嗤えない話
もともと、社交的なタイプではなかった。
どこで、いつ、どのように産まれたのか記憶がなく、ただひたすら"見えざるもの"から逃げていた時に彼らに拾われた。
見るも華やかな7人が、私の初めての"家族"だった。
梓、秀、泉、霞、遙、奏、燈、みんな素敵な家族だったのだ。
「鈴だって大切な家族よ‼︎鈴がいなくっちゃ私達はお客さんの前で公演出来ないんだから‼︎」
「おぉーそうだぞー自信持て、な?」
夫婦、とみんなから言われている座長のあずねぇと、副座長のしゅうにぃは優しくて、でも舞台の上ではかっこよく美しく、私にとっての憧れだった。
あずねぇの唄も、しゅうにぃが女の人になりきって踊るのも、世界一素敵。いずくんとかずくんの作る和菓子や御抹茶、そして上演する人形浄瑠璃は心もお腹もほっこりする。はるねぇとかなさんの和太鼓は本当にかっこよくて…そしてなにより、燈の落語が大好きで大好きで仕方なかった。
「へへへ、鈴にだけ特別に一席やってやろうか‼︎」
燈は私より10くらい年上だったが、それでも私にとって燈は"初恋の相手"。この時の亜細亜座では鈴は最年少で、詳しい年の頃はわからないが、おそらくは8〜10の間だったと思う。次がいずかずで12〜14頃、はるねぇとかなさんと燈は全員が18〜20位で、あずねぇは24歳、しゅうにぃは23歳。
本当の兄弟みたいに仲良し。
いずかずは本当に双子の兄弟だったけど、2人だけの殻に閉じこもるでもなく、社交的で真面目な兄の泉を介して、霞も打ち解けていった。
客もつき始め、いざ亜細亜座を本格的に大きな一座にしようと動き始めたころ、"古きを淘汰せよ"と考えるSOUPの過激派幹部の1人によって亜細亜座は事実上の解散に追い込まれた。
まず1人目が非道な拷問によって死亡、次に2人が突然の事故死、すると座長と副座長の2人が行方不明になる。ここで亜細亜座は事実上の解散となってしまった。
それでも、残された年少の3人は名を変え、場を変え不穏な社会の荒波に飲まれぬように努力した。
しかし暑い夏の盛り…2人が戦火に巻き込まれ死亡した。
私は1人、取り残されてしまった。
もうこの頃には自分の奇妙すぎる体質を見抜いていた。怪我がとんでもない早さで治ったりする…色々と調べてSOUPの人体実験に辿り着いた。
自らのルーツに絶望することは無かった。
もはや絶望すら遠い昔のどこかに置き忘れてしまっていた。
それでも、どこかで無様な自分が残っていて、亜細亜座を残そうと躍起になって…
結果作り出されたのは、もはや私の望んだ亜細亜座ではなくなってしまった。そこに私は必要無くなってしまった。
大きくなりすぎた。
それでも私はここを辞めなかった。
いたのだ。常連の中に…大好きだった人を無惨な姿にし殺した連中を見つけ、私は亜細亜座を自分の八つ当たりの道具に使うことにした。
復讐なんてかっこつけるようなものではない。
八つ当たり。
亜細亜座を失った苦しさを、亜細亜座を使って晴らそう。そう思った瞬間から、私の中に、もはやあのころの私も、あの頃の亜細亜座も無くなっていた。




