第八話 コロシアム
その日はギルドに戻り依頼をこなす。
翌日。
「ロイ様ですね。対戦相手はガマ様になります。15分前までには控室へ行ってください」
対戦相手のデータを探る。あった。
「げ、いきなり鉄の強い人と当たったか。ついてないな。武器は槍か。参ったな、機体性能だけでも2倍以上の差がある」
情報をひと通り見終えてから控室へ。そして時間になり魔戦機に乗り試合場へ。
「皆さんおはようございます! 今日も元気にやっていきましょう!」
熱の入った実況をする司会の人。
「東、ロイ選手!」
「西、ガマ選手!」
「ロイ選手は今日がデビュー戦となります! 皆さん応援してあげてください!」
「ついてねーな、あの新人。よりによって初戦が新人つぶしのガマとは」
「下手すりゃ二度とここには出ないかもなぁ」
なんかやばそうな話しが聞こえてきた。おいおい勘弁してくれよ。
「それでは両選手リング中央へ!」
「ぐえっへっへ、可愛がってやるぜ」
「お手柔らかに」
いかにもって感じのやつだ。
「ボディへの攻撃は禁止、それ以外は何でもOK」
「それでは、始め!」
「ドォン!」
大きな銅鑼の音と共に試合開始。
「オラァ!」
「サッ」
ガマの突きをかわした。しかしこれは。
「クックック、気付いたか。そうだ、ボディ狙いよ」
もしボディが破壊された場合は登乗者が強制排出される。当然全裸で。問題は排出される前に魔核に傷が入った場合。最悪魔核から出られなくなり「死」になる場合がある。
「どうだ、恐ろしいか? 降参しても良いんだぜ」
なるほど、それが狙いか。
「ズバン!」
「サッ」
「手加減しているうちに降参しとけ。血気盛んなやつだったかな? 前に不慮の事故で殺しちまったことがあってよ」
なんつーゲス。こんなやつに殺されたんじゃ浮かばれない。
しかしこれで手加減か。
「本気で構わん」
「は?」
「クックック、いいぜ。ハッタリじゃねえって理解した時、お前は死ぬ!」
「シュワン!」
少しスピードが上がった突き。
「ササッ」
これを難なくかわす。
「んな!」
その後何度も俺を突くがかすりもしない。
やはり問題ないな。レベル99でやっていた俺には止まって見えるスピード。このゲームはアクション性も強い。多少の力の差なら覆すことが可能。あまりにも離れている場合は見えていても機体が動きについていけないからどうしても食らってしまうと思うけど。
「馬鹿な!」
「じゃあ勝たせてもらう」
「腕」
「脚」
「頭」
何度も何度も攻撃を仕掛けボディ以外を破壊、勝利。
「ぬぐぅ!」
「勝者、ロイ選手!」
勝ったと同時に数体の魔戦機が。運営の人かな。
「ガマ、ワザとボディを狙ったな?」
「ハン、狙ってねえよ。たまたまだよたまたま。それともなんか証拠でもあんのか、あーん?」
「ある」
「は?」
「バコン」
「とぉー!」
地面からカルミヌスが飛び出してきた。
「私が聞いてたよ。思ったよりも悪人だったね。はい逮捕」
「く、くそう」
連れて行かれるガマ。
「もしかして仕組まれてた?」
「ゴメン! 尻尾を掴むチャンスだったんだ! 報酬はずむから許して!」
「まあ、良いけど。俺もアイツには腹が立っていたからな。てか何故こんなところに? 守衛じゃなかったっけ」
「この国とは昔から仲がいいんだ。だからいろいろとね」
「ふーん」
「ご協力感謝します!」
「あ、すまない。敬語じゃないとまずいよな」
「普通でいいよ」
「了解」
「じゃーねー」
「やれやれ、何かと会うな」
対戦するときは1日2回、討伐もしながらで一ヶ月が経過した。
「うーん、遂に昨日負けちゃったな」
(流石に性能差が違いすぎましたね)
「残りは討伐で銀を目指すとなると」
脳内の電卓を弾く。
「約一年か」
(なかなかかかりますね)
「のんびりでも良いんだけどね。いいか。ファティアに頼むか」
(そうしますか)
「ベテランさんの話だと国、貴族、商人から仕事をもらったりするのは普通のことだそうだ」
(でしょうね、冒険者だけでは次を目指すのはきついですからね)
(どうやって連絡をとりましょう)
「俺を監視している人がいるはずだが」
「お、多分あの人かな」
その人の方を見るとさっと家の角に隠れた。当たりかな。またひょっこりと顔を出した時、手で挨拶をする。また隠れたが今度はすぐに顔を出しこちらへ。気付いてもらえたか。
「どうしました?」
「ファティア王女と話をしたいんですが」
「どのようなお話で」
う、恥ずかしい。しかしここは引かない。堂々と。
「お金です」
「わかりました。そちらのご希望の日時、場所は?」
「特にありません」
「王女に確認の後、会う場所と時間をお知らせします」
「お手数かけます」
「では失礼します」