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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
44/296

嗤えない話


もともと、社交的なタイプではなかった。


どこで、いつ、どのように産まれたのか記憶がなく、ただひたすら"見えざるもの"から逃げていた時に彼ら(・・)に拾われた。

見るも華やかな7人が、私の初めての"家族"だった。





(あずさ)(しゅう)(いずみ)(かずみ)(はるか)(かなで)(あかり)、みんな素敵な家族だったのだ。


(りん)だって大切な家族よ‼︎鈴がいなくっちゃ私達はお客さんの前で公演出来ないんだから‼︎」


「おぉーそうだぞー自信持て、な?」


夫婦、とみんなから言われている座長のあずねぇと、副座長のしゅうにぃは優しくて、でも舞台の上ではかっこよく美しく、私にとっての憧れだった。

あずねぇの唄も、しゅうにぃが女の人になりきって踊るのも、世界一素敵。いずくんとかずくんの作る和菓子や御抹茶、そして上演する人形浄瑠璃は心もお腹もほっこりする。はるねぇとかなさんの和太鼓は本当にかっこよくて…そしてなにより、燈の落語が大好きで大好きで仕方なかった。


「へへへ、鈴にだけ特別に一席やってやろうか‼︎」


燈は私より10くらい年上だったが、それでも私にとって燈は"初恋の相手"。この時の亜細亜座では鈴は最年少で、詳しい年の頃はわからないが、おそらくは8〜10の間だったと思う。次がいずかずで12〜14頃、はるねぇとかなさんと燈は全員が18〜20位で、あずねぇは24歳、しゅうにぃは23歳。

本当の兄弟みたいに仲良し。

いずかずは本当に双子の兄弟だったけど、2人だけの殻に閉じこもるでもなく、社交的で真面目な兄の泉を介して、霞も打ち解けていった。



客もつき始め、いざ亜細亜座を本格的に大きな一座にしようと動き始めたころ、"古きを淘汰せよ"と考えるSOUPの過激派幹部の1人によって亜細亜座は事実上の解散に追い込まれた。

まず1人目が非道な拷問によって死亡、次に2人が突然の事故死、すると座長と副座長の2人が行方不明になる。ここで亜細亜座は事実上の解散となってしまった。

それでも、残された年少の3人は名を変え、場を変え不穏な社会の荒波に飲まれぬように努力した。



しかし暑い夏の盛り…2人が戦火に巻き込まれ死亡した。


私は1人、取り残されてしまった。

もうこの頃には自分の奇妙すぎる体質を見抜いていた。怪我がとんでもない早さで治ったりする…色々と調べてSOUPの人体実験に辿り着いた。

自らのルーツに絶望することは無かった。

もはや絶望すら遠い昔のどこかに置き忘れてしまっていた。



それでも、どこかで無様(ぶざま)な自分が残っていて、亜細亜座を残そうと躍起になって…

結果作り出されたのは、もはや私の望んだ亜細亜座ではなくなってしまった。そこに私は必要無くなってしまった。

大きくなりすぎた。



それでも私はここを辞めなかった。


いたのだ。常連の中に…大好きだった人を無惨な姿にし殺した連中を見つけ、私は亜細亜座を自分の八つ当たりの道具に使うことにした。


復讐なんてかっこつけるようなものではない。


八つ当たり。


亜細亜座を失った苦しさを、亜細亜座を使って晴らそう。そう思った瞬間から、私の中に、もはやあのころの私も、あの頃の亜細亜座も無くなっていた。


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