悪夢 そして 正夢2
「…っっ‼︎」
寝覚めの悪い夢を見た。
今まで見たどんな悪夢よりタチが悪い。
「くそっ‼︎」
芦屋はベッドから起きると足早に自室のシャワールームへ向かい、冷水を頭から浴びた。まだ春の盛りで、ましてや朝。冷水は一気に全身を冷やし尽くす。
それでも意識が先程の夢から離れない。
名影の遺体と、泣く女。
縁起でもない。名影を死なせて堪るか。
類と同じ目に合わせて堪るか。
朝ごはんは大概みんな食堂にやってくる。そして、寝起きの悪い伏とアレイを誰かしらが起こしに行くのだ。
「あれ?今日はナギもまだ来てないじゃない。」
ティトが全員分の朝飯をさっさと作り上げながら辺りを見回す。
確かに今日はナギも起きてきていなかった。普段なら朝の挨拶ーといっても"あたまをさげるためだけ"ーに下りてくる筈なのだが。
「じゃあ俺が今日は起こしに行ってくる。」
そう言うと名影が「私も」と珍しくついてきた。
「そういえば、昨日は…夜結局なにしてたんだよ?」
「…?夜ってなんのこと?」
「は?何って、階段のあたりで会って、お前夜の徘徊してるとかほざいてただろ?」
「夜の徘徊?…馬鹿にしてんの?」
おかしい、名影は本当に昨日の夜のことを覚えていないらしい。
「え、だって俺、昨日の夜お前と会ったよな?」
「は?だから何の……‼︎待った、それ多分ナギよ。」
「いやお前だったって‼︎いくら暗がりだってクラスメイト見間違えねぇよ。マスクだってしてなかったし髪の長さだってちょうどお前くらいのショートヘア?みたいなのだったし。」
「いやナギだって前髪が少し長いだけでほぼショートだし、それに私とナギってマスクとると顔似てるのよ。」
顔が似てる?
いや、だからってさすがに間違えない。というか…
「え、なにお前ナギのマスク取ったとこみたことあんの?」
「ある。昨日見せてもらった。」
それで似てた、ということは本当に名影とナギを見間違えたのか?でも俺は確か名前も呼んだ気がする。それに"似てる"なんてレベルじゃなかったような気がするし…
でも、雰囲気は確かにいつもの名影と違っていた。
俺は、寝ぼけていたんだろうか?
伏の部屋につくと、朝起こすために芦屋に預けられている合鍵で中に入る。
ベッドの上では気持ちよさそうに伏が眠っている。あまりに気持ちよさそうに眠るので、起こすのが申し訳なくなるくらいだ。
「いくぞ」
2人は目で合図をすると、それぞれにソファから拝借したクッションを腹の辺りに持ち、掛け布団を剥いだ。
「起きろ、舞人‼︎」
「おはよう、まいっち‼︎」
次の瞬間、強烈な蹴りが左側の芦屋めがけ飛んでいった。芦屋はほれをクッションでカバーしつつ脚をつかみ、ベッドから引きずり落とす。
「ゔぅぅぅん…」
伏は唸ると、その場で一緒にずり落ちてきたシーツにくるくると器用にくるまろうとする。
それを今度はベッドに乗り上げた名影が止めようとするが、伏は腕を振って器用にいかくしつつ、シーツに包まれていく。
「んぅぅ…まだ‼︎寝るの‼︎」
そう叫んでくるまりきってしまう。
「ダメか…」
仕方なく、一旦伏はシーツごと芦屋が抱え上げて、今度はアレイとナギを起こしに行くことにした。鍛えているとはいえ、小柄な伏はひょいと担ぎ上げられてしまう。




