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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
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凱旋そして不明


SOUPでの一件から翌日…

ようやくPEPEの生徒達は各々の校舎へ帰ることが出来た。

伏とアレイはリドウィンの祖父母の店で結局1泊させてもらい、その後戻るに至り。名影は真城をやむ無く花街の医者の所へ連れて行き、応急の処置を済ませてもらった後に、一睡もすることなく帰ってきた。


「でもとりあえず一睡」


と寮に戻り自室のベッドに真城と一緒に眠った。たった一夜の出来事とはとても思えないほど疲弊しきっていた。





「で?これは何があったんだ?」


結局昼頃になって4人は他のクラスメイト達と食堂で鉢合わせることとなったのだが…


「勘弁してくれよ…芦屋、俺ら今疲れてるから…」


「だから、んでそんなに疲れてんだって聞いてんだろうが。大体、なんで真城は手が片方ねぇんだよ‼︎」


「いやー昨日はあんまり眠れなかったんだよ‼︎」


無論そんな苦しい言い訳で芦屋が納得するわけもなく、睨まれる。

芦屋は普段気怠そうにしていて、協調性も薄いように思えるが、実際のところはかなり周りを見ているし優しいところがある。故に…というかそういった点も含めて"次席"というポストにいるのかもしれない。


「SOUPからの要請があったのよ。」


名影が正直に打ち明ける、と芦屋は驚愕したのちギリリッと歯ぎしりをする。


「で…だから俺は今回お呼ばれしなかったわけか?親父が…」


「違う。なんでまっさきに己の力が及ばないからだ、って考えないの?」


「なっ…⁉︎」


名影はただ淡々と言葉を紡ぐ。

芦屋が本気で心配してくれたことは分かっているが、いまここで終わったことについてぐちぐち言っても仕方がない。

それよりも危惧すべきは今後(・・)について、だ。


「今回SOUP本部に殴り込んできたのはいま巷を賑わす武装集団"トランプ"。このトランプという名称に関してはtramp、すなわち"放浪"の意味かと思ったのだけれど、今回の襲撃に"ジャック"や他に聞き間違いでなければ"ケイト"や"シンク"という名の人間がいたことから、旧日語でいうところのカードのことであると思われる。」


ティトが簡易端末に情報を纏めていく。


「彼らの具体的な目的は分からない…ということにSOUP内部ではなっているらしい。ただ今回の件で、少なくとも2つの目的が疑われる。」


「2つも⁉︎なーちゃんすげぇ…」


「1つ目はクローンおよびアンドロイドの徹底撲滅。これはとあるリスト(・・・・・・)を連中が持っていったこと、それから…ナギの一件が絡んでいる。」


名影はそういいながら、伏とアレイが手に入れてくれた書類入りの封筒を机に放る。しかし誰も、それに手を付けようとはしない。


「2つ目はSOUPおよびPEPE…そしてあるいはカンパニーも…含むトラストルノ体制の基盤の瓦解だ。これに関しては完全な憶測だが、無いとも言えないだろうと考えた。」


先程までは不服そうだった芦屋も、今は緊張の面持ちで耳を向ける。

正直、もし今言ったことが事実であるのなら、このクラスでもっとも関わりがあるのはおそらく芦屋だ。家系は代々PEPEの幹部で、しかし芦屋自身は元反体制派(アンチトラストルノ)だった。それに加えて、クローン実験…実はそんな実験があり、そしてそこに芦屋家が加担しているような節があることを、芦屋は知っていた。


「今回はなぜか(・・・)私達4人が選ばれたけれど、今度はいつ誰が招集されるかもわからない。仮に招集されなくてもこちらに危険が……」



ピッ…ピピッ…


「アレイ。お前端末の電源くらい切っとけよ。」


「悪い。西校のやつからだ…?」


「出ていいよ。」


名影が促すと、アレイは嫌そうにしつつも端末をエアスクリーンにして通話を押した。

と同時に、画面には顔を青くした西校(ウエスト)の次席、アリスが映っている。


「なに…」


『ねぇ‼︎カルマがそっちに行ってるなんてことはない⁉︎いないのよ‼︎連絡もつかないの‼︎カルマがっ…‼︎』


『落ち着けって‼︎』


『なんで落ち着いていられるのよ‼︎』


『状況はちゃんと伝えなくちゃ‼︎』


東校(イースト)の生徒達は一斉に顔を見合わせた。いま、電話がかかってくる正に直前、名影が危惧し注意しようと思っていたことが、早くも現実になってしまった可能性がある。


「なに、カルマってどいつだよ?」


『1番、そのー…中性的で‼︎いまここに映ってない彼だ‼︎その彼が血痕1つ残さず消えた。』


「死んだんじゃね?」


「潤‼︎黙ってて。」


あまりにも空気を読まない真城の発言に、名影がすかさずたしなめる。


『でも…体内端末の生体反応は正常域なんだ…』


「お前ら、あんなクソみたいなの付けてんの⁉︎こわっ…」


ダメだ、真城やアレイがいると話が進まない。

名影が合図をすると、ロブと恩が2人を背中に隠すようにする。2人も「黙ってろ」という威圧だと気付き、おとなしく後ろで耳を傾けることにした。


「で、その生体反応はどこを示してるの?位置情報も出るでしょう?」


『それが…出ることには出たんだけど…3箇所で出てるんだ…』


「3箇所?どういうこと?場所は?」


『ば…場所が…』


『どいて‼︎場所は1つがB地区(ビジネスエリア)の中心部、1つは常に移動していて、1つはあなた達のいる東校(イースト)にいるのよ‼︎』


どういうことだ?生体反応インキならともかく、体内端末はそう分かれるなんてあるわけない。

しかもどれもが全て"生きているから"表示されているわけだ。

どいういうことだ?



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