混沌 そして 瓦解4
「名影?入っていいか?」
名影の部屋の前で声を掛ける。この部屋はインターホンが壊れていて、ノックと声掛けで気づいてもらうしかない。
「…いいってよ、どうぞ。」
中から出てきたのは、名影ではなく、真城だった。
俺らには分からない。名影と真城の関係が、掴めない。ただの恋人同士とは思えないのだ。
「悪いな、2人でいたのに。」
「いや、別に…あんたも大変だろうし俺にもなんか手伝えることもあったら言ってくれよ。」
真城は基本優しくて良い奴だ。しかしふとした瞬間などに聖は嫌われてるのでは?と思う瞬間がある。
部屋に入るとリビングのソファに腰掛ける。真城が奥の部屋にいた名影を連れて戻ると2人も席に着く。
「なんか任せちゃってごめん、私もちゃんとやるべき事をやるね。」
名影はこんな風に控えめに笑うやつだったか?
ほんの数時間の間で人が変わってしまったようにすら見える。そういえば、夜に階段のあたりであった名影もこんな雰囲気だったように思う。
「とりあえず葬儀は検死が終わり次第すぐにでも。火葬で頼んである。」
「ん、わかった。」
「それから…さっき校長からメールが入ってて、名影と真城、あとはアレイと舞人は明朝本校舎校長室まで来てほしいそうだ。」
「名影とアレイと伏と、俺も?」
真城が不思議そうに聞く。大概、校長含む上位の教員からの呼び出しは名影、芦屋、伏の3人だから、なぜ自分も呼ばれているのか疑問なのだろう。
かく言う芦屋も不思議だと感じている。
「じゃあ、まぁそういうことだから…」
本当は名影に聞きたいことがあったが、珍しく憔悴してしまっている名影と威圧的な視線を寄越す真城を前にして、さすがに空気を読まざるを得ないと感じ、そのまま部屋を出て行こうとする。
「待った。聞かないの?
ナギと私のこと。」
引き留めたのは、張本人の名影だった。
ナギと、名影のこと…そりゃ知りたいけど…
「聞いて良いのか?」
「まぁ、私も詳しくは知らないし、まるで作り話みたいな話しだから…それで良ければ。」
「わかった、教えてくれ。」
俺がこれから聞くのは、夢物語。
果たして良夢か悪夢か。