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魔王少女のユニフォーム?

 まずい。目が霞んで来た。姉ちゃん達の会話が気になるけど、ゴーレム達が許してくれないのだ。

 当たり前だけどトレーニングゴーレムは疲れない。師匠の魔力が流れている限り、無限に動き続ける。

 かたや、俺は普段あまり運動をしない。だってブーロに戻れば、体力が有り余っているんだもん。


「ちきしょう。魔力を流さないと、アインゴーレムも砕けないのかよ!」

 前世での俺の戦い方は、パワーと魔力によるごり押し。体術なんて気にした事もない。

 日本に戻ったら、何か格闘技を習うべきか。


「こんな大人っぽい服、私には早過ぎますよ」

 結界が緩んだのか、姉ちゃんの声が聞こえて来た。いや、神域でなんて会話してるの?

 ここは創世の女神クリス・ガルディエーヌの神域。上級神でも簡単に訪れる事が出来ない尊い場所だ。

 そこで女子会ですか。


「大丈夫。楓ちゃん癒し系なんだし、ほんわかした雰囲気にピッタリだよ。肌綺麗なんだし、肩を出しても平気だって」

 まるで本当の姉妹の様な会話である。

 師匠、姉弟間で待遇が違い過ぎませんか?弟子って言葉には弟って字が入っているんですよ。もう少し優しくしても罰当たりませんよ……まあ、師匠に罰当てれる神様なんていないんだけど。

 そろそろ体力が限界だ。魔法で一掃して一息つきたい……ゴーレム相手じゃルーチェランツァは、効果が薄いな。


「鉄の溶解温度は千五百度だったよな。流石に結界に閉じ込めないときついか……まずは……拘束バインドする牢獄プリズン……痛てっ!」

 頭に鈍い痛みが走ったので、振り返る。そこにいたのは、握りこぶしを見せつけている師匠。そして師匠の足にすがりつくトレーニングゴーレム達……なんて変わり身の速さだ。

(お前等だって、俺を散々殴ったじゃないか?)


「そんな魔法使ったら、楓ちゃんが危ないでしょ!それとなまり過ぎ!日々、鍛錬を欠かすなって、教えた筈よ」

 戻って速攻お説教ですか!ちきしょう、俺も姉ちゃんに泣きついてやる。


「しー君、前世むかしは大変だったんだね。久し振りに膝枕してあげようか?」

 ……姉ちゃんは、ボロボロな赤トンボモチーフのユニフォームを着ていた筈。でも今はお洒落な服を着ている。

 しかもこれは……。


「師匠、姉ちゃんから、えげつないパワーを感じるんですが」

 どうみても上級魔族なみの力だ。ドラゴンより強いかも知れない。


「今日から楓ちゃんは魔王少女。その名キングシッターよ」

 魔王少女で王のお守り……早い話が俺のお守りじゃえねか。


「魔王少女って、なんですか?それに俺はもう高一、お守りなんて必要ないですって」

 お守りがつくのって、五歳までだろ。なにより部下にバレたら、恥ずかしすぎる。


「あん?学校の廊下をボコボコしたのは、どこの誰よ?あんたは手綱を握る人がいないと、すぐに暴走するでしょ。楓ちゃんはあんたのブレーキ。お姉ちゃんの言う事なら素直に聞くだろうし」

 俺が口で師匠に勝てないのは知っていた……戦いでも勝てないけど。


「だったら、その服はなんですか?確かに動きやすそうですけど、戦いには向いてませんよ?」

 防御力なんて期待出来ない。直ぐに破れてあられもない姿をさらしてしまう。


「淡藤色のオフショルダーにオリーブグリーンのワイドパンツ、パンプスは黒よ。楓ちゃんに似合っているでしょ」

 何を言っているのか、さっぱり分かりません。つうか、俺より日本のファッションに詳しいんですか?


「そうじゃなく、この恰好でどうやって戦うんです?肩見えているじゃないですか」

 毒を持った敵ならかすり傷でも命とりになるんだぞ。


「誰が作ったと思っているの。私の加護を付与しといたから、ミスリルソードでも傷をつけられないわよ。それより魔法少女はミニスカートじゃなきゃ駄目って法律でもある訳?好きなら、ともかく全員に強制するなんてナンセンスよ」

 確かにネットで見た魔法少女はお世辞にも戦闘向きとは言えない恰好をしていた。

 しかも全員ミニスカートでフリル付き、カジュアルな服装を好む姉ちゃんにはきつかったと思う。


「お気遣い、いただきありがとうございます。しかし、いきなり魔王少女になってしまい怪しまれませんか?」

 魔法少女は複数名で動いているらしい。姉ちゃんにも魔法少女仲間がいるんだろうか?


「あら?良いとこに気付くじゃない?楓ちゃん、ネックレスを触ってみて」

 確かに姉ちゃんはネックレスを付けている。流れ的にとんぼのアクセサリーかと思いきや、ついているのは普通のシルバーの指輪だ……でも、どこかで見た事がある様な……。


「はい、こうですか……きゃっ!」

 指輪に触れた瞬間、分厚い壁が姉ちゃんを包んだ。シルエットも見えない変身シーンとは……まあ、弟としては安心だけど。

 そして現れる赤トンボな魔法少女……俺の大切な姉ちゃんに、こんな痛々しい恰好させた奴を絶対に許さない。


「相変わらず出鱈目な力ですね……あー、あれ俺の魔力保管の指輪じゃないですか!」

 魔力保管の指輪は余剰魔力を貯めて置ける便利な指輪だ。魔王様お宝コレクションの中でもお気に入り奴なのに。


「大事なお姉ちゃんを守る為なんだから、けち臭い事言わないの!それより、なによ。あの力任せの戦い方は?しかも魔王タイム頼りまくりだし」

 確かに魔力保管の指輪があれば、姉ちゃんも上位魔法使える筈。


「向こうでの俺はか弱い少年なんですよ。魔王の力が使えなきゃ、ゴブリンにも勝てないんですって」

 場合によっては姉ちゃんに守ってもらわなければ駄目だ。


「確かに今の身体じゃ魔力を使えないか。そうね……普段でも魔法を使える様にしてあげるわ。ただし、周囲に被害を出さない事。良いわね」

 周囲に被害を出さないで敵を倒せな、なんて無茶振りも良いとこだ。火炎系や爆発系は勿論アウト。ルーチェランツァの様に貫く系の魔法や切り刻む系もきつい。

(初級魔法を組み合わせる……いや、全く新しい魔法を作るって手もあるか)

 問題は都内だと試せる場所がないっていう。ぶっつけ本番でやるしかないのか。


 ◇

 茂が魔法の使い方で思い悩んでいる時、桜はクリミナルと化した五田忍と戦っていた。


「桜さん、周囲の魔物が全滅したみたいですわ。今がチャンスです」

 黒髪の少女が叫ぶ。日本人形のような和風美少女で、大和撫子と言った感じだ。


「分かったわ……桜色チェリーカラードチェーン

 桜色の鎖が忍目掛けて飛んで行く。鎖はまるで自分の意思を持っているかの様に、忍に巻き付いていった。

 クリミナルとなった人間は身体能力は飛躍的に向上する。その力はプロレスラーをも上回るという。

 しかし、忍は桜の鎖に縛られ、身動き一つ出来なくなっていた。


「でた!ドン引きする位、重い鎖!こりゃ、幼馴染み君も大変だ」

 桜の使う技は、恋心に比例する。言い換えれば茂を拘束どくせんしたいという、気持がそれ程強いという事になる。


「チェリーカラードチェーンだっての!……二人共、行くよ」

 桜の掛け声に合わせて、忍を取り囲む様に移動する。


「「浄罪パゲーション」のライツ……ユーニン、お願い」」」

 三人から放たれた浄罪の光が、忍を包み込む。そして忍の頭から真っ黒な珠が飛び出て来る。


「任せるおー」

 ユーニンは、その球をくわえ込むと天高く舞い上がっていった。

 浄化されたクリミナルは、しばらくの間気絶しているという。しかし、気絶している筈の忍がニヤリと笑ったのだ。

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