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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
30/296

悪夢 そして 正夢3


アレイは伏ほど起こすのが大変ではない。

暴言も暴力もなく、ただただ自力で起きられないだけだからだ。目覚まし時計の類も、アレイの場合、ただ音を鳴らす装置でしか無く、"目覚まし"としてはほぼ機能していない。


「相変わらず開きっぱなし…」


アレイの部屋はほとんどの時間、鍵がかかっていない。不用心にもほどがある。


「アレイ、朝だぞ。」


芦屋がそう声をかけ、名影が揺すると寝ぼけ(まなこ)で2人を見上げ


「うん…?まだ大丈夫。」


と、また寝に入ろうとする。

いったい何がどう大丈夫なのか知らないが、こちらまでは抱えきれない。


「アレイ‼︎おはよう(グットモーニン)‼︎」


言うが早いか、名影はアレイの布団を剥ぎ、腹の辺りに軽めのチョップを食らわす。


「うぐっ……し、首席?」


「そう、さぁおはようアレイ君‼︎」


アレイは唸りつつも、ゆっくり身体を起こす。軋む音が聞こえそうなほどぎこちなく、ゆっくりと。

そしてあくびを1つすると、ぺこりと頭をさげる。


「おぁ…おはようございます。」


「はい、おはよう。」


まだ完全には起ききれていないようでフラフラしつつも傍にある、畳まれた服を着ていく。

PEPEでは制服がないために、私服でそれっぽい白黒基調の服を毎日見繕わなければならない。

アレイは律儀に、前日服を選びベッド傍に畳んで準備している。

毎日適当にひっつかんだものを着てくる芦屋や、ティトに組み合わせごとにまとめておいてもらってそのままを着ている名影は少し関心する。


「うし、大丈夫か? じゃ、ラストのナギだな。」


芦屋が伏を担ぎ直したところで、全員でアレイの部屋を出て、同じ階のナギの部屋へ向かう。

昨日も同じ道を通ったのに、日差しの有無でこれほど雰囲気が違うものかと名影は驚く。


「これ、ノックで気づくか?」


芦屋が首をひねる。

確かに、寝ているのならノックで開くかは微妙なところだ。…というよりも、そもそもまだこの部屋にいるかも怪しいな。

と名影は独りごちる。

もしもう出て行ってしまっていたら?居て欲しいな。

そう思いながらノックする。

コンコン、コンコン

うん、そりゃ出ないよな。


「ナギも意外に鍵開けてたりして」


アレイが提案する。


「いや、お前じゃねぇんだから。」


それは無いと思う。ましてナギが昨日言っていたことが本当ならば尚更。不用心に開け放すなど言語道断、であろう。

一応、扉に手をかけてみる。



カチャ…


「…‼︎」


開いている…?

扉はなんの抵抗もなく開いた。芦屋も驚く。


もしかして…もう出て行ってしまった…?


名影達は「お邪魔しまーす…」と小声で声をかけつつ部屋に入る。

入った瞬間、名影は昨日とは何かが違う、と違和感を感じた。

壁が綺麗になっている、廊下も。出て行くのに際して綺麗にしたのだろうか?


「とりあえず寝室か?なぁ、ナギって男?女?」


芦屋の唐突な質問に首をかしげつつ


「女だけど?」


と答える。


「じゃあさ、ナギが俺らも起こしに入ってもいい状態か見てこいよ。まかり間違って素っ裸とかで寝てたら本人がイヤだろ。」


「あぁ、なるほど。」


芦屋がこんなに気の利く奴だとは思わなかった。


「ナギー?」


寝室に入って、名影はとりあえず安堵した。まだいる。

寝てるだけなら起こせばいい。

名影はベッドに近づく。

そこでさらなる違和感に気付いた。


「え?なに…どんな寝方?」

ナギの顔には白布が被せられている。

もしかして人形が寝ています、ってか?



名影は意を決して白布を取っ払った。








「⁇………っ⁉︎」


声にならない叫びが、空気を伝う。


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