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第77話:岩の領域

教室での騒動が一段落し、午後のチャイムが鳴り響く。

 カイトは周囲の視線を背中に感じながら、足早に統合ダンジョンへと向かっていた。発表翌日の今日は、午前中の座学でも、昼休みでも、廊下ですれ違うたびに誰かが立ち止まり、彼を指差して囁き合っていた。


「よし、行こう。……ここからは本番だ」


カイトは統合ダンジョンの転送門を抜け、慣れ親しんだ中層域――岩嶺のフィールドへと降り立つ。

 ダンジョンに入ってすぐのここでは、今までトラブルになるのを回避するため召喚せずに人気のないところまで走っていた。だがカイトは迷うことなく魔力を練り上げた。


「――来い、イスト、ティロフィ!」


翡翠の輝きが岩肌を照らし、二体の影が姿を現す。

 美しい白の装飾が施された鎧に身を包んだ白騎士・イストが、優雅に片手剣を抜き放ち、カイトの傍らに跪く。

 同時に、四メートルを超える巨躯を誇る灰塵竜・ティロフィが、その重厚な灰色の翼を大きく広げ、地を揺らすほどの咆哮を上げた。


周囲にいた数人の冒険者たちが、悲鳴に近い声を上げて足を止める。

 「おい、あれ……昨日のニュースの!」

 「本物だ、結城カイトだ……!あれがテイムモンスターか!?」


ざわめきが波のように広がるが、カイトはそれに応えることなく、真っ直ぐに視線を前方へ向けた。

 「今日は三十四層まで一気に駆け抜けるぞ」

 「御意に」

 「グルゥッ!」


カイトを先頭に、一人と二体は動き出した。


三十一層から三十四層。ここは荒涼とした岩場が続く難所だ。

 十数メートルに及ぶ巨大な岩塊がいたるところに転がり、その影には死角が数多く存在する。


最初に接触したのは、五頭のロックウルフの群れだった。

 岩でできた強固な皮膚を持つ狼たちが、鋭い鳴き声を上げながらカイトの側面から飛びかかる。だが、その牙が届くよりも早く、一筋の白い閃光が走った。


「――【連閃】!」


イストが影のごとき速さで踏み込み、抜刀。流れるような三連撃が、先頭のロックウルフの喉元、胴体、そして脚部を正確に切り裂いた。岩の皮膚を紙のように断ち切られた狼が塵となって消える間に、残りの四頭をティロフィが迎え撃つ。


ティロフィは【飛翔】の魔力を翼に纏わせ、地表からわずかに浮き上がると、その巨大な尾を振り抜いた。

 「ガアァッ!」

 【竜鞭】。魔力を込めた尾の一撃が、空気をも弾けさせる衝撃波を伴ってロックウルフを叩き潰す。硬質な岩の体が粉々に砕け、辺りに火花が散った。


「いいぞ、この調子で行こう!」


カイトの指示を受け、三人はさらに奥へと進む。

 前方から不気味な地鳴りが響いてきた。地中を突き進む破壊音――ロックワームだ。全長四メートルの岩のような外殻を持つミミズが、地面を爆破するようにして姿を現し、カイトを目掛けて凄まじい速度で突進してくる。


「ティロフィ、ブレスの準備! イストは後方のイェンシーバードを叩け!」


上空からは、鋭いくちばしを持つ岩の怪鳥、イェンシーバードがカイトの頭上を狙って急降下してきていた。

 イストは跳躍。空中でその白き剣が扇状に広がる光を放つ。

 「――【破剣】」

 広範囲を薙ぎ払う斬撃が怪鳥の翼を両断し、空中で岩の残骸へと変える。


その間に、ティロフィの喉元が不気味な赤黒い色に染まっていた。

 正面から突っ込んでくるロックワームに対し、ティロフィは大口を開く。


「――グルァァァァ!!」


放たれたのは、触れるものすべてを焼き尽くし、風化させる灰の奔流。

 激突したロックワームの硬質な玄武岩の外殻が、熱と衝撃、そして灰による浸食でドロドロに溶け落ち、断末魔すら上げられずに崩壊していった。


「よし、次はガレムだ。擬態している!気をつけろ!」


岩陰に隠れていた二・五メートルの巨漢、ガレムが立ち上がり、その丸太のような腕を振り下ろしてくる。

 イストは盾を構え、その重い一撃を正面から受け流した。

 「――【流剣】」

 衝撃を受け流し、ガレムの姿勢が崩れた一瞬を逃さない。

 イストの【一閃】が、ゴーレムのコアが存在する胸部を真っ向から貫いた。


三十四層。

 立ち塞がる敵を文字通り蹂躙し、カイトたちはついにその奥地へと辿り着いた。

 目の前には、先に進むためのゲートがある、そこは第三十五層。


「……ここまで来たな」


カイトは荒い息を整えながら、隣に立つ二体を見上げた。

 イストは剣を納め、静かに主の指示を待っている。ティロフィは鼻孔から熱い呼気を漏らし、戦いの余韻にその巨躯を震わせている。


「イスト、ティロフィ。聞いてくれ。……今日は、この三十五層を突破するつもりだ」


カイトの宣言に、二体の反応は早かった。


「これより先は、さらなる強敵が待ち受けているはずだ。俺も全力でサポートするが、君たちの力が必要だ。準備はいいか?」


「主の御心のままに。私の剣は、常に主の道を切り拓くためにあります」

 イストはカイトシールドを叩き、決意の音を響かせた。


「グルゥゥゥゥッ!!」

 ティロフィは空を仰ぎ、応えんばかりに雄叫びを上げる。その瞳には、恐怖など微塵もなかった。あるのは、主と共に更なる強者と戦えることへの歓喜だけだ。


「よし……」


カイトは迷わずに、その足を前に進めた。


「行くぞ、二人とも!」


カイトたちは、三十五層へと挑戦する。


『現在のジョブ:調教師(Lv.29)』

『使役モンスター:イスト(Lv.34)、ティロフィ(Lv.33)』

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― 新着の感想 ―
竜骨武器お披露目の時に頂いた返信で思ったけど… 雲突き抜ける威力とか射程や範囲などがあるような技が使える上級職が存在してる世界でカイト以外… プロが足踏みしてる階層って魔境ですね… そして、それと戦…
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