死の捕物
レベル……E?
なぜそんなやつの逃走を許した?
「なぁ、Eってことは大したことねぇんじゃねぇの?」
アレイが小声で阿呆みたいなことを聞いてくる。SOUPとPEPEではランクの位置付けや呼び方が違う。PEPEではSクラスを除けば、AからHに向けてランクが下がる。
しかしSOUPではAからEに向けてレベルが上がる…危険値が上がるのだ。
「生憎、PEPEとは違って、SOUPではアルファベットが進むごとに危険度合いが上がるんだよ、ディモンド君。そして今回逃走したのは最悪のレベルEだ。」
「いや、なんでそんなやつ逃したんだよ⁉︎」
全くその通りだ。なぜそんなやつを逃した?
前にこっそり調べた情報が正しければ、現在レベルE認定を受けているのは被験者が1体と、物質部門で薬物が1つだけだったはず…その程度の数を管理できなくてどうする。
「詳しい脱走の方法や経路に関しては私は聞かされていない。君らが直接SOUPの方々から聞くといい。」
「んだよ‼︎あんた信用されてねぇんじゃねぇの…情報漏らしそうとか思われてんだろ…」
アレイの毒づきに芦屋校長は少し困ったように眉をひそめる。しかし、ことの真意は違かろうと今度は真城が声を発する。
「情報の拡散を防ぐってのもあるんだろうけど…事態の収集がついた後に、全部無かったことにするためだろ?」
「…あぁ、俺らを消すってことね。確かにあんたは消しちゃまずいもんなぁ。」
アレイと真城は嫌味っぽく呟く。
しかし名影は芦屋校長の表情の変化をつぶさに見つめ、彼にそこまでの考えは無く、SOUPもその旨は話さなかったのであろうことを察した。
彼も結局は1人の父親であり教育者だ。考えと詰めが少し甘い。
優しさが時には命取りになる。
「君達には断る権利がない訳ではない…トラストルノは個人が個人として生きる場所だからね。ただ…」
「今回は断れば死。要はほとんど断れないに等しい…と。」
名影はなんでもないことかのように、納得し、そして芦屋校長の目を真っ直ぐに見据える。
「名影零‼︎PEPE東校首席‼︎本件、慎んでお受け致します。」
背筋を伸ばし名影は一息に答える。まるで軍隊の将校か何かのようだ。
校長も他の3人も驚きで固まってしまった。
今まで聞いたこともないほど重みと張りのある大声。その眼光鋭く研ぎ澄まされた決意。そして"覚悟"。
「…っ、伏舞人‼︎PEPE東校Sクラス‼︎右に同じく‼︎」
今度は伏が言い切り、そして唇を引き結ぶ。よく見ると、固く握った拳や唇が震えている。
いくら紅楼の幹部の息子とはいえ、自分の子供の親友だ。芦屋校長は、伏舞人を複雑な目で見つめる。
「まぁ…零が行くなら…」
真城はそう呟くと2人にならって姿勢を正す。
「真城潤‼︎PEPE東校Sクラス、右に同じく‼︎」
これを聞いて、伏と真城に挟まれたアレイは顔を歪める。引き受けたくない…しかし…
「……っくそっ‼︎
アレイ・ディモンド‼︎PEPE東校Sクラス‼︎
右に同じく‼︎」




