リスト
「クローン化成功者のリストってのはな、まさしく開けてはならない"パンドラの匣"なのさ。だってよ、考えてもみろよ…開けてみてこの人類みんなの名前が仲良く羅列されてたら。突然俺らはみんながみんな模造品っつーことになっちまう。」
「模造品にはならないさ。だって別の個体として…つまり僕が僕として生きている限り、なにものも僕にはなれない。同時に僕も僕以外の何物にもなれない。」
「なんでそう言い切れる?そいじゃあお前さんがお前さんだと言える根拠はなにさ。」
「そりゃあ…"我思うゆえに我あり"さ‼︎」
「お前さんはすぐにどっかしらから言葉ぁ見繕ってきやがるな。自分の言葉で喋れねぇのかぃ?」
「違うよ。これぞまさしく僕の言葉なのさ。」
「なんだかよくわかんねぇな…お前さんは、なんだかおっかねぇ…」
あまりに、懐かしい夢を見た。
あれはもう何年前の出来事か、はたまた本当にただの夢か、もしくは模造された記憶か。
僕は隣に眠る人物を跨ぎ超えていくと、台所に向かう。今夜は随分喉が乾く。
「…リスト、か。」
幼い頃から突拍子もないことや、辺鄙な場所が大好きだった。誰も遊ばなくなった旧時代の遊具、誰も近寄らない廃墟、誰も読まない書物…そういったものが、僕を作りだす全て。
そして"誰も開けず、開こうとも思わない"リストは、確実に僕の心を捉えて離さず、何年も胸に残り続けた。
さっき、今は眠る彼から聞いた話が本当なら、僕はそのリストを見ることが出来るかもしれない。
禁忌とは手を出してはならないからこそ"禁忌"たりうるのだが、同時にだからこそ触れられてしまうのが禁忌なのだ。
「絶対に見つけ出して中身を見てやる。」
もはや僕にとって、リストの中身や内容などくだらなかった。
ただ、それを手に入れ見ているのだ、という満足感が欲しいだけの一道具に過ぎない。
また、3人で行動することになるだろうか。
出来れば3人がいい。
3人で1番最初にリストを見つけ出して、そして中身を見てやるんだ‼︎
決意を新たにするとベッドへ戻る。
また跨ぎ超えて自分のスペースへ。
おやすみなさい…と意識が飲まれていった。