっていった。
何の感情も無い。彼等は、自分たちより強い生物に目を付けられて、殺意を向けられた。
自然淘汰。
それはこの地球でも。特に人より小さな生き物達の中で当たり前に行われていること。
それと同じようなことを、している。いちいち感情など抱くものだろうか。
暴れ疲れた。いや違うか。飽きた。
もうこの場所は原型を思い出せない程に破壊しつくした。
「はぁーーー…………」
瓦礫に座り込みながらため息をついた。ちょっとボーっとしたい気分。
と気を抜いていたら、後頭部に小さな衝撃を感じた。
「あいたっ」
別に痛くないけれど、反射的にそう呟きながら後ろを振り向いて何がぶつかってきたのかを探した。
―――これは……銃弾?結構デカい。
と思いきや、続けてそれと同じもの少し違うもの、あからさまに違うもの、色々な種類の、凄まじい数の銃弾がアタシの体を叩いた。
いつしか嵐のような銃弾がアタシに襲い掛かってきていた。ちなみに爆撃もされてるっぽいよ!あとガス兵器ってやつかなこれ?詳しくないからなぁ……他にもなんか色々食らってる。訳わからん。
おいおい、なんだなんだコレは。心当たりはこの銃弾の数くらいにはあるけれども!
まぁ……効かないけれどね。
「やはり、死なんか」
「そらそーだ。……おい!随分暴れまわったもんだ……リリィさんよぉ」
「そこまでです……!もう地球人を殺させはしません!」
「あはは、キミに言われた通り徒党を組んできたよー恨まないでねってー、ふふっ」
また凄いことになったもんだ。あんまりにもボケっとし過ぎたか。
気が付いたら銃を持つ兵士やら戦車やらに囲まれていた。空にはヘリや戦闘機も飛び交っている。自衛隊かな?だけどそれだけじゃない気がする。恐らく、他の国からも軍人やら兵器やらをかき集められるだけ集めてきたのだろう。
なんだ、意外に危機感持ってるじゃないか地球人。しかしこれだけの大軍に囲まれるまで気づかないとか慢心が過ぎる。アタシどこぞの金ピカ王レベルかも。
しかし、問題なのはそこじゃない。こんな奴等、アタシの“蜜”の力の前では敵ではない。アタシの敵になれる可能性があるとするならば、彼等普通の軍隊の包囲から、アタシに向かってすこしはみ出す格好でその姿を現しているざっと100人程の……“ゲーム”に立候補していた地球人代表者達だ。
「おい普通人共!さっきので地球にある通常兵器がこいつに効かねーのはなんとなくわかったろ!?まぁ、核でも落とせばどうかってのはわからねぇが……」
「……いや核でも殺せませんね。私の国は核の保有国で、私はそれについて研究する身でした。だからこそ言えます。“蜜”の力を持つ者……リリィどころか私達ですら核で殺すことはできません」
「へー……人生イロイロだねぇ。というかボクらってそんなに強かったんだ。知らなかったなー」
「気を抜かないで!あのリリィと言う人は、そのアタシ達より遥かに強いはずなんですから!緊張感を持ってください!この“代表者連合軍”で彼女を倒せなければ世界は……世界は……!」
「どうでもいいから早く帰らせてー」
実に様々なパーソナルを代表者達は持っているようだ。まぁ、“ゲーム”に立候補したり、スカウトされたりって連中だ。一癖ある奴等ばかりなのは当然だろう。
「すごいじゃない。コレあんな短い期間で集めたの?……コレは期待しても良いのかな?この私、リリィが戦うに値する……なんて、ね」
中々面白いことになった。もう不自然なレベルでのスピードで、アタシに対抗する為の軍隊が出来ていたらしい。この事態は、やはり“蜜”が絡んでいるのだろう。代表者達がこの状況を作るための、なんらかの超科学的な方法を“蜜”で編み出したに違いない。
“蜜”の力は「思い通りにする」力だ。それを理解し、随分応用力のある使い方ができている。
この中には、或いは全員が、アタシの予想を超えた素晴らしい“蜜”の使い手である可能性は、ある。
「いいね。さぁ、闘ろうぜ―――」
アタシは、そんなクサいセリフを呟いて、彼等に突撃していった。




