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第74話:友人達の決意

月曜日の朝。

 カイトが校門を潜った瞬間、そこにはかつてないほどの「重圧」が待ち構えていた。

 登校中の生徒たちの視線。それはもはや、かつての「無能を見る蔑み」でも、少し前の「謎の力への困惑や恐怖」でもなかった。

 畏怖、羨望、そして得体の知れない怪物を見るような、強烈なまでの熱。

 昨夜、全国放送のニュースからネットのトレンドに至るまで、日本中が『結城カイト』と、彼が連れていた『灰塵竜』と『白騎士』の映像で持ち切りだったのだ。当然の結果と言えた。


「おい、あれ……本物だよな」

「一人で竜の巣の十六層まで行ったって、マジかよ……」

「プロより強いってことだろ? なあ、なんであんなやつが蔑まれていたんだ……?」


囁き声が波のように押し寄せ、カイトが歩くたびに人垣が割れる。

 カイトはそれらすべてを無視し、真っ直ぐに教室へと向かった。今の自分には、周囲の雑音に一喜一憂している暇はない。自身の目標、そして魔王へと至る道だけを見据えていた。


教室の扉を開けると、一瞬だけ室内が凍りついたように静まり返った。

 クラスメイトたちの誰もがカイトを凝視し、声をかけるべきか、あるいは腫れ物に触れるように扱うべきか迷っているのが見て取れた。

 そんな奇妙な沈黙を、力強い足音が打ち消した。


「――カイト!」


真っ先に駆け寄ってきたのは、佐藤、田中、鈴木の三人だった。

 彼らの顔には、昨夜の発表を見た興奮と、それ以上に何か重い決意を秘めたような、真剣な色が浮かんでいた。


「見たぜ、昨日の発表……。凄かったな、本当に」

 佐藤が代表するように口を開いた。

「テレビの前で度肝抜かれたよ。お前があんな場所で、ギルド長と一緒に立ってるなんてさ。お前が使役してたあの二体……イストとティロフィだったか? 映像越しでも、とんでもねえ迫力だった」


「ああ、ありがとう。驚かせちゃったかな」

 カイトが苦笑しながら答えると、三人は顔を見合わせ、一度深く頷き合った。


「……それでさ、カイト。お前に伝えたいことがあるんだ」

 佐藤の声から、いつもの軽妙さが消えた。

 

「俺たち……カイトと同じように、複合上級職を目指すことに決めた」


その言葉に、カイトは目を丸くした。

 複合上級職は、既存の概念を壊す未知の領域だ。当然、これまで誰も歩んだことのない厳しい条件や訓練が待ち受けている。

「それは……嬉しいけど。でも、どうしてこのタイミングなんだい? 佐藤たちなら、もっと早く目指すこともできたはずだけど」


カイトの問いに、佐藤は自嘲気味に笑い、それから真っ直ぐにカイトの瞳を見据えて答えた。


「実は、三人でずっと話してたんだ。……俺たちはカイトと仲が良かったから、世間より先に複合上級職の情報を聞いていた。カイトは最初から、誰も信じないような荒野を一人で切り拓いてたのに……俺たちは、すでに舗装された、楽な道を進んでた」


田中が言葉を継ぐ。

「この間の三十層でのイレギュラー戦、カイトが一人で戦う姿を見て、私たちは心の底から悔しいと思ったのよ。あの時だってあなたの背中を追いかけることはできた……けど、それって『ずるい』でしょ?」


「……ずるい?」


「そうだよ」

 今度は鈴木が力強く頷いた。

「カイト君が馬鹿にされて、苦労して、ボロボロになりながら積み上げてきた成果でしょ?それをさ、友達だからって理由で、カイト君が正式に世界に認められる前に横から掠め取るような真似……私たちの筋が通らないよ。だから、カイト君が世界に新職業を認めさせて、誰も文句を言えない状況を作ってから――つまり、今日から私たちも同じ土俵に立とうって決めてたの」


カイトは胸の奥が熱くなるのを感じた。

 彼らは、自分への友情と敬意のために、あえて「先を走る権利」を捨てたのだ。自分が開拓者として認められる瞬間を、一番近くで信じて待っていてくれた。


「……わかった。伝えてくれて、本当にありがとう」

 カイトは三人の目を順に見ながらうなずいた。

「でも、これからは『ずるい』なんて気にしないでほしい。大多数が俺のことをバカにして、嘲笑っていた時も、三人はずっと味方でいてくれた。俺を信じてくれた。……だからこそ、三人が本気で複合上級職を目指すなら、俺は持っている情報のすべてを共有する。いつでも、何度でも協力するよ」


「「「カイト(君)……!」」」


三人の顔に、ようやくいつものような明るい笑みが戻った。


「ああ、恩に着るぜ!」


 友情を再確認し、カイトがこれから彼らに向けて、効率的なレベルアップや特定の条件についてのアドバイスを始めようとした――その時だった。


「――少し、いいかしら。結城君」


教室の入り口から、凛とした、それでいてどこか張り詰めた声が響いた。

 振り返ると、そこには学園の才女とも言える少女、九条院が立っていた。彼女の後ろには、学園でも指折りの実力を誇る彼女の固定パーティーメンバーたちが、一様に複雑な表情を浮かべて並んでいる。


九条院の瞳は、友人となったカイトに注がれていた。



『現在のジョブ:調教師(Lv.29)』

『使役モンスター:イスト(Lv.33)、ティロフィ(Lv.32)』

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― 新着の感想 ―
いかにもヒロインですという名前の九条院。 そしてその他大勢のような名前の田中と鈴木(全国の田中さんと鈴木さんごめんなさい) でも初期から仲良くしてる2人のほうがフラグ立ってもおかしくないよね?
レベルアップ薬の残りでもあったら初期ブーストになるなぁ、んで後は戦闘しつつ集める感じで(集めるのはソロ条件だったかな?)
他の人と話をしているのに、 割り込んでくる人って居るよね。 自分を優先してくれるのが 当たり前だと思ってる人。 エゴが強い人は嫌いだなぁ〜 少しでも自分が上になる事があったら また人を見下しそうだよ…
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