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ほっとひと息?

 神域から出たら、見慣れた町だった。右手にエコバッグ、左手にはスマホ。

 さっきまで隣にいた姉ちゃんの姿は見えない。姉ちゃんとの仲間に怪しまれない様に、師匠が配慮してくれたんだと思う。

(そういや醤油を買いに行こうとしてたんだよな)

 おそらくあの蜥蜴が因果に干渉するマジックアイテムを使ったんだと思う……醤油、まだ半分近く残っていたんだぞ。もっと痛めつけてやるんだった。


「あーにき、何してんの?」

 俺を見つけて駆け寄ってくる向日葵……もし姉ちゃんが死んでいたら、この笑顔が見れなくなっていただろう。


「醤油が切れたから、スーパーに買いに行くとこだよ……向日葵は部活の帰りか」

 向日葵の隣にいる二人の女の子は部活仲間だろううか。

 ぶっちゃけ、妹の交友関係には疎い。どう考えても自慢出来る兄じゃないし。


「……た、他校の子だよ。交流試合があって、偶然そこで一緒になって」

 向日葵の目が泳いでいる。あれか、友達の目が気になるってやつか……町で他人の振りされたりしたら、兄貴ガチ泣きしちゃうからな。


「いつも妹がお世話になっています。向日葵、あまり遅くなるなよ」

 挨拶だけして、速攻立ち去る。友達の友達は、他人。みうちの友達は、赤の他人。俺に興味ある訳がない。


「えー、僕もスーパーに一緒に行く。食べたいお菓子があるんだ。ねえ、買っていいでしょ?」

 向日葵はそういうと、俺の手を掴んだ……このおねだり上手め。


「分かったよ……?救急車の音だ。なんかあったのか?」

 聞き耳を立ててみると、ピュリアの生徒が運ばれたらしい。

 最初は魔法少女絡みかと思ったら、男子生徒との事。

 魔物抜きにしても、東京って治安が悪いんだよな


 ◇

 夕食後、勉強をしていたら姉ちゃんが部屋にやってきた。


「相変わらず、凄い本だね。これはクレアーズこうに帰った時の為なんだよね」

 神域で姉ちゃんと師匠が、どんな話をしたのか?気になるけど、下手に踏み込んだら自滅してしまう。


「クレアーズ……特に魔族は文明が遅れているんだ。王は民の生活を守るのが責務なんだし」

 文明は様々な不便を解消する為に発展していくと思う。でも魔族は大概の事を魔力で解決出来てしまう。

 中世どころか、良いとこ古代ローマ帝国程度だったと思う、未だに洞窟に住んでいた奴もいたし。


「あんなに酷い目にあったのに、戻らなきゃいけないの?」

 俺は森林茂の人生に満足している。快適な住居に、豊富な食糧。そして温かな家族。


「どうも向こうの連中が、こっちで馬鹿やってるみたいなんだ。魔法少女も怪しいし……戻る戻らないは、全部解決してからだよ」

 何よりお嫁さんを見つけないと……でも奇跡的にお嫁さんをゲットしても、クレアーズに連れて行って良いのか?

 電気がないから、ネットどころかテレビもない。当然洗濯機がないから、服は川で洗っていた。

 魔族は野生動物なみに、身体が頑丈だ。外で寝ても平気だし、炎天下の砂漠や雪山でも平然としている。

 日本人をクレアーズに連れて行くのって、嫌がらせ以外のなんでもないよな。

 嫁は一時忘れよう。考えれば、考えるほどへこんでしまう。

 今は情報収集が先決だ。俺は魔法少女の事を姉ちゃんに尋ねた。


「私Dランクだから、魔法少女の事あまり知らないんだよね。チームを組んでいた子の顏や名前も知らないし」

 姉ちゃんの話によると、何かあるとスマホに連絡が入るそうだ。仲間は顔に靄が掛かっていて、どんな顔をしているのか分からないとの事。

 髪形とコスチュームで区別していたらしい……ソシャゲの低ランクキャラみたいな扱いだな。


「そして第三者に正体がバレたら、死んでしまう……情報を共有して、システムに疑問を持たせない為か。魔法少女になるメリットはあるの?」

 どう考えても、デメリットしかない。どんな旨味があるって言うんだ?


「私は魔物に襲われた時に、Aランクの子に助けてもらったの。その時に“今、東京は危険に晒されているの。自分や大切な人を守りたいと思ったら、魔法少女になって……ランクがあがれば、貴女の夢を叶える事だって出来るのよ”そう言って誘われたの」

 危機を煽っておいて、ゆめで釣る……詐欺と同じ手口だよね。


「魔法少女のランクって、上がるもんなんだ」

 姉ちゃんだと、赤とんぼからギンヤンマかオニヤンマになるんだろうか。


「魔物を倒すと魔石が手に入るんだって。昔のしー君の身体にあった魔核みたいなやつだよ」

 ……死なない為には、魔物を殺さなきゃいけない。強くなればなる程、危険な任務が与えられる。まるで蟻地獄だな。


「どっちも一緒だよ。身体の中にある時は魔核で、身体から出た物を魔石って言うんだ」

 まあ、殺さなきゃ取り出せないんだけどね。


「そう言えば、前世のしー君の家族ってどんな人だったの?」

 なにかを察したらしく、姉ちゃんは話題を変えて来た。前世の家族か……。


「あまり覚えていなんだよ。魔族は、基本共同育成なんだ。そして五歳になったら、子供達だけで生活していく」

 そこで資質に合わせて、色んな所に振り分けられていく。

 当時は部族間の争いが激しかったから、ある意味苦肉の策だったんだろう。


「そっか……それでこれから、どうするの?」

 流石はお姉様、空気を読んでまた話題を変えてくれた……でも、いつか話さなきゃいけないんだろうな。


「今は様子見だよ。姉ちゃんも今まで通り動いて……そうか、姉ちゃんは師匠がバレない様にしてくれてるだろうけど、僕もバレない様にしておかなきゃ」

 こっちの世界で魔力を持っている人間はいない。でも現状クレアーズの人間が紛れ込んでいる可能性が高いと思う。

 ちなみに、魔王タイム第二の開放条件は、義憤・誰かの為に心の底から怒る事だった……ネタバレされたら、条件達成がきつく感じるんですが。

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