笑い話
随分と簡潔かつ濁した話をされたもんだ。
まぁそりゃね、僕らは知り合ってもういくばくになるとは言えども、まだまだ踏み込めない関係にあるような感じはあるものね。
「あそこに伏せてある写真も…8人だったときの亜細亜座かい?」
「なぜ、そう思うの?」
「なんとなく。」
いや、話しながらチラリと3度ほどそちらを見やるような素振りがあった。
それに伏せてあるわりには片さずに見える位置にあることに違和感を覚えたのだ。
ジェスターは新しい紅茶を淹れに席を立つ。このタイミングで席を立つなんて、見ていいという無言の了承と勝手に捉えるが構わないだろうか。
歩いて行って写真を起こし見る。
てっきり、そこには8人の人間が写っているものだと思っていた。確かにさっき「なぜそう思うのか」について聞かれただけで、8人の写真だとは言っていなかった。
その写真には今よりうんと幼さとあどけなさ…そしてなにより明るさを感じさせる鈴ことジェスターと、そして…
……男?
随分中性的な、それでいて繊細さよりも気強さなどの方が全身から溢れ出ている感じの青年が写っている。
2人とも頬を寄せて満面の笑顔でこちらを見上げている。
「なに勝手に見てるの。」
ジェスターはいつのまにか気配もなく背後に立っていて、写真をするりとケイトの手から取る。
「その人がジェスターの1番大切な人かい?」
「…っ、えぇそうよ。この人が燈。」
思っていたより子供っぽさの残る人だったことには驚いたが、ジェスターの年の割にとんでもなくしっかりした性格を考えると、こういうタイプがいいのかもしれないな…
僕らの前では絶対にしない表情をする、写真の中の女の子。
「ジェスターは、僕らのことをどう思う?」
ふと気になって聞いてみる。
ジェスターはしばし考えて口を開いた。
「ジェスターは僕らのことをどう思う?」
唐突な質問に目を瞬く。
僕ら、とはトランプの全員のことか。はたまたケイトとシンクのことなのか。
「それってトランプのこと?それともあなた達2人のこと?」
「うーん…どっちも?」
どうって言われても……
トランプについては特にこれといった思いは無い。正直誰がいるのかも知らないし、掲げている思想がどんなものなのかも具体的に知らない、知る気がない。
2人に関しては…
「頼りになるリーダーと、優しいムードメーカー…かしら。」
「え‼︎僕頼りになるかい?」
「いや、あなたはムードメーカーの方よ。」
「そっかぁー。僕はね、ジェスター、君のことを尊敬しているし、同時に頼ってほしいとも思ってるんだ。」
そう言うとケイトはふっと息を吐く。
「君に色々話させた訳だし、今度時間があるときに僕の話もしよう。でもそれは暗黙のルールだから、じゃない。話したいんだ。君に知ってほしい。」
「わかったわ。」
「うん、じゃあお茶ごちそうさま‼︎僕はこのあとシンクのところに行くから見れないけど、夜の部があるんだろう?頑張ってね‼︎」
「えぇ…」
真っ白な髪をふわりと揺らしながら立ち上がり、出口で振り返りバイバイ、と手を振ると扉が閉まり姿が見えなくなる。
相変わらず不思議な人…